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仕事がないからって、こんな仕事もするの?

作者: 七瀬







僕の仕事は、動物園の仕事。

僕は、動物園のチンパンジーの仕事をしている。

チンパンジーの飼育員ではなく、特殊なチンパンジーの

着ぐるみを着て、チンパンジーとしてお客さんの前で普段

の日常生活を見せているだけ。

チンパンジーの特性や群れとの関係性など、何度も何度も

マニュアルの動画を見て皆で勉強したんだ。

僕と同じように、動物園の動物になる僕たちの為に3ヶ月間

みっちりと教習を受ける。

僕は、仲のいい友達3人で行って。

僕はチンパンジー、一人はサイ、もう一人はカバだった。

皆、見事に合格して今もバイトで動物園で動物として働いている。

他にも、たくさんの人たちが来ていたよ。

それは、丁度3か月前の事だった!

バイトの募集が、かかっており一気に100人ほど雇うというモノ。

仕事も、ほとんどなく動物園の仕事と書かれていた求人広告

を手に、僕たち3人は待ち合わせの時間に向かった。

そこに来ていた人達は、皆無条件で合格しており。

次の日から研修を受ける事になった。

その研修で、100人合格した者たちは? 研修が続かず

あっという間に、50人までに減っていった。

動物園側も、こうなる事は分かっていたみたいで。

最後まで残る人間は、更に半分ぐらいになるだろと思っていたらしい。

それに、この事は一般の人たちには“秘密事項”の為サインをさせられる。

もし? 誰かに話したりここでの事を教えると? 命の危険にかかわると

書かれていた。

そんな書類にサインをすると思うだけで、先ずは辞めてしまうだろう。

ここでの3か月の研修を終え、実際に動物園の檻の中に入って自分が

その動物になる日が近づく。




そして、実際に僕もチンパンジーになってみると?

かなりキツイと感じる。

檻の中にずっと居て、何もする事がない。

飼育員さんに餌を貰い、トイレも人にできるだけ見られないところで

用を足す。

動物園の動物は? 熱い時は日陰に入り、まったく動かないという苦情

を聞かされていた為、僕達は暑い夏でもお客さんから見える所に居て少し

でも動いてほしいと言われている。

一番辛いのは? 毎日のように人が動物園に現れ、僕たちをじっと観察

していく事だ。

だんだんと見られている事に苦痛を感じるようになる。

精神的に追い込まれるとは? こういう事なのか!

ここでは、そういう事も考えてカウンセリングルームもある。

人に常に見られるとは? そういう事だ!

精神崩壊しないために、僕たちは1ヶ月に一回カウンセリング受けるのだ。





それに、これは! 極秘情報の為、誰にも言えない事なのだが...。

既に、人間以外の動物は絶滅している。

人間には、秘密にしてこうやって僕たち人間がその動物になり

動物園で演じているだけなのだ。

もう、何処にも人間以外の動物はいない!

徐々に、動物が絶滅している情報はニュースで人間に伝えているが

まさか!? 全ての動物が全滅しているとは思ってもいないだろう。

身近に居る犬や猫でさえ皆、アルバイトで雇われている人間だという

事も誰一人信じない事だ。

それに、海の中にいる動物もそうだという事も一般の人たちに

は伝えられていない。

海の中でも、この特殊な着ぐるみはその動物そのものになれる。

素晴らしいけど、悲しい現実だ!

何も知らない人たちは、僕ら人間が動物になっているとも知ら

ずに僕たち動物を見て、笑って見ているだけ。

もう、君が見たかったチンパンジーは、絶滅していなんだよと

何回言おうと思った事か!

でも、それは契約違反だ!

契約を破れば、僕が殺される。

人間以外の動物が絶滅していく中、いつの時代からか

人間が急に増えていったから、こうなったのかもしれない。

人が多くなれば、働く場所も増えていかなくてはいけない。

働きたい人たちは、どんな仕事をしているかといえば?

僕たちのような仕事をしている。





・・・そして今日も僕は動物園に行き。

チンパンジーとしての一日が始まる。

親子連れや一人ぼっちのおじさん、若いカップルも来るよ。

今日も、僕を見て君たちは笑ってくれる。

僕も、手を振ったり小枝を投げたりして、“僕が人間だとバレないかと”

薄っすら期待を持ちながら、どこかで気づいてほしいと思っている。

でも? チンパンジーがする事。

君たち、人間に本当の僕の事がバレる訳がないよね。

それだけ! 僕のチンパンジーの演技が上手くなってきたと

いう事なのかな。

僕は、このままずっと偽のチンパンジーとして動物園で働き続けるよ。

誰にも、僕が人間だと気づかれなくてもね。



最後までお読みいただきありがとうございます。

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