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海賊王女  作者: 水飴屋
1/1

七つの海に帆を上げろ!

1.旅の始まり(出演、ルシテ―ア、ジャスパ―、ルチェッタ、アルフレド、ドン)

(1―1)

0:ルチェッタ、手紙を書いている

ルチェッタ:テオへ。お元気ですか?

ルチェッタ:私は今、海の上にいます。

ルチェッタ:たまに、陸の上の夢を見るの。

ルチェッタ:でも、寂しくはないわ。

ルチェッタ:たくさん、仲間がいるの。

ルチェッタ:私は、この広がる海を、どこまでも見に行きます。

ルチェッタ:世界で最初に、海の向こうへ行く王族として。

(1―2)

0:王宮

ルシテ―ア:ルチェッタ、明日は、お見合いよ。

ルシテ―ア:手落ちの無いように綺麗にしてね。

ルシテ―ア:女の幸せは殿方を喜ばせ、尽くすこと。

ルシテ―ア:あなたもこの国の、立派な女性となるのです。

ジャスパ―:やれ、嬉しや、あのお転婆だった姫が…

ルシテ―ア:ジャスパ―、あなたにも、色々と苦労を掛けましたね。

ジャスパ―:姫が立派に嫁ぐためと思えば…

ジャスパ―:このジャスパ―・タルラ、どんな苦労も、苦労とは思えませんでした。

ルシテ―ア:さあ姫、お顔を見せて…

ルシテ―ア:まあ!何てこと!

ルチェッタ:お義母様、私、上手くできないの。

ルチェッタ:まだ、誰かのものになんて、きっとなれないわ。

ルシテ―ア:…

ルシテ―ア:わたくしがこの王宮に来た時…

ルシテ―ア:わたくしは、不安で仕方がありませんでした。

ルシテ―ア:でも、大丈夫よ。

ルシテ―ア:美しく、自信を持っていれば、きっと大丈夫です。

ルシテ―ア:お相手は、隣国の領主。とっても素敵な方よ。

ルチェッタ:会ったこともない方と結婚するなんて、無理よ!

ジャスパ―:これ、姫!聞き分けの無いことを言ってはなりません。

ジャスパ―:アルフレド殿下が、姫のために押し進めた縁談ですぞ!

ルチェッタ:やだ―!

ジャスパ―:そんな、子どもみたいな…いい加減にしなされ!

ルシテ―ア:…暫く一人にしてあげましょう。

ジャスパ―:…わかりました。

ジャスパ―:姫、よく考えて下され。

ルシテーア:頭を冷やすように。1時間後に、また参ります。

ルチェッタ:…

ルチェッタ:…私、お姫様に向いてないと思うの。

ルチェッタ:あああ、あの海の向こうに行きたいな…

ルチェッタ:こんな、鳥籠に閉じ込められたような生活、イヤだ!

アルフレド(上機嫌に大きな声で):ドン、よくぞ参った!

ドン:へへへ、ありがてぇことで…

ルチェッタ:誰だろう、見たことない服着ている。…

アルフレド:お前の海賊行為…間違えた、隣国の監視のお陰で、わが国の海の平和は守られている!

アルフレド:ゆくゆくは、お前にキャバリエの位を与えようと、余は思う!

ドン:へへ、…ありがてぇ限りです。

アルフレド:時に、今日は食事をしていかないのか?

アルフレド:お前の話は痛快だ!特に、ロンバルド帝国の海軍をやっつける話とか!

ドン:いや、今日は、野暮用がありまして…申し訳ねぇこってす。

アルフレド:そうか。また、報告に参れ。

ドン:へへ―ッ。毎度ごひいきに、ありがてぇことで…では、これで。

ルチェッタ:海賊?…そうだ!ドンという、あの人に付いて行けば、海が見られるんじゃないの?

ルチェッタ:行こう!…みんなには悪いけれど…

ルチェッタ:私は、どうしても外の世界に出たい。


2.入団試験(出演、ランド―ラ、ドン、ルチェッタ、ジャスパ―、ビ―グル)

0:海賊団、陸のアジトにて。ランド―ラとドンがチェスをしている。

ビ―グル:今度の航海は、みんなで言った方がいい。

ドン:イヤ、半分で十分だ…ほい、ここでナイト。

ランド―ラ:いや、全員で行こう。最近、ロンバルド帝国の動きが怪しい。

ランド―ラ:どこで何があるか、分からないよ…ここにビショップでどうだい?

ドン:そう来たか…だが、ボエミアへ寄るだけだぜ?あそこは、同盟国だ。

ドン:ここでル―ク。チェックだぜ、ミミ。

ビ―グル:ドン、俺の勘が言うんだ。今度のヤマは、でかいぞってな。

ランド―ラ:アタシの勘では、今度こそロンバルドのジルバ―と決着が着くと…

ランド―ラ:誰だい?

ルチェッタ:…アンシャンテ、皆さん。わたくしは、ルチェッタ・フォン・ドロテス。

ドン:…メスガキ、よくここが分かったな…

ドン:俺が誰か知らないなら、許してやる。

ルチェッタ:海賊のドンでしょ。

ドン:そうか。…売り飛ばされてぇようだな。

ランド―ラ:よしな、ドン。ルチェッタ姫だよ。

ドン:…ああ、自分を姫だと思い込んでるタイプか。

ドン:帰んな。

ランド―ラ:違う!本当の姫さ!

ビ―グル:ドン、こんな奴まで!

ドン:なんだ、この太っちょは!?

ジャスパ―:薄汚い海賊共め!ワタシと姫から手を離せ!

ジャスパ―:ワタシは、ジャスパ―・フォン・タルラだ!

ランド―ラ:本物だよ!前に国王陛下と食事したとき、見たろ、ジャスパ―は!

ドン:んん…覚えてねぇが…

ジャスパ―:無礼者!

ドン:で、姫が、俺に何の用だ?

ルチェッタ:わたくしを海賊にして欲しいのです。

ドン:はぁ!?

ランド―ラ:アッハッハッハ!…何でだい?

ルチェッタ:わたくし、海が好きなの。…あなた方からは、磯の匂いがする。

ルチェッタ:お兄さまが亡くなって、王宮に連れてこられる前…

ルチェッタ:港で、仕事をしていた。

ルチェッタ:海の匂いが、大好きなの。あなたたちからは、自由の匂いがする。

ルチェッタ:お願い、下働きでも、何でもします。

ルチェッタ:わたくしを海に連れてって。

ジャスパ―:姫!ダメです!何をお考えなのですか!?

ビ―グル:お姫様…海は怖いぜ。…そして、おじさんたちは、もっと怖いよ?

ドン:ミミ、入団試験だ。お前に任せた。

ランド―ラ:そうだねぇ…あんたが船長だとして、船が沈むとする。

ランド―ラ:船員とお宝、どちらかしか載せられないとして、あんた、どっちを選ぶ?

ルチェッタ:…質問してもよろしいかしら?

ランド―ラ:駄目だ!自分で考えな。

ルチェッタ:…選べない。

ランド―ラ:なぜ?

ルチェッタ:…船員たちがどんな人たちか、想像できないわ。

ルチェッタ:船員たちがどんな人たちか分からないのは、会ったことがないからだわ。

ルチェッタ:知るためには、やっぱり、船に乗らないと。

ランド―ラ:…アッハッハッハ、気に入った!

ビ―グル:海なんてのはな、出たとこ勝負だ。

ビ―グル:それをわかってる。

ランド―ラ:姫、あんた政治を、どこで覚えた?

ルチェッタ:おばあさまのところ…母様かあさまが亡くなって…

ビーグル:…そうか。シャルロット元女王陛下の元で…

ランド―ラ:…いいだろう。但し、甘えはなしだ。

ランド―ラ:…海賊は自由だ。自由だからこそ、姫だろうと何だろうと、平等に働いてもらう。

ドン:お前たちがそういうなら、良いぜ。

ドン:ボルゾイだって、お貴族様のお仲間が出来て、嬉しいだろう。

ジャスパ―:待て!姫を連れて行くなら、俺も行く。

ドン:ああ?ジジィが何の役に立つ?

