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漢(くに)へ還る(1) パルティアでの大激戦

登場人物紹介

黄忠漢升(こうちゅうかんしょう) 十八歳(西暦165年時点)十二月十九日生まれ 射手座 血液型AB型

新獲得品

ブリタニアの石に刺さっていた聖剣『エクスカリバー』←NEW

世界樹を二度伐り倒したとされる『ユリウスの大斧』←NEW


黄承彦(こうしょうげん) 二十四歳(西暦165年時点)五月三十日生まれ 双子座 血液型O型


ガレノス 37歳(西暦165年時点)十月二十七日生まれ 蠍座 血液型A型


ゴットコー(兀突骨)十八歳(!)(西暦165年時点)二月二十五日生まれ 魚座 血液型O型


華陀(旉)元化 四十六歳(西暦165年時点)二月三日生まれ 水瓶座 血液型B型


張機 仲景 十六歳(西暦165年時点)十月一日生まれ 天秤座 血液型B型

時に漢の延熹(えんき)七年(西暦164年)九月


ゲルマニアとブリタニア討伐で疲れた体を癒す為


ローマの浴場(テルマエ)で華陀から(はり)治療を施されていた黄忠。


それを興味(ぶか)そうに見つめるガレノスの姿があった。


ガレノス「ほう…(はり)を刺す事で人体のツボを刺激し、人体のエネルギーを活性化させるか。カダ殿は面白い治療法を知ってなさるな。そしてその診察と同時に施した処術の所見をチューケイ殿が書いて今後の医療に活かすか………シナイの医学はローマよりもだいぶ進んでおるな。」


張仲景「いえいえ、わが祖国では医療は(まじな)いや房中術や技芸の類いに分類されて、まだまだ社会的地位は低いものです。」


華陀「そうそう。このローマでも医者は人殺しだと思われておりますからお互い様ですぞ。」


ガレノス「医者の地位を上げてくれる賢明な君主が現れてくれんものかね?ハッハッハッハッハッ!」


黄忠「華陀先生と仲景はともかくガレノス先生は口を慎んだ方が良いのでは?浴場(テルマエ)は情報交換の(いこ)いの場ですよ。さっきの言葉もいつ皇帝様に聞かれるか分かりませんよ。」


ガレノス「なあに、我がローマの皇帝は代々続く賢帝の系列のお歴々。この程度の諫言(かんげん)などで首が飛んだりはせんよ。シナイではここ百年は幼帝が続きカンガン(宦官)とか言う玉抜き野郎の奴隷が権力を握っていると聞くがローマ人にとっては異常としか言いようがないね。」


同じく華陀から鍼治療を受けていた黄承彦が呆れたように答える。


黄承彦「いやあ、本当にお恥ずかしい……宦官共はわが祖国の大恥です。医療は諸外国にも薦めても良いと思いますが、宦官だけは他国に薦められません。」


それから三ヶ月余りは黄忠も闘技場(コロッセオ)には出ず


大競技場でクアドリガ(四頭馬車)によるレースに熱を上げたり


劇場の演目に出演して持ち前の美顔で女役を演じて


すっかり劇場のスターになっていた。


黄忠「もう女扱いでいいや………」


黄忠も居直っていた。


そして翌年、漢の延熹(えんき)八年(西暦165年)一月


マルクス・アウレリウス・アントニヌスと


ルキウス・ケイオニウス・コンモドゥス・ウェルスの共同皇帝二人は


多大な功績を立てた黄忠に新たな褒賞と任務を与えたのであった。


マルクス帝「汝のゲルマニア及びブリタニア遠征の功、(まこと)に古の大帝ユリウス・カエサルが如しなり。よってこの馬を汝に授与する。」


そう言うとマルクス帝の従者が


(たてがみ)から全身全てが黄色い馬を持って来た。


マルクス帝「この馬は今から約百二十年前ローマ帝国第3代皇帝カリグラが寵愛した馬『インキタトゥス』の血を引く馬で、全世界の全ての言語を話せる馬なので旧約聖書のすべての人間の共通語という意味を込めて『ホモフォーノイ』と名付けられた馬だ。これ、ホモフォーノイ。挨拶しなさい。」


