倭国の救世主 卑弥呼
登場人物紹介
黄忠漢升 二十歳(西暦167年時点)十二月十九日生まれ 射手座 血液型AB型
身長八尺(184㎝)股下四尺弱(91㎝)
好きな食べ物 羊を使った料理全般、波斯豆、芭蕉(バナナ)
利き手 右利き
好きな泳法 『海神泳法』(凄いスピードの立ち泳ぎ)
必殺技 『双安息射法』(安息射法が使える人との共同技)
『海神特攻』(一撃で艦船に穴を空けるドルフィンダイブ)
『飛翔安息十連箭射法』(後ろ向きで馬上でジャンプしてからの矢の連射技)
『立ち十連箭』(その場に立っての超人的な速度の矢の連射技)
『象鼻暴鞭刎』(暴れた巨象の鼻の如く大刀を振り回し首を刎ねる技)
角觝奥義『仏壇返し』(呼び戻し)
漢へ帰国したが、現在の漢帝を始めとした漢の体質に疑問を感じ、また旅に出る事になった
最近は髭が生え始めたので女と間違われる事が少なくなった
伴侶となった米を天下一、愛しているが官位に就くまで子作りはしない方針
装備
E 『象鼻刀』(隕鉄製、その靭やかさと硬さは世界一の大刀)
E 『火浣布被藤甲鎧』(火に燃えない究極の藤甲鎧)
E 『阿爾特弥斯女神弓』(兀突骨の乗っていた象の部位で製作)
E 『イージスの楯』(表が白金製、裏は木製、周囲にバリアを張る力がある)
E 『アテナの兜』(隕鉄製、冠ると水中で10分は息が続く)
持ち物
プトレマイオス著『地理学』の写し
『草薙剣』←NEW
『八咫鏡』←NEW
愛馬『火浣布被保法能(牝馬の四歳馬)』
体高八尺(184cm)体重百十鈞(750㎏)
マルクス帝とルキウス帝から貰った馬で、旧人類の共通言語「ホモフォーノイ」を
話し、また大型の馬でありながら食事を必要とせず歳も取らない神馬
一日に三千百十里(約720㎞)を疲れ知らずに走る駿馬でもあり
全人類の言葉を訳せることから黄忠一行の旅の通訳にして相談役でもある
所有楼船『波塞冬号』造船指揮 黄承彦 船体二十七丈 積載量一万八千五百石(500t)船体中央前部に羅馬式カタパルト付き投石器『回転式オナガー(黄承彦・改)』搭載 船体前部に『黄承彦製・連弩砲』十台搭載 船首に波塞冬の彫刻のレリーフ(黄承彦・製作)が付属
黄米 十四歳(西暦167年時点)十二月二日生まれ 射手座 血液型O型
身長 六尺五寸強(151㎝) 股下 三尺二寸強(75㎝)
利き手 両利き(元々、左利きだったが志能備の訓練により両利きに)
必殺技
体術奥義『狐円延髄斬り』
忍術奥義『影縫いの術』
黄忠の伴侶となった倭国の女志能備、旧名米、若くしてありとあらゆる
志能備の術をマスターし、黄忠を影で支える忍者となる
とにかくセクシーな『くノ一』で男を誑かすのが得意だが心は黄忠一筋
周囲が羨むほど黄忠とイチャラブしているが当人達は気にしてない
加えて黄忠が官位に就くまでは子作りはしない予定なので周りをヤキモキさせている
同性愛の気はないが女子をも誑かせる房中術も極めている
後に黄叙を産み、何思の政争の裏で暗躍する
細身で痩せているが、一日九食は食べる大喰いにもかかわらず
胸以外に肉が付かない、かなり変わった体質の持ち主
最近は曹操を短足であると罵って誂っている
黄承彦 二十六歳(西暦167年時点)五月三十日生まれ 双子座 血液型O型
身長七尺七寸(177㎝)
好きな食べ物 天竺で食べたカレー
貴霜で食べたナンカレーも秘かに気に入っている
利き手 左利き
黄忠達と共に漢へ帰国して同じく今の後漢に失望中
自他共に認める『工神』にして黄忠の叔父(黄忠の父の弟)鍛冶、兵器、建築の
