漢(くに)へ還る(4) ローマ使節団 漢に至る
登場人物紹介
黄忠漢升 十九歳(西暦166年時点)十二月十九日生まれ 射手座 血液型AB型
身長八尺(184㎝)股下四尺弱(91㎝)
好きな食べ物 羊を使った料理全般、波斯豆、芭蕉(バナナ)
好きな泳法 『海神泳法』(凄いスピードの立ち泳ぎ)
必殺技 『双安息射法』 『海神特攻』
角觝奥義『仏壇返し』(呼び戻し)
現在は漢への帰国の途に着く
若くして『弓神』と称される弓の名手にして闘技場チャンピオン
女顔のせいで、よく女神に間違われる
装備
E 『象鼻刀』(隕鉄製)
E 『火浣布被藤甲鎧』
E 『阿爾特弥斯女神弓』(兀突骨の乗っていた象の部位で製作)
E 『イージスの楯』(表が白金製、裏は木製)
E 『アテナの兜』(隕鉄製)
E 『最胡の骨』
持ち物
プトレマイオス著『地理学』
スニオン岬沖の海中神殿で見つけた『ポセイドンの鉾』
ニーズヘッグの牙を加工して造った『ニーズヘッグの鉞』
ブリタニアの石に刺さっていた聖剣『エクスカリバー』(鞘付き)
世界樹を二度伐り倒したとされる『ユリウスの大斧』
兀突骨から貰った本『食卓の賢人たち』
貴霜で紆余曲折を経て入手した『迦膩色迦の舎利弗』
フラーテス二世がデメトリウス二世、二カトルに贈った『黄金の一対の賽子』
『波斯絨毯』
『波斯陶磁器』
『波斯豆 百斤(22.6㎏)』
『ガネーシャの褌』←NEW
『象牙』 二十五斤(約5.6㎏)←NEW
『犀角』 十五斤(約3.4㎏)←NEW
『タイマイ』 二十斤(約4.5㎏)←NEW
愛馬『火浣布被保法能(牝馬の三歳馬)』
体高八尺(184cm)体重百十鈞(750㎏)
マルクス帝とルキウス帝から貰った馬で、旧人類の共通言語「ホモフォーノイ」を
話し、また大型の馬でありながら食事を必要としない神馬
一日に三千百十里(約720㎞)を疲れ知らずに走る駿馬でもあり
全人類の言葉を訳せることから黄忠一行の旅の通訳にして相談役でもある
黄承彦 二十五歳(西暦166年時点)五月三十日生まれ 双子座 血液型O型
身長七尺七寸(177㎝)
好きな食べ物 天竺で食べたカレー
貴霜で食べたナンカレーも秘かに気に入っている
利き手 左利き
現在は黄忠達と共に漢への帰国の途に着く
自他共に認める『工神』にして黄忠の叔父(黄忠の父の弟)鍛冶、兵器、建築の
知識の吸収の為なら手段を選ばないマッドサイエンティスト
後の世の黄月英の父であり、鍛冶師蒲元の師匠となる
装備
E 『ヘパイストスの鎚』
持ち物
『賢者の石』←NEW
華陀(旉)元化 四十七歳(西暦166年時点)二月三日生まれ 水瓶座 血液型B型
身長七尺二寸(166㎝)
言わずと知れた後の医聖。現在は黄忠達と共に漢への帰国の途に着く
外科手術と鍼治療の名人
張機 仲景 十七歳(西暦166年時点)十月一日生まれ 天秤座 血液型B型
身長七尺(162㎝)
華陀と同じく後に医聖と称される若き医者、華陀と一緒に漢への帰国の途に着く
血液型を発見して、それによる輸血を実現した
他にも各種の漢方薬や香辛料の調合の達人でもある
持ち物
貴霜の三智人、チャラカから貰った書きかけの医学書『チャラカ・サンヒター』
芭壇 十八歳(西暦166年時点)五月三日生まれ 牡牛座 血液型B型
身長八尺七寸(200㎝)股下四尺四寸強(102㎝)
好きな食べ物、芭蕉(バナナ)
婆羅洲(シンガポール)の英雄だったが天竺の格闘大会で
