第九話
(ワームが近いな、先程喰われたような大きさじゃない小物だ。安心しろ)
とても頼もしく、安心しそうになるが気配察知出来るんかい。俺、無能!と再度悲しみに襲われた。
安心しろという言葉は嘘じゃなかった、先程より精彩な動きで飛び出して来るワームを避ける。
魔法を使わないのでどうしたのかと疑問に思っていたところ
(右手の肋骨を離せ)
えっ...捨てますか?と思いながらも右手を離す。その右手に剣を握らされた。そして、杖スケルトンは俺を装備した
(俺が装備として使われてるぅうう!!???)
懸命に剣を振る。というか刺す。杖スケルトンのフォローが上手く飛び出してきたワームを杖で殴ると俺を差し出し止めを刺させてくれた。
数体のワームを倒し、戦闘が終わった。
(魔素は取り込んでいるみたいだな、このまま続けよう。الظلام، أرني الطريق)
杖スケルトンの左手に持っている杖から黒い何かが出てくる。黒いモヤモヤした煙のよう洞窟の先に進んで行った。
(これは安全地帯に案内してくれる魔法だ。先に進みながら出てくるワームを狩るぞ)
(何その便利な魔法!?この洞窟に安全地帯なんてあるんだ...)
青年と杖スケルトンは黒い煙を追うように進む、青年は途中で全回復した。
(いやー、一時はどうなるかと思ったけど杖スケルトンさんのおかげでなんとかなりました。ありがとう!!杖スケルトン!!)
言葉は伝わらないので頭を下げて誠心誠意の感謝をする。杖スケルトンはお前、人間みたいな動きするな?本当に生前の記憶ないのか?と聞かれ手と頭を横に振って否定を示した。ジト目で見られたような気がするが気のせいだと思う。
その後、すぐに人が数人入れそうな穴が見つかる。黒い煙がその穴の中心で終わっている。どうやら入口以外にどこにも繋がっていないようだ。杖スケルトンが先導するので入ってみると…
(スケルトン!?いや、人骨か?)
人骨が3体ほど壁に寄りかかる形で並んでいたのだ。それと入口付近にはランタンのようなものも置いてある。
(この人骨はかつての私の仲間だったものだ。スケルトンになったのは私だけだったがな...ランタンは魔物よけだ魔力を込めれば大抵の魔物は寄ってこない)
仲間の人骨とは反対の壁に座って寄りかかった杖スケルトンが説明してくれた。
(さて、ここにくればゆっくり話が出来る。私はもうほとんど魔力を使い果たした。ここで休憩すると同時にお前のことについても詳しく聞こうか?お互いスケルトンだ。睡眠は要らないもんな?)
(えーっと、詳しく?どうやってだ?)
杖スケルトンへの伝え方わからず、自分の状況もどこまで伝えるべきかもわからないが、とりあえず頷くことにした。
(私は元冒険者...いや、こんなこと言っても生前の記憶がないお前には意味がわからないかもしれないが、異世界から来た。地球の日本ってところからな。この体は元冒険者だから噓は言ってないぞ?)
(!!??日本?異世界からの転生?俺以外もいたのか!!)
テンションが上がり過ぎて杖スケルトンの両手を持ち上下に振りまくる。杖スケルトンはお前もまさか...?と言い困惑している様子だった。
とりあえず、日本語で地面の砂に俺も日本から来た!さっきは噓ついてごめん!伝えるべきなのかわからなかったんだと書いてみた。
(そうか、立ち振る舞いや反応を見てもしかしたらと思ったが君も転生していたのか。私はこちらではレイという名前だ。この体の冒険者の名前をもらった。君はなんて名前なんだ?)
そういえば、自己紹介してなかった。杖スケルトン改めレイねと思いながら。自分の名前を地面に書く。
(ダンテか...よろしく頼む。さて、ダンテ我々は同じく日本から来た転生者この状況や世界についてわからないことが多い。お互い生き残る為に情報共有したいのだがいいか?)
(もちろん、むしろありがたい。ただ俺はほぼ情報なんてないぞ?たまたま生きてるだけでいつ死んでもおかしくなかった。)
(いや、まずどう転生したのか気になる。私は気がついたらここだった。そして、この冒険者は手記をつけていた。これだ、こういう転生にはお約束?なのか文字が読めたので軽く状況整理ができたんだ。)
そう言って手記を渡された。読んでみるとそこには...
(読めない...)
落ち込みながら地面に文字を書く、見たこともない文字が連なっていた。
(なっ!?読めない?基本機能じゃないのか?そういえばダンテはどこでスケルトンに転生していたんだ?)
俺は自分がレッサースケルトンだったことやこれまでの経緯を説明した。
(なるほど...推測の域を出ないが、肉体の性能がある程度引き継がれていると見るべきだな。私の体は元冒険者、文字も魔法もある程度使えたんだろう。だから私も使えると...そして、ダンテは生前の人がいたのか純粋な魔物なのか、わからないな...)
(!?無能じゃんやっぱり俺!!)
文字にはせず落ち込んだ。悲しみゆえに下を見ているとレイは慌てたように弁解してきた。
(いや、落ち込む必要ないさ!レッサーがどれだけ過酷な状況かわかる!すごいことだ!そこから進化してスケルトンになったことは!誇っていい。)
(ほんと...?)
地面に文字を書きながらレイを見る。
(ああ!すごい!色々な能力を持っていて約一年半で先程マジックスケルトンになった私に比べたらな)
(一年半!?マジックスケルトン!?えっスケルトンからの進化ってそんなにかかるものなの??そして、スケルトンより上の存在なんですかレイさん!)
驚きすぎて文字にする余裕はなく、驚いたジェスチャーで返す。
(どこに驚いているのかわからんがレッサーからスケルトンはどのくらいで進化できたんだ?)
(5時間くらい???)
疲れない、眠らない、そして慣れない命のやり取りをしているダンテは正確な時間を図るのは不可能に近い。
体感5時間というだけで本当はもっと短いのだが、本人は知る由もない。
(5時間で!?私は一体...)
これは状況の違いと必要経験値の差もある。お互いにそのことについて気が付いてはいたが、落ち込むことは避けられなかった。
(俺は方は時間が正確かわからない、レイは何故一年半とわかるんだ?)
(これだ、ランタンの他に魔道具がもう一つあった。時計だ。ここはダンジョンらしいからな。時間と体力を見て冒険するのが常なのかもしれない。一日たったら手記に正の文字を一画ずつ書いていたんだ。)
(時計?異世界転生のお決まりは中世ヨーロッパくらいの時代じゃないのか?そんな時計あるのか?)
ダンテの想像している異世界転生の時代に冒険者が持つような時計があることに驚いた。
(知らん、手記にはそんな細かいこと書かれていない。ここがダンジョン都市『エーテリオン』のダンジョンであることと迷って絶望していることお世話になった人への謝罪が書いてあるくらいだ。)
さらっと重要そうなことを言うレイに抗議しようかと思ったが、地面に文字を書くことに手間取っていると次のレイの話で遮られてしまった。
(会話のテンポも悪いし、戦力増強の意味もあるからダンテ、私が魔法を教えようか?)
願ってもいない提案にダンテはハイテンションでレイの両手を握り上下にブンブン振った。
余りにもしつこいので平手打ちされてもなおヘラヘラしていた。スケルトンなのでダンテの気持ち的にヘラヘラしていただけだが。