知識の吸収の為なら手段を選ばないマッドサイエンティスト
後の世の黄月英の父であり、鍛冶師蒲元の師匠となる
装備
E 『ヘパイストスの鎚』(鍛冶の神の力で金属を火に入れなくても加工できる至高の鎚)
華陀(旉)元化 四十八歳(西暦167年時点)二月三日生まれ 水瓶座 血液型B型
身長七尺二寸(166㎝)
言わずと知れた後の医聖。麻酔と外科手術と鍼治療の名人
張機仲景 十八歳(西暦167年時点)十月一日生まれ 天秤座 血液型B型
身長七尺(162㎝)
華陀と同じく後に医聖と称される若き医者、血液型を発見して、それによる輸血を実現した
他にも各種の漢方薬や香辛料の調合の達人でもあり、カルテ(診療録)の始祖
持ち物
貴霜の三智人、チャラカから貰った書きかけの医学書『チャラカ・サンヒター』
芭壇 十九歳(西暦167年時点)五月三日生まれ 牡牛座 血液型B型
身長八尺七寸(200㎝)股下四尺四寸強(102㎝)
好きな食べ物、芭蕉(バナナ)
婆羅洲(シンガポール)の英雄だったが天竺の格闘大会で
黄忠に敗れた後に、黄忠の副将として付き従う、人並み外れた怪力の持ち主で
角觝(相撲)四十八手の使い手
何進遂高 二十歳(西暦167年時点)四月十日生まれ 牡羊座 血液型A型
身長七尺五寸(173㎝)
自らの立身出世に生涯を捧げる事を誓った漢
出世の機を常に伺っている
何思 十六歳(西暦167年時点)四月十五日生まれ 牡羊座 血液型AB型
身長七尺一寸(164㎝)股下三尺六寸弱(82cm)
モデル顔負けのスタイルを誇る何進の異母妹
異母兄の何進と共に皇后になろうという野心を持つ、黄忠が大好き
そして百合っ気が有る
盧植子幹 四十七歳(西暦167年時点)十月二十七日生まれ 蠍座 血液型B型
身長八尺五寸(196㎝)股下四尺三寸強(100㎝)
必殺技『世界樹伐採牙撃』
漢の大儒学者にして豪傑をも兼任する儒将、党錮の禁で暇になり黄忠一行に加わる
装備
E『ニーズヘッグの鉞』
黄蓋公覆 二十一歳(西暦167年時点)二月一日生まれ 水瓶座 血液型AB型
身長八尺一寸(187㎝)
必殺技『百鞭削岩打』(固有)
『江南激流衝撃波』(但し、程普と韓当との共同技)
『海神特攻』(黄忠直伝)
後に孫家三代に仕える宿将の一人、現在は仕える主君を探して程普、韓当の悪友たちとつるんでいるが武者修業の為に黄忠一行に加わった
装備
E『鉄鞭』
程普徳謀 二十歳(西暦167年時点)二月二日生まれ 水瓶座 血液型O型
身長八尺弱(183㎝)
必殺技『海蛇畝舞』(固有)
『江南激流衝撃波』(但し、黄蓋と韓当との共同技)
『海神特攻』(黄忠直伝)
後に孫家三代に仕える宿将の一人、現在は仕える主君を探して黄蓋、韓当の悪友たちとつるんでいるが武者修業の為に黄忠一行に加わった
装備
E『鉄脊蛇矛』(←海神鉾を黄承彦から改鋳して貰った)
韓当義公 十九歳(西暦167年時点)二月三日生まれ 水瓶座 血液型A型
身長七尺九寸(182㎝)
必殺技『鬼虎断裂波』(固有)
『江南激流衝撃波』(但し、黄蓋と程普との共同技)
『海神特攻』(黄忠直伝)
後に孫家三代に仕える宿将の一人、現在は仕える主君を探して黄蓋、程普の悪友たちとつるんでいるが武者修業の為に黄忠一行に加わった
大刀の使い手である事から古の鬼退治を成就した吉備津彦命と
倭人達に称えられる
装備
E『魏武王常所用挌虎大刀』(←後に曹操愛用の刀となる)
曹操孟徳 十三歳(西暦167年時点)十二月二十七日生まれ 山羊座 血液型A型
幼名 阿瞞