ジャスパ―:俺は姫の付き人だ!お前ら海賊が姫に何かしないか、見張るんだ!

ドン:…このジジイも連れてけ。


3.「王の黒犬号」(ウィペット、サル―キ、ボルゾイ、ドン、ランド―ラ)

ウィペット:ドン、何なんですか、このチンチクリンは!

サル―キ:女なんて陸で買うものでしょ?自分で言った言葉、忘れちゃったんですか?

ウィペット:変な服着てる!奴隷ですか?

サル―キ:ほんとだ―!ひらひらしてる!

ウィペット:大変だ!ドンが変になっちまった!

サル―キ:俺たち、王様に助けてもらって海賊やってるのに、この国の女をさらうなんて!

ボルゾイ:二人とも!静かに!…ムッシュ・ドン、説明を。

ドン:この国の姫が俺たちと一緒に旅する。以上だ。

ウィペット:そっかぁ~

サル―キ:「そっかぁ~」じゃねぇよ!ウィペット!

サル―キ:どう考えても説明が足りない!

サル―キ:女を載せるなんて!ドンがそんなことすると思わなかった!

サル―キ:オレは船を降りるぜ!不吉だ!

ドン:まぁ落ち着けよ、サル―キ。

ランド―ラ:サル―キ、女が乗ってても沈まない船を、あんたよ―く知ってると思うけどね。

サル―キ:…姉御は…特別じゃねえか。

ボルゾイ:…私も反対です。姫が船に乗るなんて異常ですよ。

ウィペット:お姫様が一緒に来るなんて素敵だけど…

ウィペット:ドン、みんなの顔、見てくれ…不安じゃない?こういうの?

ランド―ラ:…アタシもそう思う。

ランド―ラ:でもね、みんな、何かを変えることなしに、これ以上進めないだろ?

ドン:お前ら、俺たちが乗ってる船の名前言ってみろ?

サル―キ:…王の黒犬号…。

ドン:黒犬と言や、海賊にとっちゃ一番に不吉なものじゃねぇか?

ドン:俺たちに渡れない海はねぇと言ってみろ!

ドン:俺たちは、どんな海も渡って来た!

ドン:誰が一緒だろうが、どんな条件だろうが、渡って来た!

ドン:今回は、ちょっと散歩に行くだけだ!

ドン:それでもびびってる奴は、今回は船から降りな!

サル―キ:…そうだ、ドンの言うとおりだ…

ボルゾイ:…総員、表情が変わりましたね。

ボルゾイ:わたくしはあくまで反対ですが…

ドン:お前が一番喜んでくれると思ったんだが…

ボルゾイ:私は、あなたに従うだけですよ、ドン。

サル―キ:今夜は飲もう!明日から船出だ!

ウィペット:ビ―グル、歌を歌ってくれよ!景気のいいやつをよ!


4.甲板にて(出演・ルチェッタ、クマイヌ、ボルゾイ)

ボルゾイ:…ボンソワ―ル、マドモワゼル。…お顔が真っ青ですよ。

ルチェッタ:…ボンソワ―ル、ムッシュ―。

ルチェッタ:…怖かったの!…私、何も喋れなかった。

ルチェッタ:…もっと簡単だと思ってた。

ルチェッタ:私、思っていたより、情けなかったみたい…

ルチェッタ:私、喋れなかったの…

クマイヌ:アンシン、シロ。オレも、シャベルの、ヘタ。

ルチェッタ:…ムッシュ・ボルゾイ、この方は?

ボルゾイ:クマイヌです。宴会の時もこうしてここで見張りを。

ルチェッタ:アンシャンテ、ムッシュ・クマイヌ。

クマイヌ:…アンシャンテ、ヒメ。

ルチェッタ:不思議な方ね。…肌の色が違うわ、よく見たら。

クマイヌ:ツキのヒカリ、ハダノイロカクス。

ルチェッタ:ムッシュ、あなたは、貴族でしょう?

ボルゾイ:…元はね。

ボルゾイ:あるところに、没落した貴族がいたのです。

ボルゾイ:貴族は、嘘をつく天才でした。

ボルゾイ:貴族は、嘘をつくうちに、自分が誰かわからなくなりました。

ボルゾイ:とうとう貴族は、牢屋に入れられてしまいました。

ボルゾイ:ところが、隣の牢屋にいた海賊は、自分を見失わない天才でした。

ルチェッタ:…不思議な話ね。

ボルゾイ:二人は、合図を重ね合って、ついに、海へ出ました。

ルチェッタ:…ムッシュは、ドンが好きなの?

ボルゾイ:まさか!…損得勘定で、付き合ってるだけです。

ルチェッタ:…損得勘定…宮殿を出ても、そんなものがあるのね…

ボルゾイ:この世は、損得勘定で満席ですよ。

ボルゾイ:自分を取り巻く損得のことを、「ファタル」というのです。…

ルチェッタ:ファタル…

ルチェッタ:なんにせよ、明日、ムッシュ・ドンとランド―ラさんにお礼を言わないと…


5.黒犬号の中で(出演・ランド―ラ、ルチェッタ、ドン、ジャスパ―)

ランド―ラ:起きな!

ルチェッタ:んん…もう一時間…

ランド―ラ:…なんだい、海賊になるんだろう?さっさと起きな!

ルチェッタ:ランド―ラさん、…朝のお紅茶は…?

ランド―ラ:お紅茶だと!?そんなもんないよ!

ルチェッタ:ひどいわ…ランド―ラなんか、死刑よ…

ルチェッタ:お父様に言って…死刑にしてもらうんだから…

ランド―ラ:…寝ぼけてるのかい?さっさと着替えな!

ランド―ラ:海賊になりたければね、早寝早起き、たっぷり働け!

ルチェッタ:いたっ!

ランド―ラ:いいかい、雑用を教えるよ。一度で覚えな。

ルチェッタ:シブシブ…わかったわよ、ランド―ラさん。

ランド―ラ:それが人にものを教わる態度かい?

ランド―ラ:それから、アタシのことは一等航海士マムと呼びな!

ルチェッタ:ううっ…イエス、マム、イエス!

ドン:おお―、似合うぜ、姫。

ルチェッタ:メルシ、ドン。

ジャスパ―:姫になんて格好させてるんだ!ズボンを履かすなんて!

ルチェッタ:動きやすいわ。コルセットもハイヒ―ルもない。

ドン:お前も着替えて…働け!

ドン:そうしたら、昼にはモヤシと干し肉をやろう。

ジャスパ―:干し肉!?ワタシは、サ―ロインしか食わんぞ!

ドン:サ―ロインだぁ!?

ドン:この海の上で、そんなものが食えると思ってるのか!?

ジャスパ―:それに、なぜモヤシなんだ、薄汚い海賊め!

ドン:モヤシは健康にいいんだ。机の中で栽培できるしな!黙って食っとけ!

ジャスパ―:痛っ!…シブシブ…

ジャスパ―:(胸に提げているロケットに)タ―シャ、パパ上はね…

ジャスパ―:姫に付いてきたばかりに、酷いことになっているよ…

ルチェッタ:何よ―!


6王の怒り(アルフレド、ルシテ―ア、テオドール、ランド―ラ、ガストン)

アルフレド:探せ!草の根分けても探せ!

アルフレド:マッドドゴス団と姫を探すのだ!

アルフレド:海賊共め、飼い犬に手を嚙まれるとは、このこと!縛り首にしてやる!

テオドール:父上、お待ちください。

テオドール:マッドドゴス団から手紙が…

アルフレド:なに?

ランド―ラ:「親愛なる殿下、ルチェッタ姫は、私共がお預かりしております。」

ランド―ラ:「絶対に傷付けはしません。ルチェッタ姫は、一回りも二回りも成長させてお返しします。」

ランド―ラ:「王の黒犬号・一等航海士・ランド―ラ・ミミ」

アルフレド:(紙を引きちぎる音)ふざけるな!海賊風情が!