マルクス帝がそう言うと


その『ホモフォーノイ』という馬はなんと漢語で話し始めた。


ホモフォーノイ「貴方が噂の黄忠漢升様ですね。どうか宜しく。私の名は漢語で訳せば保法能(ほほうのう)と言った所ですかね?お好きにお呼び下さい。」


そんなホモフォーノイの丁寧な挨拶に戦慄する黄忠。


黄忠「馬が喋ってる……しかも漢語で………」


ルキウス帝「ハハハハハ、この『インキタトゥス』の血を引く人語を喋る馬は代々のローマ皇帝の間でも門外不出の馬でな。皇帝以外では一部の数人の近臣しか知らぬ秘蔵の神馬(しんめ)よ。その中でもこの『ホモフォーノイ』は全人類の言語を話せる、ローマ…いや、きっと人類史上始まって以来の賢馬(けんば)でな。おまけに一日に五百二十マイル(約830㎞)を走るという駿馬でもある。」


黄忠「そんな凄過ぎる馬をこの私に!?」


マルクス帝「汝のこれまでの功績を(おもんばか)れば、これくらいの褒賞は当然の事よ!」


黄忠「では、ついでにお願いしたき儀が御座います。」


ルキウス帝「良いぞ、遠慮無く言ってみよ。」


黄忠「私のこれまでのローマでの軌跡を決して記録に残さないで欲しいのです。」


マルクス帝「なぜだ?汝の軌跡はさっき言った通り、ユリウス・カエサルにも匹敵する大戦果ではないか!それを残すなとはどういう了見だ?」


黄忠「私の目的はあくまで祖国、(かん)を救う事であってローマを救う為ではありません。故にこれからも旅を続けて見聞を拡める武者修行を続けたいのです。その為には名声は邪魔なだけですし『名声は人を堕落させる』と我が師達も口を揃えて言っておりましたので。」


マルクス帝「ふむっ!相判った。確かにかつての哲人達も『名声は人を堕落せしめる』と仰せであられる。アチューは良い師をお持ちになられたな。では汝『アチュー』の功績は一切書いてはならぬと史官にも固く言っておく。それで良いな?ルキウス?」


ルキウス帝「まあ、ローマの人間ではなくシナイの人間に功績を掻払(かっぱら)っていかれたとあっては後世においてもローマの恥になるしな。余も承認する。」


黄忠「過ぎたる褒賞に加え、私の個人的な我儘(わがまま)を聞いて頂き光栄の至りで御座います。」


マルクス帝「お主が無名のままでいてくれるならば、これから言い渡す任務も頼みやすいというもの。実はこの度、我がローマ軍はパルティア本土への本格的な遠征が決まってな。この遠征は首都のクテシフォンを占領しパルティアを我が領土にしようという大決戦である。総司令官には例のアウィディウス・カッシウスが就く事になり、先方の指揮官はマルティウス・ウェルスが担う事になったのでアチューは一軍の五千の兵を率いてその支援に行って貰いたい。そして同行者としてこの名も無き奴隷たちを連れて行って欲しい。こやつらの任務はシナイ(漢帝国)への使者である。」


黄忠「我が祖国への使者ですって!?という事は……?」


マルクス帝「そう! 軍の任務は丁度いい所で引き上げてそのままこの使者をシナイまで送り届けて欲しいのだよ。これを頼めるのはアチュー、汝しかおらぬ。」


黄忠「そのまま祖国に帰っても良いということですか?」


マルクス帝「その通り!なにぶん汝にこれ以上ローマで活躍されては民衆の噂が膨れ上がりすぎて史官に筆止めさせても伝説として汝の名前はローマ史に残ろう。故にここらで汝を祖国に返そうと思ってな。最後の任務、受けてくれるな。」


黄忠「ははー!最後の任務、謹んでお受け致します!」


黄忠は早速、同行者を決めた。


黄承彦 華陀 張仲景 ゴットコーを連れて行くのは当然として


ガレノスにも同行を頼んだが


ガレノス「私は残るよ、シナイには興味はあるが皇帝陛下の侍医の任務もあるし何よりもシナイには闘技場(コロッセオ)が無いそうじゃないか。それでは解剖実験も(まま)ならぬのでツマラン。シナイの医療の発展はカダ殿とチョーチューケイ殿が押し進めてくれるだろうよ。(あと)それと、この『エクスカリバーの鞘』も持っていけ、解剖実験にはあまり役に立たなかったので私には必要無い。」


