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現場の凄惨な状況とは似つかわない、呑気な声で話しかけて来るものがいる。――海の神・ネプチューンだ。
「ネプチューン様、遅いですよー!街はこんなんなるし、俺たちもほとんど動けないような状態で、この後マジでどうしようかと思いました」
「いやー、ちょうどマーメイド達とお茶をして、城に帰ってきた所に知らせが来てさ。これでも全速力で来たんだよ」
ネプチューンはワザとハァハァと息を荒くして、急いで来たアピールをしてみせる。
「2人とも随分ボロボロだねぇ。守護天使長2人をそのまま帰したら上の2人にボコされちゃうから、ちょっと治してあげるね」
「いや、何度も言いますけど、俺は副・守護天使長ですよ」
ボアネルジェスが訂正する。
「あれ、そうだっけ? まあ何でもいいや。それじゃあいくよー」
そう言ってネプチューンは、ボアネルジェスとノクトの傷を癒していく。
癒しの力を三大神以外で使えるのはネプチューンだけだが、それは完璧な物ではない。
最高峰の癒しの力を持つセフィロスに比べると力は大分劣るので、癒してもらってもまだ、身体のあちこちが痛いままだ。それでも不自由なく身体を動かせるようになったのはありがたい。
側近くで横たわる少女を、ネプチューンがちらりと横目で見る。応急処置を施している間に意識を失ってしまった。
「この子も相当ヤバそうだけど、一般の天使にホイホイ癒しの力を使っちゃダメって事になっているからなぁ。でも特別出血大サービスで、俺の守護天使に風の病院まで送らせよう」
「ありがとうございます」
「えっ?! 何でノクトが礼を言うんだい? もしかして…… このお嬢さんとそおいう仲なのかな?」
ニヤニヤと笑いながらネプチューンが聞いてくる。
この神は無難に金髪か、海の神っぽくマリンブルーの色でもしているかと思いきや、コーラルピンクの髪と瞳をしている。
日焼けした肌にピンク色。知的な印象のブルーより余程彼に似合う。
ヘラヘラとした印象を受けるネプチューンは、リアナとセフィロスの子だ。本来なら神の親子は天使の親子のように、顔や気質が似たりする事は全くない。そんな事は分かっているにも関わらず、巷では「本当にあのセフィロスの子なのか」と言われるほどだ。
セフィロスとは真逆の性格。――つまり、ノクトが苦手とするタイプ。
「ネプチューン様、いじる相手間違えてますよ。ノクトがもの凄い嫌そうな顔してるんで」
「んんー? それで嫌そうな顔なの。ノクトはホント、お父様に似て表情筋死んでるなぁ」
ネプチューンがノクトの顔をウザったらしくのぞき込みながら、ワザと天使の様に「お父様」と言ってみせる。
家族と言う単位が存在しない神は、わざわざ親をお父様、お母様などとは呼ばない。しかも何気に、セフィロスの事をディスっている。
「まぁまぁ、冗談はその辺にしておいて下さいよ。俺たち動けるようにしてもらったんで、あっち手伝いに行ってきます」
ボアネルジェスが救助活動をする天使たちを指さす。
「うん、よろしく頼んだ。あ、ロキ様への報告は俺がしといてあげるよ」
ここはロキの直轄地なので、ロキに報告をしなければならない。そう言う面倒な事は押し付けてきそうだが、ネプチューンはロキとやたら気が合うらしく仲がいい。よく酒の神と3人で宴会をしている。
「さて、俺はあのタラスクとか言うでっかい魔物、見に行こうかな〜」
そう言ってネプチューンは少女を自身の守護天使に任せると、愛用の三叉槍をクルクルと指で回しながら去って行った。




