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調達(暢達)10

 ……何も良い言い訳が、思いつかなかったんだろうな。ただ、それだと、物凄い南瓜が好きな奴だと、勘違いされてそうだ。それも只の南瓜好きではなく、一日に一回は南瓜を食べないと湿疹出るタイプの、ヤバい奴。

 その証拠に……店員さんも何とも言えない顔で、フェデルの事を見ている。まあ、それくらいで、状態異常、一目惚れが解除されるとは思えない。多少の好感度は、下がったかもしれないが、下手な事を言われるより、全然いい。デメリットと言えば、フェデルの好感度が下がるくらいだしな。

 私だったら、間違いなく言い訳するが……、例え、良いセリフが思いついてなくてもな。

 だって好きでもない物を、好きだと勘違いされるのは、厄介すぎるだろ。と言うか、好きじゃない所か、嫌いなんだよなあ。南瓜。

 仮にそのまま勘違いされたままだと、大量に南瓜を貰う可能性もあるだろう。然も善意から。流石に善意から貰った物を捨てるのは……まあ、実際貰ったら、捨てるか売るか譲るなりして、処分するのだろうが、回避できるリスクなら、回避しておいた方が、良いだろう。


「そうなんですか……えっと、南瓜を五つ……ですね?凄い量ですけど……ええと、どうしましょう?」


 動揺しているとは言え、そこを客に聞くのか……。あまりに量が多かったから、想定外で袋も対応の仕方も用意してなかった、とそういう事か?

 んー。まあ、業者だったら、こういう市場で物を買ったりせずに、生産者の元に言って直接交渉するとか、個人的に契約するとか、具体的にどういう形なのかは分からないが、少なくとも、市場に出向いて、その場で取引相手を見つける。という形は取らない筈だ。


 大量の食品を仕入れる場合、その全てが店に置いてあるとも限らない。仮に、あったとしても、全て買い占めてしまってはその店に、迷惑になる可能性だってある。

 逆に、事前に連絡しておけば、そういうトラブルが無くなるだけでなく、お得意さんとして、契約……つまり、今後この商品は貴方の所で買いますよ、と言っておけば、その分割引させることだって出来るだろう。


 別に商売をしている訳では無いが、大量の食品を安定して仕入れている、という点では、我々……というか、ヤニックにもお得意さんが居ても可笑しくないのだが……。

 どうも居ないらしい。理由を聞いてみると……、「身分が低いとはいえ、お城勤めは皆の憧れ。そんな我々が、1つの店を優遇しているとなったら、色々と面倒なことになりそうだから」と言うような事を言っていた。

 しかも、食事関連のことはヤニックに全て一任されているらしく、だからこそ余計に、何処と取引するのか、と言うのを決めかねているらしい。


 気持ちは分からんでもないが、そこまで気にする事でもないような、気はしなくもないが……。まあその辺はよく分からん。

 分からんので、余計な事はせず、上司の方針に従う……。即ち、何の為に買い物をしているかを隠しつつ、色々な店から材料を調達している訳である。


「ああ、それなら問題ないですよ。ちゃんと袋を持ってきたのでこれに入れていただければ、と思います」


 慌てる彼女を、安心させるように、ニッコリ笑うフェデル。

 ……口説くの嫌いと言いつつ、そう言う事、普通にするのね。いや、まあやれと言ったのは私なのだが、多分あれ、無自覚なんだよな?最早、腹が立つという感情すら湧かない。

 なんか……こう……憐れ?

 うん。そう。憐れ、と言うのがしっくりくる。……憐れみの目しか向けられないんだよな。


 傍から見ているこちらとしては、そんな感想を抱くのだが、向けられた彼女はそうは思わなかったらしい。ほんのりと染まっていた頬を、更に赤くさせている。

 ……まあ、直接言われたら、冷静ではいられないのかもしれない。


 いや?そんな事はないな。直接言われたら、鳥肌が止まらなかったわ。ん?鳥肌が立っている、と言う事は気持ち悪いと言う、感情を抱いている事になるので、ある意味冷静ではないのか……?

 まあ、彼女だって、客観的にこの状況を見れば、一目惚れフィルターが、外れる可能性だってあるかもしれない。

 とかなんとか言ってみた物の、そんな事は毛の程も思っていない訳だが。なんせ、一目惚れだぜ?客観的に見た所で、なんて格好良い爽やかスマイルなんだ……。としか思わないだろう。仮に一目惚れしてなくても、普通の人から見たら、印象は良いのだろう。特に気持ち悪い訳でも無いし、優しそうな雰囲気と合ってるしな。

「ああ、それなら問題ないですよ。ちゃんと袋を持ってきたのでこれに入れていただければ、と思います」


 慌てる彼女を、安心させるように、ニッコリ笑うフェデル。

 ……口説くの嫌いと言いつつ、そう言う事、普通にするのね。いや、まあやれと言ったのは私なのだが、多分あれ、無自覚なんだよな?最早、腹が立つという感情すら湧かない。

 なんか……こう……憐れ?

 うん。そう。憐れ、と言うのがしっくりくる。……憐れみの目しか向けられないんだよな。


 傍から見ているこちらとしては、そんな感想を抱くのだが、向けられた彼女はそうは思わなかったらしい。ほんのりと染まっていた頬を、更に赤くさせている。

 ……まあ、直接言われたら、冷静ではいられないのかもしれない。


 ただ、個人的には、嬉しくもないのに、笑う奴の事を信用してないので、私からの印象は、滅法低い。と。

 ……そう考えると、可笑しいのは彼女ではなく、私の方なのかもしれんな。


 世間と乖離しているのを可笑しいとするか、本質が見えていないのを可笑しいとするのか。

 私としては、後者を優先させたい所だが、どちらが正しいかは、人によるのだろう。別に今結論を出す必要もないので、現状、適当に流しておくが。


「そうなんですか!凄いですね!準備がいいです……!」


 怒涛の褒めラッシュ。いや、そんなに褒める事か?

 この世界の店事情は分からんが、多分、前の世界の日本程、顧客第一主義……?とでも言うのだろうか?客をあそこまで大切にはしていないのではないか?と思う。

 いや?別にこの世界の事を貶している訳ではないぞ。


 そりゃ、客目線だと大切にして貰えるに越したことはないが、店や商売をやる視点からだと、客を第一に考えるのは、まあ、態々言うまでもないが、自分中心でやった方が、楽に決まってるんだよな。

 だから、どっちが、どう、と言うつもりはないのだが、ただ、競争率が低く、商売の歴史?が浅いと、お客様は神様だ、みたいな極端な考え方は、出ないような気がする。

 あまりその辺の話は、詳しくないのだが、こう、考え方として、何か、新しい事を始めて間もない頃は、あまり相手、対象?を優先する事例は少ないような気がする。

 あくまでこう……自分優先?それがこう、煮詰まってくると、新たな方法が出てくる、みたいな。


 ……そもそも、客優先しなくても物が売れるなら、客優先にする必要もないよな。うん。だって売る側としては、その方が圧倒的に楽なんだし。店の数、街の発展度合いなんかを見ても、こじつけや、偏見ではなく、論理的に見ても、この国の店は、買い手至上主義、に近いと言えるのでは?


 ……結論が出て、すっきりし、冷静に思い返してみれば、話が脱線しすぎだな。

 言いたかったのは、店がそんなに客に優しい訳でも無く、予告もなしに大量の商品を買いに来たのに、何の準備もしてない方が、可笑しい……とまでは言わないが、まあ、用意していても、可笑しくはないだろう。

 にも拘らず、あそこまで褒めるのは、無理矢理過ぎるのではないか。と。

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