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 灯篭の間は、思っていたより狭い場所だった。

 正確には、広さ自体は体育館くらいあるのだけど、大小さまざまな灯篭が周りを取り囲んでいるので狭く感じる。

 何より、正面にある時計台のような大灯篭の圧迫感が凄い。

「……土忌はどこだろ?」

「まだいらしてはいないようですね」

 あたりを見渡してみたけど、姿は見当たらない。

 ちょっと……まずい気がしてきた。

 土忌は部屋から出るなって言ったのに、出ちゃってるよね。

 それに、土忌の字なんて知らないし、ホントにアイツが書いた手紙だったのかな……?

「ん?」

 視界の端で黒い影が見えた。

「危ないっ!」

 それが何か、ボクが判断できるより早く、横から飛び込んできたキョウごと吹っ飛んだ。

「なっ……えっ?」

「うっ……くっ……」

 キョウの振袖が裂け、二の腕から血が滴っている。

 そしてキョウの背後に黒装束に身を包み黒子のように顔まで隠した人影が刀を振りかぶっているのが見えた。

「死ね」

 どこかで聞いたような声だった。

「助けて! 土忌っ!」

 祈るように叫ぶ。

 ボクは無意識に目を閉じていて、来るであろう痛みに備えていた。

 だけど、その痛みは来ない。

 おそるおそる目を開けると、金色の輝きが見えた。

「え……?」

「悪かったね。ドブ犬じゃなくて」

 金色に見えたのは、髪。

 血狐が、刀を振り下ろせないように黒装束の腕を掴んで制していた。

「何で……?」

「気まぐれだよ……と!」

 言いつつ、血狐は黒装束を蹴り飛ばした。

 激しく吹っ飛び、大灯籠脇に突っ込む黒装束。

 小さな灯篭が粉々になり、土石流でも起こったかのような凄まじい音が響き渡る。

「お、おかしいよ、アンタがボクを助けるなんて……」

「フン、僕が助けなきゃ死んでたくせに礼も言えないの?」

 気だるげに血狐が言う。

「そ、それは助かったけど……」

「大方、兄さんたちが皆殺しにされたから、僕が犯人で、おまけに次はお前を殺そうとしてる……とでも思ってたんでしょ?」

「うっ……」

 その通りだった。

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