テオドール:ランド―ラは、信が置けると僕は思います。

テオドール:姉上だって、何の考えもなしに海賊に付いて行くような人じゃない。

テオドール:今一度、ランド―ラと会話を。

アルフレド:テオ…それだけは、お前の頼みでも聞けない。

アルフレド:ルチェッタはな、余の大事なドロテスの子どもなんだ…ドロテスに生き写しだ…!

アルフレド:ガストン提督、海軍全軍に指揮を出せ!

ガストン:ハハッ!

アルフレド:マッドドゴス団を見たら、生きたままこのアルフレド・フォン・カ―リッヒ王の元に連れて来いとな!

ガストン:承知いたしました。

ルシテ―ア:待って、これはチャンスかもしれない…

ルシテーア:違うの!あの女は憎いけれど、その娘のルチェッタを憎んでいるわけではない…

ルシテーア:でも、姫がこのままどこかへ消えてくれたら…

ルシテーア:あ!…わたくし、なんて恐ろしいことを…!

ルシテーアいけないわ。神様、どうかお守りください


6.ラ―マ号の襲撃(出演・ジルバ―、ドン、ウィペット、サル―キ、ビ―グル)

ビ―グル(歌う):海は俺のかわいこちゃんさ

ビ―グル(歌う):気まぐれで無慈悲な女ほど、男を夢中にする

ビ―グル:(歌う)海は秘密を沈めた不思議な女

ビ―グル(歌う):俺たちゃ海が、大好きさ

ドン:ビ―グル、海図は描いたのか?

ビ―グル:あったりめぇよぉ、ドン。

ビ―グル:俺の海図があんたを裏切ったことがあったかい?

ドン:それでこそビ―グルだぜ。

ウィペット:ドンの兄貴ィ、ロンバルド帝国の船ですぜぇ。

ジルバ―:諸君!我々ラ―マ号は、憎っきト―リャのクソ犬、間違った、黒犬号を、今度こそ沈める!

ジルバ―:しかも、スパイの情報によれば、敵の船にはルチェッタ姫が乗っている。

ジルバ―:姫を捕らえろ!

ジルバ―:まぁ、僕とフィン副官がいれば、大丈夫サ。気楽にね。

ドン:ジルバ―か。

ドン:「一昨日おいで」とでもあいさつしとけ。

ウィペット:あっ、俺たちの味方だ。

ウィペット:…なになに、「お前たちは姫をさらった。お前らは縛り首だ」…?

ウィペット:返信しとこう。「一昨日おいで。」

サル―キ:ウィペットのバカ!

サル―キ:ウィペットのやつ、ト―リャの軍艦に無礼を!

ドン:おいおい、こりゃ―やべ―ぞ。

ドン:お前ら、港へ向けて全速前進だ!ボエミアへ向けて、逃げ切れ!

サル―キ:ドンの兄貴ィ!だから俺は言ったじゃねぇか!

ドン:うるせ―!今考えてるから、お前はとにかく漕げ!

サル―キ:わっかりやしたぁ!

サル―キ:野郎ども!ボエミアへ向けて、全速前進!


7.ボエミアにて(出演・サ―レフ、ドン、ルチェッタ、カラメリ、ジャスパ―)

(7―1)

ドン:(小声で)いいか?

サ―レフ:入れ。

サ―レフ:ドン、久しいな。…そちらの方は?

ドン:何も聞くな。いいか?朝が来たら、お前は何にも見てねぇし聞いてねぇ。

サ―レフ:…

ドン:嫁さんは、元気か?

サ―レフ:…ポカラは、元気だ。もうすぐ、子どもも生まれる。

ドン:そりゃあ、よかった。

ドン:その生活を続けたきゃ、何も聞かずにいつもの取引しておくんな。

サ―レフ:わかった…でも、聞いてもいいかな?

サ―レフ:これからどうするんだ?

ドン:…話したくない。

サ―レフ:…姫をさらったんだろう?

ドン:知ってるのか?

サ―レフ:知っている。商人は、情報が命だ。

サ―レフ:だが、お前には恩がある。だから、お前と取引をする。

ドン:全く…お前みたいのがどうやって商人やってんだか…

サ―レフ:姫様、こんばんは。

ルチェッタ:ボンソワ―ル、…あなた、風の民ね。

サ―レフ:そうだ。養父に、赤馬に乗った賢者様と同じ名前を付けてもらった。

ルチェッタ:知ってるわ、その話、昔々、まだ魔物がいた頃、ってやつ。

サ―レフ:落ち着いている…さらったんじゃないんだな?

ルチェッタ:そう。…私が付いてきたの。

サ―レフ:…逃げなさい。ここは、ト―リャではない。

サ―レフ:ナザレスへ行け。

ドン:ナザレス?あそこには、ロンバルドの連中がいるじゃねぇか。

サ―レフ:…ロンバルドの人々に紛れて、王の怒りが解けるのを待つんだ。

サ―レフ:それに、上手くやれば、ロンバルドを出し抜いてこれを手に入れられる。

ドン:なんだ、これ。

サ―レフ:コショウだ。ナザレスで取れるらしい。

ドン:味見を…

サ―レフ:金貨10枚。

ドン:ああ…お前そういうやつだったな…

ドン:金貨7枚でどうだ?

サ―レフ:ロンバルドでは、金と同じ重さで取引されているんだぞ?

ドン:くっ…このヤロウ…

ルチェッタ:ねぇ、この子供は何?

ルチェッタ:どうして檻に入れられてるの?

サ―レフ:お姫様は、奴隷をご存じない?

ルチェッタ:奴隷…?こうやって売られているの?

ドン:…海の民?10歳くらいか?

サ―レフ:わからないんだ。

サ―レフ:元の持ち主に殺されかかっているところをポカラと出くわしてな。

サ―レフ:ポカラが哀れがるから、引き取って、生まれる子の世話係にでもと思ったんだが…

サ―レフ:全く言う事を効かないし、言葉を覚えようともしない。

サ―レフ:ナザレスに行く途中、逃がしてやってくれないか…

ドン:そうさな…

ドン:コショウ、金貨7枚で。

サ―レフ:くっ…いいだろう。

サ―レフ:ドン、生きて帰って来いよ。商売相手がいなくなるのは、困る。

ドン:そりゃ、お互い様だ。サ―レフ、生きていろよ。

(7―2)

ジャスパ―:お帰りなさい、姫。…なんです?その汚いのは?

ルチェッタ:海の民よ。一緒にナザレスへ行くの。

カラメリ:ありがとう、ルチェッタ姫。君は強くてかわいいね。

カラメリ:僕のお嫁さんになってよ!

ルチェッタ:奴隷が喋った!

カラメリ:当たり前だろ、この国のコトバなんて、簡単さ。

ドン:なぜ喋らなかったんだ?

カラメリ:…

ルチェッタ:あなた、どうして黙ってるの?

カラメリ:僕は、ガルダゴの王子だからね。ルチェッタとしか喋らない。

ジャスパ―:ガルダゴ?

カラメリ:おじさんとは喋らない。

ルチェッタ:ガルダゴってどこ?

カラメリ:ガラガラの向こうさ。あ、君のコトバではナザレスだったかな。

ドン:ナザレスの向こう?

カラメリ:…

ドン:なぁ、…このガキ、海に沈めてもいいかな?

ルチェッタ:…ねぇ、あなたの名前は?

カラメリ:カラメリ。

ルチェッタ:カラメリ、この二人とも喋ってくれる?

カラメリ:いいよ。ルチェッタの頼みなら。

ドン:で、お前、なんで奴隷になってたんだ?

カラメリ:ガルダゴを離れて小舟でふらふらしてたら、ナザレスに捕まった。

ドン:お前をガルダゴに返したら、見返りに何をくれる?

カラメリ:そうだなぁ…ビ―玉とか?

ドン:ビ―玉?

カラメリ:うん。金1カランと交換するんだ。

ジャスパ―:金?金ってあの…金か?

カラメリ:黄色いキラキラした、子どものオモチャさ。

カラメリ:ぐにゃってなっちゃうから、武器にも道具にもできないんだよね。

ジャスパ―:(ドンに頬をつねられて)…痛い!