身長 六尺六寸(153cm)股下 二尺九寸(67㎝)
かなり生意気なガキだが、その知力と武力と詩才は本物、後学の為に黄忠一行に加わる
短足である事を気にしている
E『魏武王常所用挌虎短矛』
劉表景升二十六歳(西暦167年時点)九月二十九日生まれ 天秤座 血液型O型
身長 八尺強(185㎝)
優柔不断だが『八俊』と称される若き儒者、党錮の禁で暇になり盧植と共に黄忠一行に加わる
儒者としては盧植に、謀略家としては曹操に出番を取られ、少し焦っている
時に漢の永康元年(西暦167年)六月
蝦夷へ向かう『波塞冬号』船内
そこに抜き足、差し足、忍び足で、ある女性の船室に入ろうとする
悪童が居た、曹操である。
曹操「米め、自分がちょっと脚が長いからって俺を散々、『短足ちゃん』だとコケにしやがって!見てろよ寝台の上では得意の房中術でヒーヒー言わせたる!」
ブスッ!ブスッ!
曹操「痛ててて!なんだこれは!?撒菱か!クソ~!あの女~!!」
黄米は曹操のスケベ心を読んで、こっそりと黄忠の船室に入っていた。
隣の船室で「ヒーヒー」言っている曹操の声を聴いて黄米がほくそ笑む。
黄米「短足ちゃんって策を弄するのは得意なくせに、自分も策にまんまとハマっちゃう奴なんだね、フフッ❤カーワイ❤」
黄忠「でも、そこがアイツの器の大きさなのかもしれないな。将来はやはり大物になる気がする……」
黄米「では漢升様も、あの人妻好きの『短足ちゃん』に仕えるの?」
黄忠「それはどうかな………?」
曹操「今に見てろよ!絶対に俺の女にしてやるからな黄米め………」
その日、曹操は泣きながら波塞冬号の便所で黄米を夢想しながら
自らの棒をこすって果てて、船室に戻って眠りについた。
一方、黄忠夫妻は船室で今後の事を憂いていた。
黄忠「蝦夷にいる"アイヌ"ってそんなに強いのかな?」
黄米「噂では彼らは狩猟民族で戦闘力は一人で、あたい達、倭民族百人に匹敵するらしく、特に狩猟で鍛えた弓は百発百中だとか。でも普段は争いを好まず、必要以上に獲物も取らない奥ゆかしい民族とも聞きます。」
黄忠「弓が得意か……是非とも手合わせしたい"武人"の気持ちと、そんなに強い奴らとは争いたくない共和の気持ちが混ざっちゃって複雑な気分だな。」
黄米「あたいもです。でも、こうして漢升様と一緒に居ると、そんな気分も半分に和らいでいきます……」
黄忠「米………」
「ヒヒン……」と、バカップルに呆れた保法能の嘶きが夕闇に谺する。
二ヶ月後、波塞冬号は津軽海峡を抜けて
いよいよ蝦夷の最南端に到達しようとしていた。
そこは白神岬と呼ばれるメジロ、マヒワなどが集う渡り鳥の聖域であった。
波塞冬号はそこで停泊し、黄忠一行は陸路で
未踏の地、蝦夷を渡った。
黄忠一行が蝦夷を陸路で進んで二日後
一行が道の途上で小休止を取る事になった。
糧食の米を炊いて丼でバクバク食べる黄米。
黄忠「本当によく食べるよな~、米って」
黄米「あたい、昔から大喰いで、お米のご飯が大好きなんで須佐之男から『米』って名前を付けられたんです。パクパク♫」
その丼を一箭の矢が貫き割った。
「ふええ~(泣)」とする黄米を咄嗟に自分の身に抱き寄せ
『イージスの楯』で矢を防ごうとする黄忠。
他の一行もこの『イージスの楯』が発するバリアの中に入った。
カンッカンッカンッカンッカンッカンッカンッ
その様子はまるで大雨に対して大きな傘で雨を防ぐが如くであった。
それほどに見えない敵の矢の雨は激しかった。
黄忠「これは…アイヌか?」