黄忠に敗れた後に、黄忠の副将として付き従う、人並み外れた怪力の持ち主
何進遂高 十九歳(西暦166年時点)四月十日生まれ 牡羊座 血液型A型
身長七尺五寸(173㎝)
何思 十五歳(西暦166年時点)四月十五日生まれ 牡羊座 血液型AB型
身長七尺一寸(164㎝)股下三尺六寸弱(82cm)
時に漢の延熹九年(西暦166年)一月
サータヴァーハナ朝の港町アマラーヴァティーから船で揺られる事、約五十日
黄忠一行十五名は遂に漢の最果ての領土、交州、日南郡に到着した。
この中華最南端の僻地には事前に大秦からの使節が来るという噂が流れ
中華全土から好事家か集まっていた。
そして黄忠一行の持っていた朝貢品はその好事家達に
ほぼ奪われる形で買い漁られた。
まず、八尺くらいの立派な体躯をした人物が現れてこう言った。
徐晃の父「ウチの家で最近生まれた"晃"って子がいてな、その子は将来、漢の功臣となり大斧の使い手になると夢見師から予言されてな。だからアンタの持つその『ユリウスの大斧』ってのを売ってくれや!お金ならいくらでも出すからよ。」
黄忠「まあ、俺は斧使いじゃないから良いよ。」
次にもっと立派な体躯をした儒者の名士らしき人物も現れた。
盧植「ああ、大斧を先に買われてしまった!だが斧はまだ残っているようだな。では私はその『ニーズヘッグの鉞』を頂こうか?」
黄承彦「あれ?確か貴方は大儒・馬融様の弟子の盧子幹様ですよね?こんな僻地まで来て何をしてらっしゃるのですか?」
盧植「私の名をご存知か?まあ良い。実は我が師、馬融様の容態が悪く、もう長くないと医者からも診断されてな。そうなると間違いなく濁流派の宦官と我が清流派の儒者達の間で政争が起きるだろう。その時に李膺様や陳蕃様と共に軟弱な宦官共を誅滅させる武器が必要なのでな。私も斧の扱いには多少の自信があるのでな。その『ニーズヘッグの鉞』とやらをそちらの好きな値段で買わせて貰うよ。」
黄忠「その政争とやらに安世高先生を巻き込まないならお売りしますよ。」
盧植「ほう!安先生をご存知か?勿論あの方は浮屠の教えの訳経に勤めているので巻き込む気は無いよ。」
黄忠「じゃあ譲りますよ、毎度。」
次に中背のちょっと太った、いかにも欲深そうな青年が出てきた。
笮融「浮屠の教えと聞いちゃあ、俺も黙っていられねえ!俺も将来は浮屠の教えを弘めるために生涯を捧げる漢に成る予定の者だ!是非その『迦膩色迦の舎利弗』を譲って貰いたい!代金の方は俺は将来、浮屠の信者を一万人は増やす予定だから、その時に払うので出世払いでどうだ?」
黄忠「本当はコレは安先生に渡したかったけど、安先生はこんな宝を貰っても喜ばないだろうから、いいぜ、アンタに譲るよ。」
その次に現れたのは歳が十くらいの幼顔の少女だった。
張魯の母、盧氏「お兄さんが持ってる、この石ちょうだい!私は永遠の若さが欲しいの!」
黄承彦「『賢者の石』が欲しいのか、嬢ちゃん?じゃあ持ってみな」
盧氏が『賢者の石』を持つと石は眩く虹色に輝き出した。
黄忠「あの誰が持ってもなんの反応も示さなかった『賢者の石』が……君こそ、この石の所有者に相応しいのかもしれない、君はこの石で永遠の若さとやらを得て何をするつもりだ?」
盧氏「私ね、このビボーで漢共をローラクするの!そしていつか生まれる自分の子供にね、ドーキョーの一大国家を作らせるの!私のヤボー凄いでしょ!」
黄承彦「ハハハ!若いのに凄い野心だな!気に入った!この石は無料であげるよ。その代わり手紙で逐一、お兄さんにこの『賢者の石』にはどんな効果があったか教えてくれないか?」