ドン:…夢じゃねぇようだな

ジャスパ―:何するんだ、この無礼者!…で、カラメリお坊ちゃん、金1カランって、どのくらいで?

カラメリ:急に態度が気持ち悪いよ―、おじさん!

カラメリ:1カランは、大人の男の腕に一杯くらい。

ジャスパ―:大人の男の腕に一杯!

ジャスパ―:あのですね―、金…間違った、カラメリ王子とは、今後もよろしくお付き合いをしていきたいと…

カラメリ:金なんかでいいの?金なんか、そこら中にあるけど。

ジャスパ―:いいんですよ!それだけあれば、家族に贅沢させられる!

ジャスパー:ワタシは国へ帰っても、このままいけば姫を止められなかった罪で、死刑だ!

ジャスパー:だが、黄金が手に入ったら?

ジャスパ―:タ―シャ、パパ上は今、姫に付いてきて本気でよかったと初めて思ってるよ。

ルチェッタ:何よ―!

ドン:…お、ッと、こりゃあ、真剣にならなきゃあな…

ドン:ルチェッタ、行くぞ、ガルダゴへ…!


8.(出演・シ―タ、ジルバ―)

ジルバ―:ジルバ―提督、ただ今帰還いたしました。

シ―タ:大儀であった…

ジルバ―:陛下…わたくしをお叱りにならないのですか…

シ―タ:なぜ…?

ジルバ―:私は、またしてもドンを…きゃつらを取り逃がしました。

ジルバ―:陛下…陛下はいつでも、僕に優しくしてくださる…

シ―タ:…お前はナザレスでよくやってくれている…

シ―タ:そんなそなたを、どうして叱る必要があって?

ジルバ―:陛下、陛下…僕は、全身全霊あなたのものです…

シ―タ:陛下、ではなく、ただのシ―タと。…

ジルバ―:シ―タ、様。…(手にキスする音。自分の手にキスしてください。)

シ―タ:早くに夫を亡くし…息子のいないワラワの味方は…あなただけ…

ジルバ―:…僕は、海軍上がりだから分かりませんが…

ジルバ―:シ―タ様の周りとは、そんなに冷たい世界なのですか…?

シ―タ:そう。そうなの…ジルバ―、あなたを、…信頼しています。あなただけを…

ジルバ―:それは何という光栄…間違った、悲劇。

ジルバ―:陛下はこのロンバルドをよりえあるものにしておいでです…

ジルバ―:それなのに、信じられるのは僕だけだとは…ああ、シ―タ様!

シ―タ:ただの、シ―タと。

ジルバ―:神がお許しになるだろうか…

シータ:どうでしょうね…でも、妾の胸の内に触れてみて…ほら、こんなに熱いの。…

ジルバー:(逆上して)ああ、シ―タ、シ―タ!(激しく手にキスする)

ジルバ―:…2つ、お願いがあります。

シ―タ:なぁに?

ジルバ―:僕に海軍全軍の指揮権を!

シ―タ:…よいでしょう。して、もう一つは?

ジルバ―:もう一つは…それは、あのにっくきドンをぶっ潰してから、…

シ―タ:…よいでしょう。

ジルバ―:では、行ってまいります!

ジルバ―:ドンたちは、なんとルチェッタ姫を船に乗せているのです!

ジルバ―:必ずや、ドンとルチェッタを、シ―タ、あなたの御前に…!

ジルバ―:ね、シ―タ、帰ってきたら、僕の願いをかなえて下さいますね…?

ジルバ―:…最後に、もう一度だけ(手にキスする)…

ジルバ―:ロンバルド帝国に、栄光あれ!神の名の元に!

シ―タ:ええ、神の名の元に…行ったか。他愛もないことよ。

シ―タ:若い男は、恋の炎であぶるに限るわ!

シ―タ:さて、あのアルフレド王が、娘を妾に捕らえられて、どう下手に出てくることやら…考えるだけで胸躍るわ!


9.魔の海(ビ―グル、クマイヌ、ドン)

ビ―グル:ドン、ここからは、俺の知らない海だ…知らねぇ女は、怖いよ。

ドン:何ぬかしてんだ、ビ―グル!俺たちに渡れねぇ海などないと言え!

ビ―グル:…本当に行くのかい?

ドン:サル―キに先発隊として行かせてる。…もう、引き下がれねぇ。

ドン:なぁ、ビ―グル、お前は、どんな海だって手懐ける、色男じゃねぇか。

ビ―グル:…まぁ、海を女とすれば、そうだいねぇ…

ビ―グル:でも俺は、チビでデブでハゲだよ!

ドン:見てくれが何だってんだよ!ほら、ビ―グル、ラム酒をグイ―と。

ビ―グル:…ヒック、…でも、魔の海が…

ドン:なぁ、ビ―グル、だからこそよ。

ドン:お前が誰も描いたことのない海図を描く!

ドン:お前が、誰も見たことのない女の秘密を覗くんだ!

ドン:お前ならできる。

ビ―グル:何で?

ドン:俺はな、お前の才能に惚れこんでんだ。ほら、ラム酒をグイ―と。

ビ―グル:ヒック…ド―ン?いつもぉ、この手だよなぁ…

ドン:何が?

ビ―グル:俺がぁ、もうらめらって言うとぉ、必ずおだてやがってよぉ…

ドン:だって本当のことだからよ!…やってくれるか?

ビ―グル:もぉ…そんなに言われたらぁ、…やるしかねぇだろぉ!

クマイヌ:シュクン!ビ―グルニ、ノマセル、ヨクナイデス!

ドン:固いこと言うなって…

ドン:ホラ、始まった…ビ―グルの神業がよ!

クマイヌ:…

ドン:…すごいだろ?

ドン:クマイヌ、俺ぁな、ずっと魔の海を超えて見たかったんだよ。

ドン:…お前らとな。…

クマイヌ:ウミ、ワタッタッテ、オレのクニ、アルダケ。…

クマイヌ:ドコまでイッテも、ウミはウミです…

クマイヌ:オレ、ビ―グル、シンパイデス。

ドン:大丈夫ダイジョブ!こいつ、ウワバミだから!

ドン:優しいね、お前。

クマイヌ:…オレ、ビ―グルとヨク組む。ノデ…

クマイヌ:…アシ、ヒッパラレタクナイダケデス!


10.ガルダゴへ(出演・ランド―ラ、ドン、カラメリ、ルチェッタ、ボルゾイ)

(10―1)(ランド―ラとドン、チェスをしている。)

ランド―ラ:そろそろ、潮時じゃないかね…ポ―ン。

ドン:いいや、ビ―グルならできる。…クイ―ンでこうだ。

ランド―ラ:乗組員たちが、反乱する気配があるよ。…ナイトを前へ。

ドン:じゃあ、みんなに呑ませちまおうか。酒蔵、解放!ああ…詰まった…

ランド―ラ:そんなんでどうにかなるかい?…アルフレド王から、返事も来ないしさ。

ランド―ラ:これであと一手で、チェック。

ドン:と見せかけて…ハイ、チェック!

ドン:陛下がご機嫌斜めじゃ、俺たちは帰れねぇしな…

ドン:…万事、この調子さ。チェスと同じ。

ランド―ラ:また負けた…

ドン:じゃ、一曲踊ってもらおうか。「ミミ」

ランド―ラ:今のアタシが?「ミミ」を?

ドン:そうだ。10年前、お前は酒場の踊り子。十八番オハコは、「ミミ」。

ランド―ラ:それがそのままあだ名になって。

ドン:何を思ったか造船業を覚えて…

ドン:踊り子から船乗りに。

ランド―ラ:全く、人の気も知らないで…

ドン:ん?

ランド―ラ:何でもないよ…

ドン:しかし、ようやったよな。お互いに。

ランド―ラ:ええ。ずいぶん無茶した。

ドン:ま、踊ってくれよな。

ランド―ラ:…みんなに奢るの?

