肉弾戦!? 妄想勇者ヒカリvs妹魔王ルルコ!
「う゛にゃにゃあっ! うにゃっ! うにゃっっ!」
うにゃうにゃ叫びながら、ぼひゅぼひゅんっ!と、四方八方に魔法弾をぶちまけるルルコちゃん!
あっという間にボッコボコに破壊されていきますよ、魔王の間っ!
魔法のタマタマが外に飛んでいかないだけマシだけど、いつか俺にも当たってしまうっ!
しゃかしゃかしゃかっ!と、素早い虫みたいに、フィルフィーが作ったバリヤーに避難する俺ですようおおおー!
「こっちだよ、ヒカリちゃんっ!」
ラーフィアちゃんに引っ張られてバリヤー内へと無事に待避っ!
あっ、危なかったっっ!
だがしかしっ。
なんとか助かったけど、問題が解決したワケではナイですよっ!
「あーあ……やっぱり。キャパシティオーバーしてるな、あれはな」
大暴れするルルコちゃんを眺めながら、まるで他人事みたいに呟くフィルフィーですよ。
キャパシティオーバーって、容量を超えてるってコトだよなっ?
「やっぱりってっ? あのままだと、どうなっちゃうのっ!?」
「あん? 最悪の場合、身体の中で魔法が暴発するんじゃねーかなー? 打ち上げ花火みたいに、ぽんっ! てなっ。笑えるよなー!」
笑えるかっ!
辺り一面をさら地にしちゃう超絶魔法が身体の中で暴発したら、髪の毛一本すら残らず消滅しちゃうんじゃないのかなっ!?
「暴発ってっ!? なんでそんなっ!」
「大魔王のジジイにムリヤリ成長させられた上に、高度なスキルを発動しながら強烈な魔法を使ってるだろ。
そんなコトしてたら、あのちっこい身体にかかる負担は、そりゃあハンパじゃねーわなっ」
「そんな……そんなコトって……っ!」
「腹減ってるヤツに、いきなりどんぶり飯100杯食えって言われても、そんなの誰だって食えねーだろ。それと同じってこったっ」
どんぶり飯っ?
って、なんじゃい、その例え。
もうちょっといい例えは無かったのか、フィルフィーはっ。
「なっ、なんとかならないのっ!?」
「ならねーな」
「え……っ?」
冷たく言い放つフィルフィーに、俺は絶句するしかなかったですよ。
て言うか、なんでそんな冷静なんだっ?
ルルコちゃんが呪文詠唱してる時も黙って見てるだけだったしっ。
「女神の力でなんとか出来ないのっ? 見てるだけなんてヒドくないっ!?」
「あん? しょーがねーじゃん。だってあたしは女神で、ルルコは魔王なんだからなっ。
女神は『勇者と魔王の闘い』に干渉しない。
それが『勇者と魔王と女神のバランス』の一節ってヤツだなっ」
なぬっ!
中立の立場の女神って、勇者と魔王の闘いを傍観するしか無いってコトなのかっ!?
「まあ、ルルコが『助けて下さい』っつったら、助けてやらなくもねーけどなっ」
「そんなっ……!」
どう見たって、ルルコちゃんは喋れる状態じゃナイですよっ。
うにゃうにゃ言いながら、あっちこっちに魔法弾をぶっ放しちゃってますよー!
魔王の間が、どんどんズタボロになっていきますようおおー!
とにかくルルコちゃんを止めないとっ!
ムダかもしれないけど、とにかく呼び掛けてみるですよっ!
「ルルコちゃんっ! しっかりしてっ! こっち見てっっ!」
「う゛にゃ?」
あっ。ホントにこっち見たっ。
俺の声に反応してくれたけど、どう見たって友好的な目付きではナイですよっ!
めっちゃメンチ切られちゃってますよ、男の娘お兄ちゃんっ!
「う゛にゃああああっっ!」
うわ、いきなり全力ダッシュしてきたっ!?
と、次の瞬間!
「う゛にゃっ!?」
こつんっ、と何かにつまづいてコケちゃいましたよ、ルルコちゃん!
ころころりんっと転がってから止まったけど、うつ伏せのまま動かないっ。
「るっ、ルルコちゃんっ? ダイジョブっ?」
しーん。
あれっ?
「ルルコちゃんっ?」
「う゛にゃ?」
あっ。またこっち見たっ。
と思った瞬間、即座に起き上がって、またまた俺めがけて全力ダッシュ!
まるっきり、さっきのリプレイですよー!
「おー、速いな、ルルコっ。受け止めてやれよ、ヒカリぃー♪」
「えっ!?」
フィルフィーに軽ーいカンジで言われて、ぽいっ!とバリヤーの外に放り出されましたよ、男の娘お兄ちゃんっっ!
「ちょっ! うわわっ!?」
ずどどどっ!と真っ直ぐに突進してくるルルコちゃん!
止まる素振りも見せずにそのまま、どどーんっ!とっ!
俺のEカップっぷのオパイに飛び込んできましたようおおおー!
て言うかこれは、体当たりっ!
頭突きに近い体当たりですようごおおー!
ズシンっ!と胸に響く、なんだか懐かしいこの感覚は、クロジョでのぶつかり稽古を思い出しちゃいますよっっ!
ちっこいルルコちゃんに吹っ飛ばされるワケにはいきませんよ男の娘お兄ちゃんっ!
腰を落として、しっかりと踏ん張るですよっ!