盧氏「いいよ!お兄さんも『賢者の石』のケンキューに役立ててね!」
黄承彦「やはりこの石は『不老欲』とでも言う欲望が強い者に感応するみたいだな………」
次に七尺六寸くらいの立派な体躯をした
これまた名門の名士らしき人物が現れた。
周異「貴殿の持っているその立派な剣は、かの大秦・ブリタニアの聖剣『エクスカリバー』ですな?それを我が漢の名門、周家に譲ってくれませんか?私も夢見師から九年後に生まれる嫡子が将来、漢の大都督に成ると謂われておりましたので。勿論、お代はそちらの仰せのままに」
黄忠「ハイハイ、その将来お生まれになるお子さんを大事にして下さい。所でお聞きしたい事がありますが『サジ・ゲンホー』という怪しげな妖術師をご存知ですか?」
盧植「サジ・ゲンホー?………そうか!周異殿、それは『左元放』の事に他なりませんぞ!」
黄忠「ご存知ですか?」
周異「はい、姓は左、名は慈、字は元放という、この中華を縦横無尽に荒らし回っている噂の方士でしてな、この喰わせ者に漢の政府も手を焼きまして指名手配にして賞金を懸けている程ですが、ここ二十年、全く見つかっていないのが現状です。」
黄承彦「ん?だからローマのブリタニアにまで行って自称『ユリウス十世』に魔法を教えていたというわけか?全く、その左慈元放ってのは世界を股に掛ける喰わせ者みたいだな。今はどこに居ることやら………」
盧氏「左慈のオッちゃんなら私も会ったよ。そんで『賢者の石』という物があれば君の願いは何でも叶うって教えてくれたよ。」
黄忠「こんな幼い子まで誑すなんて……左慈元放、どんな喰わせ者だ!?」
すると、そこに康居人と思われる小柄な商人風の漢が現れた。
康泰の祖父「あ!それが、かのプトレマイオスが書いたとされる『地理学』ですか?我がソグディアナ商人の間でも、その地図は垂涎の的ですよ!でも代金はとても………」
黄忠「『地理学』は既に模写が出来てるので捨て値でお売りしますよ。将来の交易に役立てて下さいな。」
すると次は四十歳辺りの八尺強の太った豪傑風の漢と
その軍師らしき二十五歳辺りの七尺にも満たない小漢が
現れた。
董卓「ほう、そなたが持っている、その白い鉄片のような物、なにやら物凄い波動のようなものを感じるな?なあ李儒」
李儒「はい董卓様、もしやそれは『最胡の骨』でございますかな?」
黄忠「よく知っていますね!これは大秦のゲルマニアという部族が持っていた物で、並外れた洞察力が無いと感応しないのですが、貴方にはビンビン反応していますね………ではこれもお売りします。」
黄承彦「良いのか?『最胡の骨』まで売っちまって?」
黄忠「最胡の骨の力は一度、身に付けた者には、その感応力や洞察力は永遠に染み込んだままになるから、俺にはもう要らないよ。それよりも、この骨に感応する新人類に譲った方が世の中の為になる気がしてさ。」
董卓「ガハハハ!『新人類』か!それは良い!よし!この漢を代表する『新人類』董仲穎様が、その『最胡の骨』とやらを引き継いでくれるわ!」
李儒「良い買い物をしましたね董卓様。」
次に今度は黄忠と同い年辺りと思われる若い三人の集団が現れた。
三人共、体躯は八尺辺りの偉丈夫の武人達であった。
黄蓋「おい!徳謀!良い得物が見つかったじゃねえかよ!」
韓当「俺は大刀、公覆は鉄鞭とそれぞれ得物があるが、お前だけは中々、得物が決まらなかったが、これでお前にも得意武器が出来たな!」