ドン:ビ―グルが言うには、もう少しで風のない魔の海を抜けるんだと。

ドン:酒の肴に歌でも歌って、漕ぎまくるのさ。

ランド―ラ:…姫がいるんだ。無茶はできないよ?

ドン:姫も、最期の覚悟くらい出来てるだろ。

ランド―ラ:乗組員たちはどうすんのさ?

ドン:いざとなったら、みんな一緒に沈んでもらう。

ランド―ラ:全く!あんたに付いてきたのは、狂気だとしか言いようがないね!

ドン:何をいまさら。…さ、踊ってくれ!景気づけだ!

0:(10―2)

ルチェッタ:ボンジュ―ル、ムッシュ・ボルゾイ。…何を見てたの?

ボルゾイ:ボンジュ―ル、マドモワゼル。…いえ、何も。

ボルゾイ:雨が降りそうですね。…嵐の匂いがします。

ルチェッタ:ええ。さっき、サル―キたちが帰って来た。…

ルチェッタ:怖いわ…波が船を揺らすでしょう?

カラメリ:怖くないよ。ボクがいるからね。

ルチェッタ:カラメリ!?いつの間に?

カラメリ:さっき、サル―キたちと帰って来た!

ルチェッタ:そっか。…この方向に、ガルダゴがあるの?

カラメリ:間違いない。どんどん、故郷に近づいてる。

ボルゾイ:カラメリはどうして故郷を離れたのですか?

カラメリ:僕の国では、10年に一度、王族の中で一番強い若者を、カリプソに捧げるんだ。

ルチェッタ:カリプソ?

カラメリ:海の女神さ。今年は、僕がイケニエだった。

ボルゾイ:…故郷に帰ってしまって、大丈夫なのですか?

カラメリ:カリプソは許さないかも…

カラメリ:でも、ガラコはきっと許してくれるよ。

ルチェッタ:ガラコって、誰?

カラメリ:僕のお兄ちゃん。ガルダゴの王様。

ボルゾイ:我々は、場合によってはガラコに仕えるかもしれませんね、ルチェッタ姫。

ルチェッタ:そうなの?

ボルゾイ:…ト―リャには、暫く帰れませんからね。

カラメリ:そうしたら、僕と結婚して、ずっとガルダゴにいたらいいよ、ルチェッタ!

ルチェッタ:あなた、結婚結婚っていうけど、結婚が何かわかってるの?

カラメリ:わかってるよ。それに、一目見た時から、ルチェッタを好きなんだ。

ルチェッタ:もう!お父様といい、カラメリといい、…私に結構を急かすんだわ!

ボルゾイ:おやおや、姫は結婚がおいやですか?

ルチェッタ:イヤではないけど!

ルチェッタ:…今は、マム・ランド―ラから船の操縦を教わる方が楽しいの!

ボルゾイ:…なるほど。あなたも、立派な海賊一味ですな。

カラメリ:…二人とも!来る!

ルチェッタ:え…?何が?

カラメリ:ナザレスだ!


11.ナザレスの脅威(クマイヌ、ボルゾイ、カラメリ、サル―キ、ルチェッタ)

カラメリ:来る!ナザレスの船だ!

ルチェッタ:え?どこ?見えない!

ボルゾイ:マドモワゼル、隠れて!私が指揮を執ります。

ルチェッタ:ノンよ!ムッシュ。私も戦います。

ルチェッタ:ロンバルドから私を守ってくれたこと、忘れていません。

カラメリ:それでこそ、僕の花嫁だ!僕も戦う!

ボルゾイ:…ウイ、…船の数はいくつですか?カラメリ。

カラメリ:4隻。こちらより小さい。でも小さい分、早い。

カラメリ:右側から2隻、左から2隻来るよ。確実に追い付かれる

ボルゾイ:どの船がキャプテンか、わかりますか?

カラメリ:右のやつかな…

ボルゾイ:メルシ、カラメリ。

ボルゾイ:奴らの襲撃方法は単純だ。…こちらに乗り込んでくる。それだけ。

ボルゾイ:大砲を使うロンバルドの方が脅威。

ボルゾイ:こんなのは、ドンやランド―ラの出るまでもない。

ボルゾイ:サル―キ!大砲用意!

サル―キ:先生、オレ、帰って来たばっかだっつの!人使い荒いぜ!

ボルゾイ:元はといえば、つけられるへまをしたお前が悪い!

サル―キ:ごめんて、先生。じゃあ、ちょっくら行ってくる。

カラメリ:ボクらは?

ボルゾイ:私のそばにいて下さい。

サル―キ:野郎ども!大砲用意!

サル―キ:ダメだよ、先生!あいつら、動くの速い!照準が合わねぇ!

ボルゾイ:…では、小舟で行って、迎撃してください。

ボルゾイ:…サル―キ、クマイヌ、頼みました。

クマイヌ:…ビ―グルハ?

ボルゾイ:ドンと一緒に飲み過ぎて、寝てます。

サル―キ:ウィペットは?

ボルゾイ:ビ―グルの書き散らした海図を、整理してます。

サル―キ:よっしゃああ!

サル―キ:ウィペットがいない間に手柄を立てて、ドンの兄貴に認めてもらうんだ!

クマイヌ:ビ―グル…ダカラシンパイシタノニ…

カラメリ:二人、行っちゃたねぇ。

ボルゾイ:二人なら、大丈夫です。

カラメリ:わぁ、速いな。

ボルゾイ:サル―キは、舟を漕ぐ達人ですからね。もともと漁師だったそうです。

ボルゾイ:姫、望遠鏡、ご覧になります?

ルチェッタ:メルシ、ムッシュ。

ルチェッタ:うわああ、二人とも、どんどん敵を倒していくわね。…

ボルゾイ:クマイヌは、あれ、全部峰打ちですね…優しい男ですから…

カラメリ:ボクも行けばよかった!戦うの楽しそう!

ルチェッタ:まぁ、野蛮だわ!

サル―キ:ヒャッハ―!死にたい奴からかかってこい!

クマイヌ:オレ、ツヨイ。オレ、マケナイ。

ボルゾイ:命のやりとりは、ハマる人はハマりますからね…

ルチェッタ:サル―キって、そのタイプの人みたいね…

ボルゾイ:そうですね…

サル―キ:ただいま!先生!あいつら、大したもん持ってなかった!

クマイヌ:…コレダケダ。

ルチェッタ:…ルビ―の指輪に、金細工の腕輪。他にも色々…

ボルゾイ:なるほどねぇ…食料は無しですか…きついなぁ。

カラメリ:逃げていく…追うかい?

ボルゾイ:行く方向と逆ですよ。

ボルゾイ:まぁ、サル―キに襲われたら、リベンジする気にはならないでしょう。

ボルゾイ:ほっときましょう。


12.黄金の都(出演・カラメリ、ジャスパ―、ルチェッタ、ガラコ、ランド―ラ)

ジャスパ―:航海日誌、39日目。

ジャスパ―:魔の海を10日間漕いでいる。

ジャスパ―:タ―シャ、パパ上は、ず―っと漕ぎをやらされて、へとへとです。

ジャスパ―:伸びっぱなしの無精ひげも、固くて塩辛いだけの肉も、べとべとする潮風も、もう慣れました。

ジャスパ―:でも、お前に会えない事だけが、とてもつらいです。

ルチェッタ:ジャスパ―、何を書いてるの?

ジャスパ―:夢です。ワタシの、夢。…姫の夢は何ですか?

ルチェッタ:私はね、母様かあさまの夢。

ジャスパ―:ドロテス様の?

ルチェッタ:そう。私を生んだのと引き換えに…亡くなってしまった…

ジャスパー:そんなことはない。

ルチェッタ:私が物心ついた時には、いつもベッドに寝てた…

ルチェッタ:そうして、亡くなってしまった…

ジャスパ―:ワタシは王に付いて、ドロテス様を見に行っていたからわかる。

ジャスパー:ドロテス様は、あなたの誕生をとても楽しみにしておられました。

ジャスパ―:姫、ワタシは、この航海で、あなたの、真の姿が、分かった気がします。

ジャスパー:あなたは、勇敢で、賢くて。

ジャスパー:私たちの先祖は、海を渡ってトーリャへ着いたと言われている。

ジャスパー:あなたは、間違いなくその血を引いた女性だ。

ジャスパ―:ただ、ドロテス様の思いだけは、忘れないでください。

ジャスパ―:ジャスパ―からの、お願いです。

ルチェッタ:…うん。

ランド―ラ:陸だ!陸が見えるよ!