黄米「はい、アイヌの得意技の『矢雨』で間違いないと思います。あ~ん、あたいの大事なお茶碗が~(泣)」
黄忠「後で予備の俺の茶碗やるから泣くな、米。」
黄米「わ~い、漢升様と夫婦茶碗だ~❤」
劉表「こんな状況でイチャついてる場合か!向こうは相当な弓の手練れだがこっちには飛び道具の使い手が漢升と黄米しかおらぬ、どうする?漢升!」
矢の雨が止み叫び声が聞こえた、聞き慣れない言葉だ。
黄忠「保法能、なんと言ってる?」
保法能「"今すぐここから去れ、さもなくば皆殺しだ"と…アイヌ語ですね。」
黄忠「クッ!ならばアレをやってみるか、保法能、同時通訳で歌ってくれ!」
保法能「やってみます、ここまでの航行中にいっぱい練習しましたからね!」
黄忠がいきなり美声でオペラの如く歌いだした
保法能もアイヌ語に訳した言葉で続けて歌いだす。
黄忠・保法能「お~♫我々は~♫君たちと~♫争う気は~♫無い~♫共~に語り合お~うでわ~ないか~♫」
戸惑うアイヌの射手たちをよそに黄忠と保法能の歌は続く。
黄忠・保法能「我々は~♫かの悪しき方士~♫左慈~元放を~♫討ちに参~った~♫貴公らに~♫危害を加える気は~毛頭ない~♫故~に♫その弓を~♫納めてくれ~♫我々は~♫貴公らと~♫話がしたい~♫」
黄米「漢升様、なんとお美しい声❤(うっとり)」
黄承彦「ローマに居た頃にオペラをやっていた事が、こんな所で発揮されるとはな!やるな阿忠!」
黄忠と保法能がその歌を歌い終わると、アイヌの猛者たちは
すっかり戦意が無くなっていた。
そしてアイヌの酋長が黄忠一行の前に現れ、アイヌ語で呟いた。
アイヌ酋長「そなたらに侵略の意志が無い事は、その歌で"何とな~く"解った。左慈元放を討ちに参ったと言ったな?あの男には我々も手を焼いている。討ちに参ったのであれば我々が案内しよう。」
保法能の通訳を聴いて、ドッと歓声が湧き出る黄忠一行。
黄蓋「いやあ~!激戦を覚悟していたが、そうならずに良かったわ!」
程普「我々の技も飛び道具の雨の中では通用しないからな。」
韓当「全くだ!俺の『鬼虎断裂波』でも、とても弓の射程には敵わん。」
劉表「さあ、対話しよう!何事も話せばわかる。」
盧植「それは、死亡の予兆だぞ…景升」
ぞろぞろとアイヌ達の案内で蝦夷の奥深くまで渡る。
黄忠達、時は八月で極めて温暖な気候であった。
そして黄忠一行は遂に左慈の本拠まで来た。
アイヌ酋長「左慈元放とか言う男は二ヶ月ほど前に急に現れては、大量の木の実や魚や鳥獣を提供して"これから来る大陸の侵略者に備えよ"と警告してきた。しかし我々の掟では必要以上の獲物を取る事は山や川の神の怒りに触れる事なので、その供物は受け取らず話半分に聞いていた。そこにあなたらが現れたので左慈の話は本当だと思った。しかし、あなたの歌を聴いて、その意志は無いと判断したんだよ、我々も掟を若者に施す時は歌で教えるからね。」
黄米「あたいのダンナの歌、素敵だったでしょ?それにしても大量の木の実や魚や鳥や獣か~。あたいだったら簡単に懐柔されちゃいそう………」
曹操「ふ~ん、この女を落とすには御馳走を用意すればいいのか。以外にちょろそうな女だぜ…」
黄米「あら?『短足ちゃん』の策には、あたいは引っかからないよ。アンタの考えることなんてお見通しだし。」
曹操「『短足ちゃん』言うな~!俺が気にしてる事をズケズケと言いやがって、この女!」
黄米「ふっふ~ん❤殿方って自分が劣等感を感じてることを好きな女から言われると表では悔しがるけど本当は嬉しいことなんて女志能備の間では常識だもんね~♫ホントは『短足ちゃん』って、あたいに言われて感じてるんでしょ?このスケベガキ❤」