黄忠「この『海神鉾』をお求めで?」
程普「ああ、俺は日頃から矛を使っているのだが、銅製なんでいつもすぐに折れちまってね。丁度、鉄でできた強力な矛が欲しかったんだよ。でもその鉾は三叉みたいだねえ………」
黄承彦「それなら俺がすぐに蛇矛にしてやるよ!ちょっと待ってな。」
そう言うと黄承彦はヘパイストスの鎚を利き手の左手に持ち海神鉾を
八十回程、叩いた、すると三叉だった鉾先が
あっという間に鉄製の蛇矛へと変化した。
黄承彦「これぞ『海神鉾』改め『鉄脊蛇矛』だ!アンタほどの武人なら使いこなせるだろうよ!」
程普「す、凄いなアンタ!鉄を溶かしもせずに矛先を加工するとは、どういう絡繰だ?」
黄承彦「そこは鍛冶師の妙技ってヤツで秘密事項よ!それより阿忠、例の必殺技を伝授しなくていいのか?」
黄忠「あ、そっか………アンタら水戦には相当に慣れ親しんでるとお見受けした。だからこの技を伝授したい。アンタら程の武人なら一回見れば伝わると思うので。」
そう言うと黄忠は浜辺に身を投じ、『鉄脊蛇矛』を持って遥か沖まで泳ぐと
波の勢いに乗って、まるで海豚の如く跳ね上がった。
黄忠「これぞ必殺『海神特攻』❗❗❗」
黄蓋・程普・韓当「おー!見事なりー!!」
浜辺に戻る黄忠に三人が詰め寄る。
黄蓋「阿忠さんと言ったか?アンタ凄え必殺技を体得してるな!」
韓当「ああ!あの必殺技なら例え楼船や闘艦であろうとひとたまりもない!」
程普「『鉄脊蛇矛』だけでなく、こんな凄い必殺技まで教えてくれるとは………では、お礼に江陵で造船中の我々が乗る予定だった闘艦の所有権をアンタに譲ろう。乗員は七百人は乗れて、一万八千五百石(500t)は積荷が載せて、船体は二十七丈の超大型船だ!勿論、もの凄い値段がするが、アンタらが売った宝物のお金でなら買えるだろ?ほいっ、コレが買い手の割符だ。」
黄忠「アンタ達は、よくこんな船の所有権を持ってるな。相当な金持ちか?」
黄蓋「いや、只の乗船員として資格を持ってるだけよ。ただ、その船の所有主が、その大型船の持ち主に相応しい人を選ぶ権利を我々にくれてな。それがアンタだって事だよ」
黄承彦「へえ~!聞くだに凄い船だな!そんな船なら有り難く買わせて貰おうぜ?阿忠」
黄忠「考えとくよ、三人とも割符ありがとう!」
お次は、十五歳くらいの牛飼いらしき少年が現れた。
丁斐「どうも、丁斐って言います。主に牛馬を商っておりますが、そのお持ちの豆は『ピスタチオ』っていう安息名産の豆ですよね?僕に譲って下されば、それに牛乳を混入させて『波斯豆牛乳』ってのを創れると思うんです。なので半分の五十斤ほど売ってくれませんか?」
黄忠「これは安先生のお土産に取って置いたんだけど………いいよ、売ってやるよ。但し、その『波斯豆牛乳』なる物を俺達にも飲ませてくれよ?」
丁斐「ええ、そりゃあ勿論、完成品の第一作をおたくに試飲して頂きますよ。楽しみにしていて下さい!」
次にまたもや夢見師から予言を受けたという平民らしき人が寄って来た。
許褚の父「俺の一歳になる息子は、間違いなく漢を救う力の士、即ち『力士』になる!なので、その角觝に使う褌を売ってくれないか?」
黄忠「この『ガネーシャの褌』は芭壇に譲ろうと思ったんだが、いいか?芭壇?」
芭壇「いいよ、あげるよ。元々それはアチューが天竺の徒手格闘大会で優勝した時の賞品だから俺の物じゃないしね」
黄忠「じゃあ売ります。そのお子さんが『力士』となって国を救う日が来ることを願っています。」
