ローマの忙日(5)古代ブリタニアのエクスカリバー伝説
登場人物紹介
黄忠漢升 十七歳(西暦164年時点)十二月十九日生まれ 射手座 血液型AB型
好きな食べ物 羊を使った料理全般
好きな泳法 立ち泳ぎ
若くして『弓神』と称される弓の名手にして闘技場チャンピオン
女顔のせいで、よく女神に間違われる
新装備
E 『最胡の骨』←NEW
新持ち物
ニーズヘッグの牙を加工して造った『ニーズヘッグの鉞』←NEW
黄承彦 二十三歳(西暦164年時点)五月三十日生まれ 双子座 血液型O型
好きな食べ物 天竺で食べたカレー
利き手 左利き
自他共に認める『工神』黄忠の叔父(黄忠の父の弟)鍛冶 兵器 建築の
知識の吸収の為なら手段を選ばないマッドサイエンティスト
後の世の黄月英の父であり 鍛冶師蒲元の師匠となる
ガレノス 36歳(西暦164年時点)十月二十七日生まれ 蠍座 血液型A型
好きな食べ物
豚肉料理全般(滋養強壮に良いから)
ペルガモン生まれのローマの名医 ローマ皇帝の侍医にして
闘技場の侍医も務める 解剖実験が大好きで
体を色々と弄らせてくれる患者が大好き
ゴットコー(兀突骨)十七歳(!)(西暦164年時点)二月二十五日生まれ 魚座 血液型O型
アレクサンドリアのプトレマイオスがアフリカ中部で拾ってきた野人
皮膚は鱗で覆われ刀も矢も通さない 将来はアレクサンドリア王となる
黄承彦が造った藤甲鎧を身に着けた藤甲部隊を率いる
身長280㎝
好きな食べ物
生きた蛇 猿の脳みそ 珈琲
好きな泳法 立ち泳ぎ
装備
E 『全身藤甲鎧』(但し『火浣布コーティング』無し)
時に漢の延熹七年(西暦164年)一月
ゲルマニア・スペリオルを後にし、ブリタニアへと向かう黄忠軍
そこにはガレノスも同行していた。
ガレノス「やはりマルクス帝陛下の所よりは君たちに付いて行った方が色々と面白いものが見られそうなのでね」
ガレノスがそう言うと、途端に体長十二尺はある巨大な物体が姿を現した
ゴットコー(兀突骨)「かんしょー、久シブリ。俺モ五百ノ藤甲兵、連レテキタ。俺達モ加エテクレ。」
黄忠「ゴットコー!ゴットコーじゃないか!いいとも、いいとも!お前たちが加われば五百の兵どころか五万の兵も加わったも同然だ!(小声で→)それから『カンショー』はやめて、ここでは『アチュー』と呼んでくれよな………」
ガレノス「なんだ?こいつは?人間なのか?トンデモ無いガタイだな!おまけに体中に鱗が生えてるぞ!」
黄承彦「この漢はアレクサンドリアのプトレマイオス先生の付き人で『ゴットコー』と申す者でございます。いずれはアレクサンドリアの王になるとプトレマイオス先生からも目されている好漢でございます。ちなみにこれで十七歳です(!)それにしても藤甲鎧も五百人分も造れていたのか……」
ガレノス「プトレマイオスのジジイもトンデモない奴を拾ってきたな……後でお前さんの体がどうなってるか調べさせて貰うぞ、ゴットコー?とやら。」
そして行軍して二ヶ月後、黄忠軍一行は遂にブリタニアを隔てる
ドーバー海峡まで進軍
ここには都合良くローマ軍の五百艘もの軍艦が用意されていた。
五千五百の兵が乗り込むには充分過ぎる数の船だ。
黄忠「これで向こう岸のブリタニアまで渡るぞ。全員、船に乗り込めー!」
そして船に乗り込んだ黄忠軍は無事にドーバー海峡を渡るかと思われた。
しかし、向こう岸が薄っすらと見えてきた頃
見たことも無い異常な軍団が向こう岸から姿を現した。
黄承彦「あれは何だ?戦車隊…か?奴ら海を戦車で渡ってるぞ!正気か!?」