カラメリ:タバスの辺りかな…

ランド―ラ:どこだっていい!陸なら!

ランド―ラ:今、海を好きだと思ってるのは、多分ビ―グルとルチェッタくらいだね。

カラメリ:ちょっと待ってて!様子見てくるね!

カラメリ:タッガ、ルミド!ゾラ!ウンバル!ヨラヨラ!(やあ、ルミド!そう、戻ったよ!後でね!)

カラメリ:大丈夫そう!ルチェッタ、おじさん、行こう?

ランド―ラ:ドンも連れてって。

ルチェッタ:どうして?

ランド―ラ:マッドドゴス団のリ―ダ―だからさ。

ルチェッタ:マム・ランド―ラは?

ランド―ラ:船を直さなきゃ。嵐に海賊…散々な目に遭って、ボロボロだよ。

ランド―ラ:幸い、この辺の木は、良い木材になりそうだね。

カラメリ:ちょっとぐらい切ってもいいと思うよ。

ランド―ラ:しかし、ここに金があるのかい?

カラメリ:金なんか、いっぱいあるよ。

カラメリ:でも、金は勝手に取らないでね。

ランド―ラ:わかった。

カラメリ:みんなには、君たちを歓迎するように言っておく。

カラメリ:そうすれば、ヘビと毒虫以外、君たちを襲うものなんかいないよ。

ジャスパ―:へ、ヘビがいるんですか…?

カラメリ:うん。あと、ダガワリ!

ジャスパ―:ダガワリって何ですか!?


13.ガルダゴ王ガラコ(出演・ドン、ルチェッタ、ガラコ、カラメリ、ジャスパ―)

ルチェッタ:すごい森…ドレス、ボロボロ…

ジャスパ―:素直に船乗りの服を着てくればよかった…

カラメリ:後で服はあげる!

ドン:しっかし、みんな俺たちを珍しがってるな…

カラメリ:時々君たちの国から船乗りが来るけど、本当に珍しいからね…

カラメリ:ヨゾロ、ウンバル。(ご苦労、戻ったぞ。)

ドン:何でこの家だけ金ピカなんだ?

カラメリ:王様の家だからね。

(ガラコ、わざわざ家から出てくる)

ガラコ:ラバラバ!カヌレ、ヌガ―、ナン、ト―ト!(おお、可愛くて強い、我が弟よ!)

カラメリ:ガラコ!ウンバル!(ガラコ!戻ったよ!)

(二人、抱きしめ合う)

ガラコ:バル…キィエ?ド―ナ?(…この者たちは?)

カラメリ:ナン、リシ、ド、ド―ニ、サンシャ。(俺の嫁さんと、その召使い。)

カラメリ:ルチェッタ、ド、ジャスパ―。

ガラコ:ラバラバ!グ―ク!(何と!)

ルチェッタ:え―と…アンシャンテ、ムッシュ・ガラコ。

ドン:感動の再会中悪いんだが、俺たちにわかる言葉話してくれないか?

ジャスパ―:野蛮人だ!獣の唸り声にしか聞こえん!

カラメリ:ド―ラム、ス―ホ・フ、ソンタ。(白き砂の地のコトバで話して下さい。)

ガラコ:バル…オマエタチ、カンゲイスル。…オレ、ガラコ。

ルチェッタ:ルチェッタです、ラガコ王。

ガラコ:ウン…カラメリのハナヨメ、カンゲイスル。ソレと、ジャスパ―。

ジャスパ―:アンシャンテ、王様。

ドン:俺は、ドン。歓迎、ありがとう、王さま。

ルチェッタ:待って…!私はカラメリの花嫁になるとは決めてない!

ガラコ:ム―?バル…

カラメリ:ガラコ、イ―ソイイ―ソイ。

カラメリ:まぁ、そのうちなりたくなるよ。

ルチェッタ:カラメリに話を通訳させて、大丈夫かしら…

ドン:まぁ、大丈夫だろ。

ジャスパ―:ヒィ!なんだこの獣は!

カラメリ:ラバラバ!カヌレ!ヌガ―!

ルチェッタ:大きい猫みたい…

カラメリ:こいつらの親は、人食いダガワリだった。

カラメリ:だから、殺さなきゃならなかった。

カラメリ:ボクが親代わりだった。

カラメリ:ガラコ、殺さなかったの?

ガラコ:オトウトノカタミ、カっていた。

ガラコ:ソイツラニ、タクサン、グゥ(豚)、アタエタ。

ジャスパ―:だから何なんだよ!ダガワリって!

ドン:…ところでなんだが…王さま。

ドン:俺たちに、金をくれないかな?

ガラコ:ソウだな。…我がオトウトを、オマエタチツレてキタ。

ガラコ:ファルファル、タクサンヤル。

ガラコ:デモ、…イイのか?ガラスダマジャナクテ。

ジャスパ―:金が良いですね!断然!

ドン:それと、食べ物が欲しいんだが…

ガラコ:オオクトリスギルモノ、ノロワレル。…

ガラコ:…オレ、ツヨイモノスキだな。

ガラコ:オマエタチノウチ、イチバン強いオトコ、オレとシェルパする。

ガラコ:オレにカッタラ、グゥ、タクサンやろう。

ルチェッタ:シェルパ?


14.海賊ランド―ロ(出演・ランド―ラ、ルチェッタ、ドン、ウィペット、サル―キ)

(14―1)

ランド―ラ:戻ったかい?

ルチェッタ:大変なんです、マム!

ランド―ラ:何が?

ドン:食料をもらう代わりに、なんかスポ―ツをやれって。

ウィペット:俺がやる…ウェッ…

サル―キ:オレが行く…げぇっ…

ルチェッタ:そうよね…全員、ラム酒の飲み過ぎでダウンよね。…

ランド―ラ:クマイヌは?

ドン:あいつは、刀以外は握りたくねぇって。

ウィペット:俺が行くって…おえっ…

サル―キ:なんの、オレが…うぷっ…

ランド―ラ:…アタシが行こうか。

ドン:俺は義足だから、こういうのやりたくないし。うん、お前が行け、ミミ。

ルチェッタ:男じゃなきゃダメだって!

ランド―ラ:バレなきゃ大丈夫さ!

14―2シェルパ(出演・ガラコ、ランド―ラ、ドン、ウィペット、サル―キ)

ガラコ:タンガル・イクバル、ガンガ―ト、バ―ト!ルインダ、コクシ、ダンダリア、ハンゾス!(皆々の者、よくぞ参った!今宵は、宴じゃ!)

ガラコ:トゥインダ、ゾ―チェ、ピスカ―ト、ドトラ!(マレ人来たりて福を呼んだ!)

ガラコ:ナン、カヌレ・ヌガ―、ト―ト、ウンバル、オダ・カリプソ!(我が愛おしくも強い弟は、カリプソの手から蘇った!)

ガラコ:グ―ク・ト、ゾ―チェ、サパ―ノ、ナニ、シェルパ!(この幸運を祝して、シェルパを執り行う!)

ガラコ:サア、マレ人!強いオトコ、掛かってコイ!

ランド―ラ:よう。

ガラコ:こんな、オンナのようなのが、ツヨイノカ?

ランド―ラ:俺はランド―ロ。今は一番、俺が強い。

ガラコ:バル…ホントウカ?

ウィペット:そうだぞ!あね…ランド―ロの兄貴は、俺たちより強い!

サル―キ:そうそう!あね…アニキは、めちゃくちゃ強い!

ガラコ:…ヨカロウ。イザ、ショウブだ!

ランド―ロ:いくぜっ!はぁッ!