盧植「ほお~、そうなのか!『短足ちゃん』!」
芭壇「嬉しいなら、もっと言ってやるよ『短足ちゃん』!」
曹操「お前らも脚長いからって『短足ちゃん』言うなー!漢に罵られても全然嬉しくね~!!」
黄忠「おいおい、"ヘンタイ"話はそれくらいにしろ。なんたって敵の左慈は阿瞞以上の"ヘンタイ"野郎なんだからな…」
左慈の本拠の庵に到着した黄忠一行。
庵には人の気配が無く、暗くて異常な静けさを保っていた。
左慈「ようこそ、君たち。こんな僻地の更に僻地まで良く来たね。」
黄忠「お前に話など通じない事は解っている!行くぞ!!」
黄忠が弓を番えて左慈の額を射ると左慈の首が落ちた。
するとその左慈の首から白い煙のようなものが湧いてきて
それが左慈に姿を変えた。
その様子のあまりの不気味さに黄忠一行も怖気がした。
そして他の武人が左慈を斬っても
左慈は分裂を繰り返し更に左慈が生まれた。
韓当「なんだコイツは?ガチのバケモンか!?」
黄米「ならば!桃の花苦無!」
しかし、鬼には効果の絶大だった桃の花苦無も左慈には通じない。
黄米「これも駄目?」
左慈「無駄じゃよ、そなたら武人では|儂《》は殺せん。聖剣『エクスカリバー』でもあれば話は別じゃがのう。」
黄忠「クッ…あれは、どこぞの名士に売っちまった………そうか!エクスカリバーが弱点だから、それを人目に付かせずに聖剣を守らせるためにブリタニアの岩に聖剣を差して、そしてユリウス十世を洗脳したんだな!?」
左慈「御名答じゃ、黄忠とかいうの!流石は『最胡の骨』の元所有者よ、大した洞察力じゃ!」
曹操「待てよ……ならば此処にもコイツの弱点となる物があるんじゃないか?確か『八尺瓊勾玉』だっけか?それの居場所を掴んでいる俺達が先に勾玉を取られるのが嫌だから、敢えてこの左慈ってジジイは此処に俺達を導いて皆殺しにしようとしたのでは?じゃあ、それがあれば………!」
黄米「コイツの座っていた座敷の奥にこんな物があったよ!」
黄米が勾玉らしき物を曹操に渡す。
曹操「どうも、脚長の人妻さん。でも多分これだけじゃダメだ…あの左慈ってジジイが自らの弱点を近くに置いておくとは思えないからな………そうか、判ったぜ!黄忠!!草薙剣と八咫鏡を出してくれ!!」
黄忠が道具袋から曹操に言われた二つの神器を取り出した。
黄忠「コレか!?」
曹操「そう、ソレだ!!この二つの神器と八尺瓊勾玉を合わせれば………『三種の神器』の揃い踏みだ!!!」
『三種の神器』が合わさると、それは眩い光を発し始めた。
すると今まで黄忠一行の驚異となっていた分裂した左慈は一斉に姿を晦ました。
そして左慈本体も苦しそうに喘いでいる。
左慈「お、おのれ~!曹操と言ったか?小僧!儂のハラを見抜くとは、末恐ろしい策士よ!必ずやこの恨み~!!!」
そう言って左慈は光の中に消滅していった。
曹操「へっ!一昨日来やがれ!クソジジイ!!」
こうして黄忠一行は八尺瓊勾玉を手に入れ、帰路に着いた。
そして、それまでの経路を曹操が一篇の詩に吟じた。
曹操「愛瀰詩烏 毗儾利 毛々那比苔 比苔破易陪廼毛 多牟伽毗毛勢儒」
黄忠「どういう意味だ?阿瞞…に聞くよりも保法能に聞いたほうが早いか。」
保法能「"蝦夷を、一人で百人に当たる強い兵だと、人はいうけれど、抵抗もせず負けてしまった"と言ったところでしょうか………?」
黄米「へえ~、阿瞞って短足の割には凄い言葉も思い浮かぶのね!なんか…目を瞑って今の詩?を吟じると、さっきまでの戦いがより鮮明で麗しく思い浮かぶわ、素敵………」