そして最後に会ったのは黄忠にとっても懐かしいあの人物だった。
士燮「やあ、阿忠!いや漢升と言ったほうがいいか?立派になったなあ!」
黄忠「士燮様!お久しぶりでございます!!黄漢升、祖国に帰って参りました!」
二人はヒシッと抱き合って再会の喜びを分かち合った。
そして黄忠は今までの冒険譚を士燮に語った。
士燮「そうか、世界を股に掛けて大活躍をしたな漢升……私も大秦からの使者が来ると聞いて、もしや?と思い、駆けつけてみれば案の定、君が居た」
黄忠「安先生や何進は元気ですか?あの人達とも会いたいな~。」
士燮「何進は地元の宛で肉屋をやってるよ。安先生も都、洛陽の白馬寺で訳経をやっている、そろそろ仕上げの段階に入っているみたいだよ。」
黄忠「そうだ!士燮様にはこの『食卓の賢人たち』を贈ります。羅馬のアレクサンドリア図書館から貰ってきた本ですが、きっと士燮様の役に立つと思います。」
士燮「それは有り難い!所でこれから洛陽に行くのだろう?私も同行させてくれないか?丁度、洛陽の太学に遊学中なのでな」
黄忠「勿論です!故郷の宛は洛陽からの途上ですので何進達にも会えるでしょうし、一緒に行きましょう!」
こうして士燮を加えた『漢、ローマ交流旅団一行』は六十日後に宛に到着した。
何進「阿忠!阿忠か!?よく生きてやがったなあ!まあ上がれよ!」
何進の家に案内される一行、何進の家も七年前から肉屋が軌道に乗り
立派な屋敷を設ける大商人へとなっていた。
何思「忠兄、忠兄!会いたかったよ~♫」
急に抱き着く絶世の美女に黄忠も動揺した。
黄忠「え?どなたですか?」
何進「どなたって、妹の『阿思』だよ…気づかなかったか?」
黄忠「え?あの阿思か?ド偉い別嬪さんになったなあ!脚、凄い長いな!三尺と六寸近くあるんじゃないか?体の半分は脚って凄い体型だな。」
何思「いやん❤忠兄!体ばかりジロジロ見ないでよ❤」
この時の何思は十五歳にして身長七尺一寸、股下三尺六寸弱の
超モデル体型の美女になっていた。
何進「そういうお前も立派な体格になったなあ…八尺はあるんじゃないか?脚の長さはほぼ四尺はあると見た。俺と一緒に居た頃は背はほとんど同じだったのに………」
黄忠「度重なる戦の日々が、俺の体をデカくしてくれたようだよ。でも諸外国には身長が十二尺もある奴も居てな………」
またもや黄忠の冒険譚の話に花を咲かせる三人。
黄忠「あ?そうだ!例の羊毛十斤は途中でゲルマニアとかいう羅馬の異民族の交渉に使ってしまったんだが、お土産の『波斯絨毯』と『波斯陶磁器』はちゃんと買ってきたぞ、『波斯豆』も煎って食べてくれや」
黄忠は『波斯豆』二十五斤を何進に渡した、残り二十五斤。
何進「いや~、良いねえ。コレがあれば阿思を皇族の嫁に出す時の良い引き出物になるよ!」
黄忠「阿思を皇族に嫁がせるのか?阿思はそれで良いの?」
何思「………本当は私、忠兄のお嫁さんになりたかったんだけど。でも将来、出世するのは兄貴だけじゃなくて私の願いでもあるから…だから忠兄も認めてくれたこの美貌を活かして何時か必ず皇后になってみせるわ!」
黄忠「ははは!出世欲は相変わらずの兄妹だな。やっぱり俺はそんなお前らが大好きだよ!」
そして、その日は何進の館に泊まった黄忠一行。
次の日に洛陽へ旅立って行ったが、すぐに皇宮には入らず
安清世高が住職を勤める白馬寺に寄り道していった。
黄忠「安先生!安先生!黄漢升でございます!この度、長き遠征から戻り、安先生の元に還って参りました!」