ガラコ:ツヨイな…コレは、タノシメソウだ。…

ガラコ:イ―ヤッ!

ランド―ラ:うわ…一撃でも喰らったらお終いだ…でも、振り方は見切った!

ガラコ:イクゾ…イ―ヤッ!

ランド―ラ:てぇやっ!

(14―3)(出演・ドン、ガラコ、ランド―ラ、ビ―グル)

ガラコ:ハッハッハッハ!ジツにユカイだった!

ランド―ラ:お楽しみ頂けたようで何より…だぜ。

ガラコ:オマエ、ツヨイな!オマエがオンナだったら、ワガ、ツマニムカエテイタナ!

ランド―ラ:ああ―、…そう?

ガラコ:ワガ、ケライニならないか?ランド―ロ。オレ、オマエ、キニイッタ。

ランド―ラ:(小声で)断ったら、まずいかな?

ドン:(小声で)おめぇがしたいようにしな。

ランド―ラ:ありがたい言葉だ。だがな、俺はもうすでに、ドンの手下なんだ。

0:(沈黙)

ランド―ラ:(小声で)やっぱまずかったんじゃない?

ドン(小声で):なるようになる。…

ガラコ:ハッハッハッハ!マスマスキニイッタ!

ガラコ:ファルファルでも、何でも、スキなもの、モッテいけ!

ドン:やったぜ、ミミ!追い風が吹いてる!

ガラコ:ランド―ロ!銀のアシのドン!コヨイハノミアカスゾ!

ビ―グル(歌う):海は人と人を別れさせ

ビ―グル(歌う):出会わせもする

ビ―グル(歌う):粋で残酷な女神さ

ビ―グル(歌う):俺たちゃ海が大好きさ


15.追手(出演・ジルバ―、フィン)

ジルバ―:いやぁ―、長かった!

フィン:そうだな。

ジルバ―:スパイを忍び込ませたり、ナザレスのやつらに妨害させたり…

ジルバ―:やっと、黒犬号に追い付いた!

フィン:乗組員に反乱の気配があった時は…

フィン:乗組員と一緒にお前を殺し、海賊稼業でもしようかと思ったこともあった…

ジルバ―:え!?…ウソだよね?

フィン:ああ…そう思ってくれて構わない。

ジルバ―:…

フィン:冗談だ。…半分はな。

ジルバ―:…いやぁ―、でも、これでやっと、シ―タ陛下にいい土産が出来る。

ジルバ―:スパイによると、この国は金で満ちており、しかも奴隷にできる土人がたくさんいるそうじゃないか!

ジルバ―:しばらくすれば、海軍の全軍がラ―マ号に追い付く!

ジルバ―:その時は、黒犬号の沈むときだ!

ジルバ―:帰ったら、どんなにか褒められるか…

ジルバ―:そして、シ―タ様と…ああ…

フィン:ジルバ―、…気持ち悪い。

ジルバ―:君、僕のこと上司だと思ってないな!?

フィン:思ってないな。

ジルバ―:…まぁいい。フィンは、なんだかんだ僕が好きだもんな!

フィン:…信頼はしている。

フィン:…オレはずっとお前に付いてきた。

フィン:この世で最も執念深く、かつ仲間を大切にするやつがいるとしたら、それはお前だと思ってる。

ジルバ―:…だよな。

ジルバ―:…ねぇ、さっきの、本当に冗談だよね…?


16.裏切り者の正体(ルチェッタ、ビ―グル、ランド―ラ、ドン)

ランド―ラ:気づいてるかい?

ドン:煙の匂いだ。

ランド―ラ:船は無事か?

ビ―グル:今見てるよ。…無事だ。…クマイヌのやつが見張ってくれてる。

ビ―グル:船から西側の、ガルダゴの村が襲われてる。…ラ―マ号だ!

ビ―グル:ひでぇ…

ランド―ラ:追ってきてたのか…ラ―マ号!

ドン:…あれ?ボルゾイがいない。

ランド―ラ:…宝もなくなってる。

ドン:そんな…まさか…

ドン:(今までの落ち着きが嘘だったように情緒不安定)嘘だ。…これは夢だ。

ビ―グル:…夢だったらいいな…

ドン:ボルゾイ、…

ドン:どうしてだ?俺たち、一番の古い付き合いだったじゃねぇか!

ドン:俺の何が気に入らなかった!?

ランド―ラ:ドン!しっかりしな!

ランド―ラ:今あんたがすべきことは何だい?

ドン:(落ち着きを取り戻す)…そうだな。…

ドン:ビ―グルはクマイヌの部隊を連れて、村へ。

ドン:ガルダゴと協力して、捕まった人達を助けろ。

ドン:ミミ、王の黒犬号はいつ治る?

ランド―ラ:…三日くれたら、全速で走れるようにしてやる。

ドン:わかった。

ドン:ジルバ―のガキ一人なら、海でぶっ潰しゃいい。

ドン:問題は、船が治るまでどうするかだ。

ルチェッタ:わたしが囮になる!

ドン:いつからいたんだ!?

ルチェッタ:あ、あ、…見てないよ、ドンのうろたえるところなんて!

ドン:バッチリ見てんじゃねぇか!

ランド―ラ:囮なんて危ないことするんじゃないよ!

ランド―ラ:いいかい?あんたはチェスのクイ―ンじゃない。キングなんだ。

ランド―ラ:あんたという駒を取られたら、ゲ―ムは終わり。

ドン:…待てよ、面白いんじゃねぇか?

ドン:姫、どうするつもりなのか聞かせてもらおうか。

ルチェッタ:わたしとカラメリで、ガルダゴを逃げ回る。

ルチェッタ:相手がわたしに気を取られている間に、ラ―マ号をやっつければいい!

ドン:なるほど…確かに、敵さんお前が囮になるとは夢にも思わないだろうな。

ドン:おまけで、カラメリの代わりに俺もつけるのはどうだ?

ドン:やっこさんら、ワナとは思うまい。

ランド―ラ:そんな危ないことが出来るか!

ランド―ラ:アタシはねぇ、陛下に、約束したんだよ!

ランド―ラ:絶対に、姫は傷付けさせないって!

ドン:ミミ、俺を信じろ。俺が一度でもチェスで負けたのを、見たことがあるか?

ランド―ラ:机上の空論と血の流れる戦いは違う!

ドン:違わない!少なくとも、俺にとっては。

ランド―ラ:いいかいルチェッタ、ドンはね、いざとなればあんたのことは、切り捨てるよ。

ランド―ラ:ドンは海と冒険が好きな、ただのチンピラなんだ…保護者とは、思うな。

ルチェッタ:…怖いけど…覚悟はできてる。

ランド―ラ:でもあんたは今、マッドドゴス団にとって唯一の、祖国ト―リャとのつながりでもある…

ランド―ラ:だから、簡単には投げ出さないだろう。…

ランド―ラ:ルチェッタ、あんたみたいな賢い女の子を見たことはなかった。

ルチェッタ:マム…

ランド―ラ:さようなら。あんたに海の女神の加護がありますように!

ルチェッタ:ありがとう、マム。…

ドン:…女の友情は、身分さえ軽く超えちまうのかねぇ…


17.捕まったルチェッタ姫(ジルバ―、フィン、ボルゾイ、ルチェッタ、ドン)

ジルバ―:とかなんとかやってたんだろう!

ドン:…ルチェッタの動きが遅いから…捕まってんじゃねぇか。

ルチェッタ:ドン!あなたが宝物に気を取られてるから!

ジルバ―:見事な仲間割れだなぁ!僕らの固い信頼関係とは大違いだ!

ジルバ―:なぁ、フィン!

フィン:…

ジルバ―:なぁ、フィン!

フィン:…どうだか…

ジルバ―:フィ―ン!…どうして最近冷たいんだろう、君ってやつは!

ジルバ―:まぁいいか。せいぜい罪のなすり合いをしながら過ごしてくれたまえ!、

ジルバー:にしても、本当にこれがルチェッタ姫なのか?

ルチェッタ:船の上なんですもの。汚くて当たり前よ。

ジルバー:…そういうものかな?

