花占い
400字の短編小説です。
よろしくお願いいたします。
僕は君が嫌いだ。
小さい頃からずっと一緒の、親友といってもいい友達。そんな君が、僕は嫌いだ。
「ありがとう。ちゃんと嫌いでいてくれて」
日ごとにそう伝えると、君は儚げにほほ笑む。花占いみたいだ。
僕が千切って、君が受け取る。嫌いなだけの花弁たち。
「大丈夫。今日も、僕は君が嫌いだから」
「そっか。良かった」
不安定な声色に溶けた喜びは、薄いまぶたの稜線に絡まって僕の心臓を掠める。子どもの時、君から貰った紐に括り付け五円玉。鼓動に合わせて揺蕩うリズムの往復に、嫌いを繰り返した。
「また、明日ね」
ひらひら流れる君の手に、僕は握りしめたこの指を解こうとしてやめた。だって僕は君が嫌いだから。
僕の花びらは君で染まっているのだ。今も昔も変わらない。
「また明日――」
呟きに肩の力が抜ける。淡い薄雲が巻き付いた髪に指を通すと、何本か引っ付いた。
手の平に目を落とすと、赤い流星群が降っている。
「――僕は、」
君が、嫌いなんだ。