ガレノス「確か『ガリア戦記』ではブリテン人は戦車を特異な使い方で運用すると聞くが これはなんとも非常識極まり無い!こんな事が可能なのか!?」
黄承彦とガレノスの言う通り、そこにはドーバー海峡沿岸から
二輪馬車を四頭の馬で引く、まるで中華の西羌の戦車兵と同じような軍団が
次々と海の中に入っていった。
しかもその軍団は明らかに水深が深い所でも
なぜかその機動力を失わず海上に浮かび進んでいき
ドンドン黄忠軍の軍艦に迫っていった。
そして呆気にとられている黄忠軍の軍艦を
あっという間に五隻ほどドーバー海峡の海に沈めた。
黄忠「むむむ、このままではマズい…ゴットコーとその麾下の藤甲兵達!俺に続けー!」
そう言うと黄忠は得物を『象鼻刀』から『ポセイドンの鉾』に持ち替え
海の中に「ドボンッ」と入り立ち泳ぎで敵の戦車隊まで迫ると
更に水中に入り
そしてドーバー海峡の南西から北東へ流れる潮流を利用して南西に向かい
そこから怒涛の勢いでスクリュー状に回転しながら敵の戦車隊に突撃をかけた。
黄忠「これぞ、第二の我が必殺戦法『海神特攻』❗❗❗」
瞬く間に敵戦車の一つに風穴を開け、戦車を大破させた。
ゴットコー「俺達モ遅レルナ!行クゾー!」
黄忠&ゴットコー「海神特攻❗❗❗❗❗」
藤甲鎧の水に浮く浮力とドーバー海峡の潮流の動きを利用した
五百の藤甲兵のこの戦法に敵戦車部隊も
堪らず大混乱を起こし、そして撤退した。
こうして黄忠軍は七十五人の損害を出しながらも何とかドーバー海峡を渡り
ブリテン島へと到達した。
黄承彦「闘技場の模擬海戦とギリシャのオリンピックの鍛錬の成果が遂に出たな!阿忠。しかし海神特攻…水に浮く藤甲兵とドーバー海峡の潮流を利用したとはいえ恐るべき威力だな!黄河や長江でもこの戦法は無敵の戦法になりそうだ。」
黄忠「そうだね……それにしても戦車が水上で浮くなんて有り得ない。敵の大将はどんな妖術を使ってこんな事が出来たんだろう?」
黄承彦「『妖術』ね……ここはローマ領でも最果てだから、そんな奴が居ても不思議じゃないか………」
未だ未開の島国ブリタニアの中心部へと着々と進軍する黄忠軍。
その途上でとある石に刺さった、それは見事な剣を見つけた。
ガレノス「それはもしやブリタニアに伝わる古の聖剣『Excalibur』?アチュー、抜いてみよ。」
黄忠がその聖剣とやらを抜こうとするとアッサリ抜けた、ガレノスは驚いて。
ガレノス「伝説ではその聖剣はやがて、このブリタニアを制する王『アーサー』が持つと言われる聖剣……それをお主が持つとは…お主が伝説の『アーサー王』だというのか?アチュー………?」
黄忠「ガレノス先生!俺はあくまで祖国を救済する将軍になりたいのであって、ここの王になりたいわけじゃないよ。」
黄忠がそう言うと
大斧と『竹トンボのような物が上に付いた弩らしき物』を持った
怪しい男が現れて震えるような声で叫んだ。
その後ろには一万もの軍勢が控えていた。
???「貴様、エクスカリバーを抜くとは伝説のアーサー王だな!?遂にこのブリテンに現れおったか!!」
黄承彦「誰だ!お前は!?」
???「我こそは『ユリウス十世』。かのユリウス・カエサルの十代目の子孫である。やがてはこのブリテンに大帝国を築く偉大なる王なり!」
ガレノス「バカな!?二百年前のユリウス・カエサルのブリタニア遠征で子を遺した話など聞いたことが無い!さてはお主、頭をやられてるな………」