ジルバ―:ドン!お前は、ロンバルドに帰ったら…

ジルバ―:…市中引き廻しの上、縛り首だ!

ジルバ―:ざまぁ見やがれ!

ジルバ―:残りのマッドドゴスも全員捕らえる!

ドン:ジルバ―、お願いがあるんだが…

ジルバ―:聞くわけないだろう?

ドン:最後に一目、ボルゾイに会わせてくれ。

ジルバー:大海賊最後の願いが、それか?

ジルバー:裏切り者に会いたい、だなんて。

ルチェッタ:男の友情って、ものすごく奇妙ね…

ジルバ―:…まぁ、いいだろう。僕は今、ものすごく気分がいいのでね!

ジルバ―:じゃあ、僕は、これで失礼。

フィン:…悪く思うな。生まれた国が違った、ただ、それだけのことだ。


18.脱獄(ウィペット・兵士A、ドン、ボルゾイ、ルチェッタ)

兵士A:ドン、面会だ。

ボルゾイ:ボンジュール、ドン、姫。

ドン:ボルゾイ…

ルチェッタ:どうしてなの?

ボルゾイ:ドン…

ボルゾイ:あるところに、詐欺師がいたのです…

ボルゾイ:詐欺師は、ある女性を好きになりました。

ボルゾイ:彼女は惚れた男のために、船乗りになりました。

ボルゾイ:詐欺師は、彼女を見ているだけでいいと…

ボルゾイ:自分を騙しました…

ボルゾイ:でもある日、悪魔に取引を持ちかけられて…

ボルゾイ:想像してしまったのです…

ボルゾイ:彼女との、静かな暮らしを!

ボルゾイ:詐欺師は、仲間を騙しました。

ドン:…ボルゾイ…

ドン:何の話なんだ?

ルチェッタ:え…?分からないの?

ドン:ああ、わかんない

ルチェッタ:鈍感すぎる!

ボルゾイ:わからないでしょうね…あなたは、そういう人です、ドン。

ルチェッタ:ボルゾイ…

ルチェッタ:私、あなたがどんな気持ちで船長室でチェスをする二人を眺めていたか、分かった気がする。

ボルゾイ:彼女こそ私の運命の人、ファム・ファタル…

ボルゾイ:私の夢のために…ドン、あなたには、死んでもらう。

ドン:え?ああ…そういうこと?

ドン:え…?え…?

ボルゾイ:ドン、…あなたがそういう人だから、私も苦しかったのです。

兵士A:ドン、時間です!

ボルゾイ:わっ!何をする!?兵士Aのくせに!

兵士A改めウィペット:先生は大人しくしてて下さいね…

ウィペット:で、こんなチャチな鍵はこうして…こう!

ウィペット:ホラ、空きましたぜ。

ルチェッタ:カルダゴを逃げ回れば、ガルダゴの国が傷つく。

ドン:だったら、捕まったふりをして、中から引っ掻き回せばいい。

ウィペット:そういうわけで、先生は牢の中で大人しくしててください。

ボルゾイ:なるほど…パッフェ!完璧な計算です。

ボルゾイ:でも、この国には、じきにロンバルド海軍の全てが押し寄せてくるのですよ。

ボルゾイ:防ぎきれますか?

ドン:おー、そいつは、初耳だ。

ドン:なるようになるさ。

ウィペット:ふん、先生、あなたこそ、大丈夫なんですか?

ウィペット:俺たちを逃がしたことが知れたら…

ドン:やめないか!ウィペット!

ドン:ボルゾイ…生きろ。あばよ。

ボルゾイ:…こうして詐欺師は…

ボルゾイ:またしても、自分が何者なのかという事を失いました…


19.王宮にて(出演・アルフレド、ルシテーア、ガストン、テオドール、ティストル

0:(19―1)

アルフレド:ああー!分からない!分からない!

アルフレド:何故、姫は行ってしまったのだろう!

アルフレド:噂によれば、姫は自ら海賊船に乗ったというじゃないか!

アルフレド:しかも、海賊船の奴ら、毎日のように伝書鳩を飛ばしてくる!

アルフレド:ひょっとして、あれか?余は早まったのかな?

アルフレド:本当に、奴ら本当のことしか言ってないのかも。

ルシテーア:殿下!海図です!ランド―ラから海図が送られてきましたわ!

アルフレド:海図?…ナザレスのその向こう、…魔の海の向こうまで描いてある…

アルフレド:奴ら、ひょっとして本物の忠誠心の持ち主なのでは…?

ルシテーア:ランド―ラは、信頼できますわ。

アルフレド:テオといい、テーアといい、…ランド―ラの何をそんなに信頼しているんだい?

ルシテーア:わたくしにも、何とも…女の勘と言うものかしら…

アルフレド:…海軍提督を派遣しよう。

アルフレド:様子を見るだけだ海賊とは休戦するように言っておく。

アルフレド:ガストン提督!

ガストン:はっ!

アルフレド:この海図を持って、ガルダゴという辺境の地まで行って参れ。

ガストン:ははあっ!

アルフレド:姫を見つけてきて欲しいのだ…よろしく頼む。

ガストン:頭を上げて下さい!この、ガストン・ホーガス、必ずや姫を連れ戻して参ります!

ルシテーア:ああ、ルチェッタは心配されるのねぇ。…若くて、美しくて、賢くて!

ルシテーア:…ルシテーア、あなたは何を考えているの?

ルシテーア:私はあの女と違って、男の子を生んだ…この国の妃なのです。

ルシテーア:ルチェッタは、可哀想な子よ…意地悪しては、いけないわ。

ルシテーア:でも、成長するにつれ、あの女に似てくる…

ルシテーア:…帰って来なければいいのに…なんて…

ルシテーア:わたくしは、一枚皮を剝いだら、化け物のように心の醜い女なのね、きっと。

0:(19-2)

テオドール:ティストル、僕の義足を。

ティストル:アウ…

テオドール:…お姉さまから、手紙が届く。…僕には、何もできない。

テオドール:僕は、生まれつき足が悪い。

テオドール:そのために、喋ることの出来ないお前を買い付けたんだよ、父上は。

ティストル:アア…

テオドール:父上は、お姉さまに優秀な王子と結婚してもらって、この国を継がせたがってる。

テオドール:そりゃそうだ。脚の悪い僕じゃ、国民をがっかりさせてしまうだろう。

テオドール:母上は、これを機に、お姉さまが消えればいいと思ってる。…

テオドール:僕はね、ティストル。お姉さまに帰ってきて欲しいな…

テオドール:初めてお姉さまを見た時、僕はなんて素敵な目をした人だろうと思った。

テオドール:おばあ様の別荘で一緒に過ごして、やっぱり素敵な人だと思った。

ティストル:アア…

テオドール:お姉さまが無事であるように、僕は毎日お祈りしている。

テオドール:僕なんかは、生まれてこなくてもよかった。

テオドール:お姉さまがどうか、無事でありますように…


20.偶然の幸い

ルチェッタ:で、キャプテン、どうします?

ドン:うーん、計算外だな…ランド―ラの言っていた通りになった。

ドン:ここで、一つ、俺たちトーリャと敵国ロンバルドとの決着が着く。

ドン:それなのに、こちらにあるのは、ボロ船が一艘と野蛮人の武力だけ。

ドン:あちらは、総戦力で攻めて来る。…どうしたもんかな。

ルチェッタ:とりあえず、予定通りラーマ号を奪っちゃいましょう。

サルーキ:あ!ドンの兄貴!上手くいったんですね!

サルーキ:ビーグルたちからも合図が。

サルーキ:ラーマ号に付いてきたガレッタ号を奪ったって話でさぁ!

ドン:これで戦力は3捜。

ドン:我らが黒犬号が、復活すればの話だがな…

カラメリ:ガラコ辛も合図だ!

カラメリ:ボクらのダガワリの戦士達も、今こちらへ向かってる。

カラメリ:リーダーはベンジャー。

カラメリ:僕の師匠。

0:この続きは、後日。

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