鏡
謁見の間全体がざわつく。
こんな簡単にボクに王位継承権を与えたのだから、それは当然だ。
でも、そんな事より。
やっぱりコイツは、ボクの事も自分の子どもの事も、王さまのくせに夜開眼全体の事だって、どうだっていいんだ。
「余の退屈を紛らわす事も出来ぬ者は生きる価値も無い。貴様もゆめゆめ油断せぬ事だ」
(……も?)
背筋に冷たいものが走った。
まさか……王子たちの居場所を漏らしたのって、もしかしてコイツなんじゃないだろうか。
でも、その退屈に倦んだ目と、情の欠片もないその声の響きは、この予感が突飛なものではない事を告げていた。
簡単に、ただの退屈しのぎで他人の人生をもてあそぶ。
――許せない。
「良い。下がれ」
「一言いい?」
ゴメン、父さん、母さん。
ボク、まだ帰れない。
心の中で謝って、大きく息を吸い込んだ。
「……何?」
隣で土忌が頭を抱えているのが見えた。
「王子でも何でも、なってやる。その代わり、アンタの座も、ボクが奪ってやるから! せいぜいふんぞり返ってろ!!」
ボクの言葉に、血天が亀裂めいた笑みを浮かべて笑った。
「クククク……カカカカカカカカ……面白い。面白いぞ。これほどの道化は、初めてだ。ならばやってみせろ。代わりに余は、貴様に刺客を送り続けてやろう。お前は王子として生き、同時に反逆者として怯えるがいい。ククク……カカカカカカ!!」
哄笑が木霊する中、ボクたちは部屋を出た。
その途中、血狐が、父親とは全く違う笑い方――大爆笑――をしているのが見えた。
「お前、最高!」
「どうも」
「全くその通りです! なんて雄々しいお方……!」
強く頷くキョウ。
そして頭を抱えているようで、実はその下で笑っている土忌。
「……言えてるな。本当に……面白いヤツだ」
「ふん、何とでも言ってよ。もうボクは迷わないからね」
ボクが呼び出された事も、土忌が蔑まれてるような事も、キョウみたいないい子が振り回されている事も、王子だのなんだのおかしなしきたりも……全部片づけてやる。
それまで帰らない。
無茶苦茶な状況だけど、腹を括ってしまえば不思議となんとかなりそうな、そんな気がした――