ユリウス十世?「黙れ!貴様はローマのヤブ医者ガレノスだな?まあお前なぞどうでもいい!俺が用があるのはそこのシナイ人だ!名は………『アチュー』だな?」
黄忠「どうして名乗ってもいないのにガレノス先生や俺のローマでの通称が判るんだ?この漢は……」
黄承彦「もしやドーバー海峡で戦車部隊を水上に浮かせたのもお前か?」
ユリウス十世?「その通り!俺は遥か東方のシナイ人の魔道士『サジ・ゲンホー』から魔法を教わった者よ!我が師『サジ・ゲンホー』の魔法はいかなる不可能も可能にする!こんな風にな!」
自称ユリウス十世がそう言うと『竹トンボが上に付いた弩』の竹トンボが
回転して弩を浮かせて、ユリウス十世の周りを文字通りトンボの如く周遊させた
そして「行け!」の号令の元に黄忠軍の兵にその竹蜻蛉弩百基が襲いかかり
あっという間に黄忠軍二百を討ち取ったのである。
黄承彦「なんだ!?この空飛ぶ弩は?奴は本当に魔法でも使うというのか?」
黄忠「くっ!そんな物!」
そう言うと黄忠は周囲に飛ぶ弩を『阿爾特弥斯女神弓』で次々と
落として見せた。
その神業を見てユリウス十世は驚いた。
ユリウス十世「『全方位射撃』を止めるとは!?流石はエクスカリバーを抜いただけの事はあるな、しかしコレならどうかな?」
ユリウス十世は猪が如く勢いで黄忠に吶喊して持っている
得物の大斧と空飛ぶ弩との複合攻撃で黄忠に襲いかかった。
コレには黄忠も堪ったものではない。
黄忠「そっちが魔法を使えるなら、俺にだって!『最胡の骨』よ!俺の意思を汲んでくれ!」
黄忠が叫ぶと『最胡の骨』は緑色に発光した。
すると先程まで黄忠の方向に射程を構えていた
『空飛ぶ弩』は一斉に方向をユリウス十世に向けて矢の雨を降らせた。
ユリウス十世「貴様、それは『サイの骨』?そうか!ゲルマニアの連中め!よりにもよってあの宝をシナイ人などに渡しおったか!」
黄忠「うおおお!!!」
黄忠が手にした『エクスカリバー』がユリウス十世に十字傷を負わせる。
そしてそのままゴットコーの藤甲兵がユリウス十世を捕えた。
黄忠「敵将ユリウス十世!捕えたりー!」
大将が捕えられるとその兵士一万は蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出した。
ガレノス「そうだ!エクスカリバーの鞘は?これか!」
そう言うとガレノスはエクスカリバーの鞘をユリウス十世に持たせた。
すると黄忠が付けたユリウス十世の十字傷から流れた血が即座に止まり
ユリウス十世は一命を取り止めた。
黄承彦「ガレノス先生、これは?」
ガレノス「伝説ではエクスカリバーの鞘は驚異的な回復能力があり、これを持つと血が失われないと言う。どうやら伝説は本物だったようだな………」
黄忠「それじゃあ『ユリウス十世』とやら、本当の事を話して貰おうか?」
自称ユリウス十世は事の顛末を話し始めた。
まず彼はやはり古のユリウス・カエサルの子孫などではなく
脱走してブリテン島まで逃げてきたローマの奴隷であった。
そこで謎のシナイ人の魔法使いサジ・ゲンホーから魔法を習い
先の戦車を水上に浮かせる術や竹蜻蛉弩を自在に操る術を
使い熟せるようになったという。
そんな魔法を身に着けた彼には
やがてブリテン中の原住民が集まり彼を称えた。
そして彼は『ユリウス十世』を自称して
このブリテン島に新帝国を築こうという野望を抱いたのであった。