安世高「おお!漢升!会いたかったぞ!」
例の如くヒシッと抱き合う師弟。
そしてまた例の如く旅の冒険譚に花を咲かせた。
安世高「そうか…ヴォロガセス四世は今でも好戦的な性格なのか…そしてカニシカ王は三智人のアシュヴァゴーシャに殺されたか…これも因果応報というものよ………」
黄忠「今の漢の帝はどれほどの御方でしょうか?」
安世高「ヴォロガセスやカニシカに比べたらマシと言った所かな?まあ、お主もこれから使者として会うだろうから見ておきなさい。」
黄忠「その前にお土産を。安先生の好物と言われた『波斯豆』二十五斤です。それとパルティアの首都のクテシフォンで入手したフラーテス二世がデメトリウス二世、二カトルに贈った『黄金の一対の賽子』も贈ります。」
安世高「これはパルティアに代々伝わる至宝ではないか!よくこんな物が手に入ったな!」
黄忠「どうせ何もしなくてもローマ軍から略奪される物だと思って、先に盗んでおきました(笑)」
安世高「抜け目の無い奴に育ったな、漢升。ハハハハハ!」
こうして安世高の元に一泊した黄忠一行は、次に日の朝に皇宮へ向かった。
そして今上皇帝・劉志(後の桓帝)と謁見した。
桓帝「良くぞ参った、大秦王安敦(マルクス・アウレリウス・アントニヌス)の使者よ。ここに大秦国と漢の国交が成された事を朕は嬉しく思う。では朝貢を拝見する。」
黄忠「まいったな~…朝貢の為の宝は全部、洛陽に向かう途上で渡しちゃったぞ…残ってるのは『象牙』二十五斤(約5.6㎏)と『犀角』十五斤(約3.4㎏)と『タイマイ』二十斤(約4.5㎏)ぐらいか、保法能はまだ旅を続けたいから渡すわけにいかないし………」
桓帝「うむ!見事な逸品よ!これぞ羅馬の宝と呼ぶに相応しい物なり!よって使者の褒美は特等とする!羅馬への返礼の品は臣下と相談の上、追って通達する!下がって良い。」
黄忠「はは~!(今の漢帝は確かにヴォロガセス四世やカニシカに比べたらマシかもしれないけど、とても『賢帝』『哲人皇帝』と謂われたマルクス帝やルキウス帝には遥かに及ばないようだな)←小声」
黄承彦「(シーッ!曲がりなりにも帝の前で滅多な事言うもんじゃねえ!まあコレが羅馬の物じゃなくて天竺の物だと気づかれなかったのは儲けものだがな)←小声」
時に漢の延熹九年(西暦166年)三月
黄忠漢升 十九歳 七年ぶりの帰還であった。
黄忠「漢の腐敗は俺一人じゃ止められそうも無いから、また旅に出るかな………?」
【漢へ還る(4) ローマ使節団、漢に至る・完】
今回の消失アイテム
『最胡の骨』←董卓と李儒に
『地理学』←康泰の祖父に
『ポセイドンの鉾』←黄承彦に加工されて程普の得物『鉄脊蛇矛』に
『ニーズヘッグの鉞』←盧植に
『エクスカリバー』(鞘付き)←周瑜の父、周異に
『ユリウスの大斧』←徐晃の父に
『食卓の賢人たち』←士燮に
『迦膩色迦の舎利弗』←笮融に
『賢者の石』←張魯の母、盧氏に
『黄金の一対の賽子』と
『波斯豆二十五斤』←安世高に
『波斯豆五十斤』←丁斐に
『ガネーシャの褌』←許褚の父に
『波斯絨毯』と
『波斯陶磁器』と
『波斯豆 二十五斤』←何進と何思に
『象牙』 二十五斤(約5.6㎏)と
『犀角』 十五斤(約3.4㎏)と
『タイマイ』 二十斤(約4.5㎏)←漢への朝貢品として
今回も小説を読んで頂き大変ありがとうございます。
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