キョウ
ところが、その予想は早くも裏切られた。
呼び出しを受けたボクらは応接間と呼ばれる、囲炉裏とソファーのあるこれまた妙な部屋に呼び出された。壁にはユニコーンみたいな見た事のない獣のはく製が飾られている。
そこで待っていたのは、血天ほど真っ赤ではないにしろ、赤毛と呼べる髪の少女だった。
くるくるの縦ロールを顔の両脇に垂らしていて、それでいて悪目立ちせずとてもよく馴染んでいる。
精緻なレースが施されたドレスとも、振袖ともつかない豪奢な服。
年はこれまたボクとそう変わらないと思うけど、胸がとても大きかった。ぐぬぬ。どうせボクはまな板ですよだ。
涼やかな緑色の瞳とあどけない表情で、ソファーに腰かけている姿がとても絵になる。
説明されるまでもなく、それがどこかのお姫様だという事がわかった。
「あ、あの……」
そのお姫様がボクと土忌の姿を見て、おずおずと口を開いた。
「貴方が、鏡様でしょうか……?」
「そうだけど」
「ああ良かった。お優しそうな方で……」
お姫様は、心底ほっとした表情で言った。
「私は、葉鐘キョウと申します」
立ち上がり、ドレスの裾をつまんでお辞儀するキョウさん。
その優雅な立ち振る舞いからは、この城に来てからずっと向けられるイヤな視線を全く感じない。
「あ、ご丁寧に。えっとボクは鏡雛菊です」
「はい。承知しております。不束者ですが、よろしくお願いしますね。旦那様」
にっこりと、キョウは笑った。
「え?」