自称ユリウス十世「その時にサジ・ゲンホーの野郎がくれたのがこの『ユリウスの大斧』さ。何でもこれは伝説では二百年前のブリタニア遠征でユリウス・カエサルがこのブリテンに生えていた世界樹を二度にわたって伐り倒した大斧なんだと。それでこの大斧の所持者は帝国を築ける王になれて、それを倒せるのは聖剣エクスカリバーを持つ次代の王だけだとホザイてたな。」
ガレノス「そんな伝説など眉唾だよ。お前さん、すっかりその魔道士とやらに乗せられたな。」
自称ユリウス十世「ああ、俺もどうかしてたよ。しかしこうやって命を助けてくれたならもう変な魔法は使わないで教祖みたいな事もやめて、素直にこのブリタニアを治める族長として働くよ。」
ガレノス「それが良い、そうしなさい。」
黄承彦「それにしてもその魔道士と自称してたサジ・ゲンホーってシナイ人だったって言うけど聞いたことあるか?阿忠」
黄忠「いんや全然…漢の名士層の人達なら知ってるかもね………」
自称ユリウス十世「しかし、ここブリテン島の住人はすっかり俺に懐いている。それでは良くない。まだまだブリタニアはローマの庇護下にいないと発展できない。だから新たな伝説が必要だ。その伝説をアンタが担ってくれないか?『アチュー』とか言う美しい女戦士さん。アンタがブリタニアそのものを象徴する女神『セレーネー』になってくれ!『セレーネー』はちょうど月と矢の女神でもあるからアンタにピッタリだよ!頼む………」
実は黄忠は声変わりの途中であり、これまではほぼ女声に聞こえる
高音で喋っていた。
黄忠「はあっ?女神?また?」
黄承彦「ハッハッハッハッハッ!お前、また女神に間違われたのかよ(笑)よっ!この『永遠の女神さまっ』」
黄忠「もう女神はやだよ~!」
自称ユリウス十世「そう言わずに女神の象徴になってくれないか?俺は昔は一応、ローマの彫刻師の奴隷で彫刻も習っていたことがある。だからアンタの雄姿を彫らせてくれよ。そうすればブリタニアの原住民もローマに従うだろうからさ。」
こうして黄忠は『ポセイドンの鉾』『イージスの楯』『アテナの兜』を装着した
新たなブリタニアを象徴する女神『セレーネー』のモデルとなり
一ヶ月後その彫刻は完成した。
自称ユリウス十世「『ユリウスの大斧』と『エクスカリバー』は持って行っていいよ。今後のローマ支配下のブリテンには邪魔なだけだから、そうだな?四百年後にでも返してくれればいいや。」
なぜ四百年後?という疑問の声を上げようとしたが黄忠一行は問わなかった。
ガレノス「この『エクスカリバーの鞘』は私が貰うよ。いくら切り刻んでも血が吹き出ない代物なら今後の解剖実験に大いに役立ちそうだからな。」
黄忠「お好きなように。それにしてもいっぱい武具が増えたな~………俺一人じゃ、とても扱いきれないぞ。」
黄承彦「漢に帰った時のお土産にすればいいさ。それじゃ、まずはローマに帰ろうぜ。」
斯くしてブリタニア遠征は終結し、黄忠軍は二百七十五名の
損害を被りつつも比較的少ない被害でローマへと帰って行った。
時に漢の延熹七年(西暦164年)九月
黄忠漢升 十七歳にして初の異民族討伐であった
黄忠「そろそろ漢に帰りたいかな?何進や何思や安先生は何してるんだろう?」
【ローマの忙日(5)古代ブリタニアのエクスカリバー伝説・完】
今回は5,000字オーバーになってしまいました
次回は いよいよ漢への帰郷編に突入です!乞うご期待!!
今回の獲得品
『ユリウスの大斧』
『聖剣エクスカリバー』
今回の習得技
『海神特攻』
今回も小説を読んで頂き大変ありがとうございます
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