曹操「ふっ、コレが大陸に伝わる"詩"ってやつさ。俺に惚れんなよ?未開人の脚長姉ちゃん……」
黄米「フンッ!私はアンタみたいな生意気な短足ガキに興味無いんだからね!私は漢升様一筋なんだから!」
そこに左慈の庵の外で待っていたアイヌ酋長が現れた。
アイヌ酋長「さっきの詩という歌、保法能さんから聞かせて貰いました。………感動しました!我々の事を本当に理解して、良く現して下さいますね、阿瞞さんは!そんな詩を作ってくれたお礼と左慈を追い払ってくれたお礼に、このアイヌに伝わる伝説の刀と鉄をお譲りしましょう。」
そう言うとアイヌ酋長は一本の短刀と黒い鉄をアイヌの若者に持ってこさせた。
アイヌ酋長「その刀は『イペタム』と言って人の血を喰らう妖刀です。何でも伝説では、これを盗もうしとした盗人に対して、この刀が独りでに鞘から飛んで盗人を殺したそうです。故にこの刀を掴んだ者は血を見るまで、この刀を離せなくなるそうです。そしてこの黒い鉄は金を司る神によって創られたとされる鉄です。」
黄承彦「これは………『玄武鋼』じゃないか!あの中華でも『伝説の鉄』と言われる物がこんな所に有ったなんて……!これがあれば凄い武具が造れるぜ!その『イペタム』って刀の呪いだって、この『玄武鋼』と『ヘパイストスの鎚』と『俺の腕』があれば、その呪いの効果を逆利用した凄い刀にだってなれるぜ!!」
そして一行は白神岬にある波塞冬号まで
アイヌの人々と共に歩いて到着した。
黄忠「この度は大変に良い物を下さいました、皆さんの事は忘れません。どうか侵略者には気を付けて、これからも健やかにお過ごし下さい。」
アイヌ酋長「アンタ達みたいな人達だったらいつでも大歓迎だよ。但し、冬には来ないほうが良いぞ。我らアイヌ以外の人間では寒くて凍え死ぬからのう、ホッホッホッ。」
そう言ってアイヌの人々と別れ、黄忠一行は博多までの帰路に着いた。
船に揺られる事、三ヶ月の後
遂に黄忠一行は博多湾まで戻ってきた。
早速その早朝に、貰ってきた『玄武鋼』をたたら製鉄で熱を入れる黄承彦。
黄承彦「この『玄武鋼』は流石に『ヘパイストスの鎚』でも熱を入れて打たないと形を変えられん。」
そしてたたら製鉄で四日間、火を入れ続けた
こうすると玄武鋼も玉鋼となるのである。
黄承彦「よし!充分に熱は通ったな!じゃあ阿米、『イペタム』を炉に放ってくれ。」
黄米「はい、義叔父さま!」
そして『イペタム』を加えた炉に更に熱を加え二つの鉄は融かされて
一つの赤く焼き付いた魂鋼となった。
黄承彦「ようし、見てろよ~!ここからが黄承彦様の腕の見せ所だ!!」
カンッ!カンッ!カンッ!と鎚の音が響く
そして、その音が止まる頃には既に次の日の朝になっていた…
それから武具の装飾や刃研ぎなどの総仕上げに二日掛かった。
途中で仮眠を取ることはあったが七日間ほぼ毎日徹夜である
黄承彦の目には隈と血が走っていた。
黄承彦「ようし!完成したぞ!!『玄武丸・蛇』と『玄武丸・亀』!そして『玄武の籠手』だ!!!まずは一対の忍者刀『玄武丸』を阿米が持ってみな!」
黄米「はい!義叔父さま!うんっ!コレは、あたいの体の大きさにピッタリの刀ですね!この柄の頭にある、それぞれ右手用の蛇と左手用の亀の拵の装飾が素敵です!これぞ正に忍者刀って感じですね!!」