「うにゃっ!」
「う゛にゃにゃっ!」
はた目には美少女二人の熱い包容に見えなくも無いかもだけど、俺からすればこれはただのぶつかり稽古!
って、言うか『がっぷり四つ』!
妹魔王ルルコちゃんと相撲とっちゃってますよ、お兄ちゃん勇者っ!
スキルも武器も魔法も使わないガチンコ勝負っ!
文字通りの肉弾戦ってヤツですよー!
なんかちょっと違うような気がしないでもないけど、まあそんなカンジです!
こここれはっ!
男の娘として、イヤ、お兄ちゃんとして絶対に負けられない闘いっ!
いくらポンコツな男の娘でも、相撲でルルコちゃんに負けるワケにはいかねーですよー!
「う゛にゃああああっっ!」
歯を食いしばりながら力いっぱい押してきますよ、ルルコちゃんっ!
ちっこいのに意外と力持ちっ!
「うにゃあああああっ!」
全力で応える俺ですよ、魔王の間から押し出されるワケにはいかねーですよー!
「さっすが兄妹だなー! うにゃうにゃ言ってておもしれーぞー!」
ぐぬぬ、静かにしなさい野次飛ばし女神っ!
こちとら、けっこう必死なんだからなっっ。
ぎぬぬぬっ!と踏ん張る俺ですよっっ!
妄想勇者の歴史の1ページにっ!
『ちっちゃい女の子(妹)と相撲取って負けた』
なんて黒歴史を刻むワケにはいかないのだっ!
「う゛にゃあああっ!」
「うにゃあっっ!」
ぬおお、ずりずりと押されてますよ、俺っ!
両脇は締めて腰は低くの基本姿勢!
ちっこいのに、なかなかの激押しですよ、ルルコちゃんっ!
はた目にはカワイイ女の子二人が抱き合ってるようにしか見えないかもだけど、かなりの激戦なのですよー!
一進一退のアツい攻防っ! ってヤツですようおおおー!
「どすこいだよ、ヒカリちゃんっ!」
「どすこいだぞ、ヒカちくりんっ!」
「どすこいですよぅ、ヒカリ様ぁ♡」
ちょいと、カシマシ三人女神サマっ!
応援してくれるのはイイけど、その掛け声って正解なんデスカネっ!?
「あっ! 上手投げのチャンスだよ、ヒカリちゃんっ!」
ラーフィアちゃんの言葉通り、上手投げの体勢になりましたよ、男の娘お兄ちゃんっ!
二人ともちっこいとは言え、身長は俺の方が少し大きい!
ここが最大の絶対的チャンスっ!
勝負どころは、今まさにこの瞬間っっ!
ぐっと両足で踏ん張ってっ!
ルルコちゃんの右手を、くいっと引いて体勢を崩しっ!
ワンピースを掴んでも、ぺろーん♡って捲れちゃうだけだから、ルルコちゃんのおパンツを服の上から、がしっと掴むですよ!
恥ずかしいだとか、遠慮なんてしてられないっ!
いきますよ、渾身の上手投げっ!
「うにああああああゃっ!」
「う゛にゃっっ!?」
ぐっと耐えたのは一瞬だけで、両足がふわっと浮きましたよルルコちゃんっ!
これはいけるっ!
いきます!
いっちゃいます!
人生初のっっ!
「うにゃあああああっ!」
上手投げっっ!
見事にキレイな円を描いて、ふわりと宙を舞うルルコちゃんですよー!
「よっしゃキター! 上手投げぇーっっ!」
ナゼか大コーフンですよ、ヤンキー女神っ。
「うにゃああああっっ!」
どすぅんっ!と!
めっちゃキレイに決まりましたよ『上手投げ』っ!
勢い余って、ごろごろりんっと転がってくルルコちゃんですよー!
肉弾戦を制しましたよ男の娘っ!
でもまさか、妹魔王との決着が相撲とはっ!
これぞまさしく『想像を絶する闘い』ってヤツですようおおおー!
なんか違うような気がしないでもないけど、まあそんなカンジです!
討ち取ったり、妹魔王ルルコちゃんっ!
勝った! 勝ったよ、妄想勇者っ!
……はっ。
……ちょっと待てよっ。
勝ったけど。
めっちゃ勝ったけども、だがしかしっ。
『ちっこい女の子(妹)に情け容赦無く相撲で勝った』
なんてディスが広まったりするのは困りモノなのではっ!?
イヤ、そんなっ。
勝ってもダメ、負けてもダメって、どーすりゃ良かったのかなっ!?
うおお、苦悩っ! これが苦悩ってヤツですかっっ。
だったらいったいどーすりゃよかったんデスカネっ!?
「いよっ! 男の娘っ! 魔王ルルコを討ち取ったりぃー! なんつってなっ!」
ぐぬぬ、ウルサイぞヤンキー女神っっ。
ヒトの苦悩も知らないで、にかあっ!と満面の笑みですよー!
俺が勝ったのがそんなに嬉しかったのかなっ? イヤ、今はそれどころではナイっ!
けっこうな勢いで転がってったから、ケガとかしてないのかなっ!?
「るっ、ルルコちゃんっ! ダイジョブっ?」
ルルコちゃんを見ると、仰向けに寝っ転がって、ぽかーんとしちゃってますよ。
負けちゃったコトを受け入れられないカンジなのかっ?
もしかしたら、起き上がって反撃してくるかなっっ?
◇ 面白かったよ!
◇ 続きが気になるよ!
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