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旧作・駄作・ほぼ没

覚え書き・リアリティとは何か

作者: 住友


芸術作品の贋作の制作においては

作品そのものの贋造よりも

来歴の捏造の方が困難であるとされます。

作品の真贋は受け手の審美眼、

究極的には鑑定する人間の

信用度で判断されますが、

来歴は史実や他のドキュメンタリーとの

矛盾の有無を客観的に調べられるからです。


フィクションの小説を書くのも

贋作造りと心得るものが

共通していると言えます。

その場合、

オリジナルに似てるかどうかは実は肝ではない。

フィクションの小説は

そもそもオリジナルが実在しない

『本物の作者の未発表の作品』

と偽る贋作に通ずるところがある。

そうした『偽発掘品』と小説に

共通して言えるのは

「オリジナル(=現実)と関係ない」

と思われたら失敗だということです。




フィクションの小説を書く上では

書かれていることが現実かどうかを

調べられるなどということはありません。

読者ははじめからフィクションだと了承しています。

なので騙し抜いてやろうと気負わずに済む分だけ

芸術品の贋作作りよりは楽だと言えなくもない。

しかし最初から嘘だと知られているものに

意味を持たせなければならないという点において

小説創作は贋作作りより困難であるとも言えます。


現実を生きる人々に現実でないものの価値を示すには

どうするべきか?

そのために重要なのは

現実や実物そっくりな世界を作ることではなく

必然的で完璧な比喩を見つけ出し描くことです。

完璧な比喩さえあるならば

突拍子もない世界観の小説でも

『リアリティ』が溢れるのです。


比喩は多種多様な物事の

類似点・共通項を概念として

把握することの基礎になります。

未知のものの把握は

まず比喩から出発します。


「巧妙な比喩を案出するのは

特に最も偉大な業である。

他人から学んで比喩の達人になれる訳ではなく、

比喩の業は天才たることの証なのである。」

(アリストテレス『詩学』)


それは


「絶妙な比喩を案出することは

事物に共通の、類似した特性を

把握することだから」(同上)


です。

この言葉について

ショーペンハウアーが

次のように補足しています。


「ある一つの状態が現れているケースを

ただ一つしか知らない限り、

それについて私の知識は

普遍的な意味を持たない知識にすぎない。

せいぜい直感的にすぎない知識である。」

「しかし二つの異なったケースに現れている

同一の状態を把握する限り、

私はその状態一般について一つの概念を持ち、

従ってより深い知、より完全な知を所有する。」

(『著作と文体』)


作品の主張・主題と

現実の間にある比喩が

完全であればあるほど

その作品は読む人を強烈に打ちのめすような

『リアリティ』を帯びます。

文学の世界を支配する名作は

全てこれです。


小説とは『未発掘の現実』

なのです!


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