と断られた。


そしてローマの市で土産物を買おうかと思ったが


実際に土産物となりうる物産は少なかった。


黄忠「食べ物や香辛料は途中で腐っちゃうし、ギリシャ彫刻とかは重くて運べないし、奴隷の技術者を買って連れて行くのも嫌だしな~、どうしよ?」


黄承彦「今までの遠征や闘技場(コロッセオ)の褒賞で手に入れた『ユリウスの大斧』とかが有るじゃないか。アレ()だけでも(かん)では充分な土産物になるだろ?俺だって奴隷商人のような事はしたくないからね。」


結局、市では何も買わずそのままパルティア遠征軍に参加した一行だった。


マルティウス・ウェルスが指揮するパルティア遠征先方軍は


黄忠率いる弓騎兵とゴットコー率いる藤甲兵とローマ自慢の投石機『オナガー』


等の活躍で順調に進んでいった。


メソポタミア北部からオスロエネ アンテムシア エデッサ ニシビスを


瞬く間に占領した。


パルティア軍の将軍コスロエスもティグリス川まで後退し


ティグリス川を泳いで逃げようとしたが黄忠の海神(ポセイドン)の如き


もの凄い速さで迫る立ち泳ぎ『海神泳法(ポセイドンスイミング)』に肝を冷やして


途中の洞窟に逃げ隠れ、ビクビク脅えて泣きながらも何とか難を逃れた。


黄忠「名前が似てても『"オ"スロエス将軍』とはエラい違いだな。俺が居ない間にパルティア軍も随分と弱くなったもんだな…」


そこにアウィディウス・カッシウス将軍率いるローマ本軍が合流し


ユーフラテス川のスラ(スーリヤー)でもパルティア軍と交戦して


その軍を一掃すると現代の工法にも似た見事な船橋(ふなばし)を建設して


その護衛に近くに造った(やぐら)に黄忠の弓兵を配備して守らせた。


黄承彦「ローマ兵は工法に長けると聞くが、もうこんな見事な船橋を完成させてしまった!彼らの工法技術は(かん)どころか世界一かもな………俺も見習わねば!」


黄忠「『サイダー』といい、(かん)には無い技術にはいつも驚かされるよ………」


こうしてユーフラテス川に船橋をあっという間に造って川を渡り


そのまま下流の都市 ダウサラ ニケポリオン(ラッカ)を占領。


その南の都市ドゥラ・エウロポスでは大激戦が展開され


黄忠やゴットコーの軍もここでは血みどろの大混戦となり


大激戦の末になんとかパルティア軍を停戦に追い込み占領した


そしてローマ軍総指揮官アウィディウス・カッシウスは黄忠に言った。


カッシウス「お前たち『シナイ交流旅団』はここで離れていいぞ。ドゥラ・エウロポスが陥落した今、重要都市のセレウキアと首都のクテシフォンは裸同然で落ちるのも時間の問題だ。今まで良く戦ってくれたな、感謝する。さあ行くが良い。」


黄忠「ははっ!今までお世話になりました!シナイ()とローマとの国交、必ずや実現させて参ります!!」


時に漢の延熹(えんき)八年(西暦165年)六月


黄忠漢升 十八歳 ローマにおける最後の戦いであった


黄忠「波斯絨毯(ペルシャじゅうたん)波斯陶磁器(ペルシャとうじき)波斯豆(ピスタチオ)は今の内に買っておかないと店が焼け野原にされちまうな、急ごう」


(くに)(かえ)る(1) パルティアでの大激戦・完】

今回の獲得品

ローマ皇帝マルクス帝とルキウス帝から貰った全世界の言語が話せる神馬

保法能(ホモフォーノイ)(二歳馬)』

ガレノスが手放した、斬られても血が吹き出なくなる魔法の鞘

『エクスカリバーの(さや)

波斯(ペルシャ)土産

波斯絨毯(ペルシャじゅうたん)

波斯陶磁器(ペルシャとうじき)

波斯豆(ピスタチオ) 百斤(22.6㎏)』


今回の習得技

海神泳法(ポセイドンスイミング)


今回も小説を読んで頂き大変ありがとうございます

皆様の忌憚の無い 評価・いいね・ブックマーク登録・感想・イチオシレビューをお待ちしてます

インスタグラムで『三国志美術館』を催しているので良ければ御覧下さい

https://www.instagram.com/kohata_toshihide/

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