黄承彦「阿米、お前さんは両利きだから『イペタム』の短刀だけでは片手落ちになる。故に双刀にした。『二刀流の忍者』ってのはカッコいいものだろう!それにこの『玄武丸』には、その所有者の想いに共感した毒が染み込むようになっている。つまり、相手を憎めば憎むほどその毒は強まり極限まで行けばホンの一寸にも満たない"かすり傷"で相手を死に至らしめる事が出来るくらいだ。そしてこの毒にやられた者は所有者の淫夢を見て昇天するという。この効果は『玄武鋼』の玄武が持つ毒の力と『イペタム』の想いを表現する力と『ヘパイストスの鎚』の神や人や物の想いを融合する力が合わさり化合される事で生み出された力だよ。」
黄米「じゃあ、あたいが漢升様をコレで斬ってもなんとも無いけど、阿瞞を斬ったら忽ちの内にあたいのいやらしい妄想に囚われて毒が回ってあの世に行くんだ………いいじゃな~い❤『短足ちゃん』❤斬ってあげようか?❤」
ジャキ~ン!と一対の『玄武丸』を構える黄米。
曹操「(うっ!ちょっと斬られたいかも………)馬鹿野郎!俺はもうすぐ子供が産まれるんだ!何より中華の覇王になる身の俺がそんな事で死ねるか!!」
黄承彦「そして、『玄武の籠手』。コレは玄武の効果で所有者を黄米のような両利きにする事が出来る代物だ。阿忠、試しにコレを着けて左手で矢を射ってみな。」
『玄武の籠手』を装備する黄忠。
黄忠「んん!?着けた途端に左手の神経の感覚が増して鋭くなったような感じになったぞ!!」
そして左手で落ちる木の葉に矢を射つ黄忠
矢は百発百中で木の葉に命中した。
黄忠「凄いなコレ!弓で的を狙う時に右構えでは狙いにくい的も左構えなら狙いやすいという場面がよくあるから、コレは重宝するよ!!」
黄米「これで漢升様も私と同じ両利きになったのね!私達、お似合いの両利き夫婦!」
曹操「ふ~ん、妙才(夏侯淵)は左利きだが今の内にこの夫婦を見習って右射ちも練習させておくかな………」
それから三十日後、遂に曹操と自称須佐之男の未亡人との
子供は産まれた、女の子だった。
曹操「遂に産まれたな我が子よ。お前は中華から見て日出処の日を見る子として『日見子』の称号を与える。精々、出世してこの倭国の女王と成るのだぞ!ハハハハハ!!」
黄米「アンタみたいに短足に育たないといいね。ね~♫日見子ちゃん❤」
曹操「うるせえ!この子はお前なんか目じゃないほどの凄い体型の美人になると決まってるんでい!なあ日見子よ!俺はいずれ漢を制する者となる!その時が来たら女王になって、この倭国を任せてる娘に会いに行ってやるぜ!それまでにすくすくと育てよな!」
黄忠「結局、漢には連れて行かないのか?阿瞞」
曹操「ま、子供なんて沢山産めばそのうち"当たり"も出てきて儲けものってところよ。俺もこの子がこの国の女王になれるなんて本気で信じてるわけじゃねえよ。」
しかしやがて、この日見子が『卑弥呼』となって
後の魏国に親魏倭王の為の使いを寄越す事になるとは
この時の曹操には知る由も無かった。
時に漢の永康元年(167年)十二月末
黄忠漢升 二十歳の大遠征は女王の誕生で幕を閉じた。
黄忠「左慈がアレで死んだとは思えないけど…まあいいか……」
【倭国の救世主、卑弥呼・完】
今回の獲得品
『八尺瓊勾玉』
『玄武の籠手』(黄忠装備)
『玄武丸・蛇』(黄米装備)
『玄武丸・亀』(黄米装備)
今回も小説を読んで頂き大変ありがとうございます。
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インスタグラムで『三国志美術館』を催しているので良ければ御覧下さい
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