王位継承者
それから、一日が経った。
キョウは同じ部屋に住みたがったけど、嫁入り道具が多すぎてとてもボクの部屋には入りきれない事がわかったので、しぶしぶ隣の部屋に入った。
でも、ずっとボクの部屋に遊びに来ている。
土忌は気を利かせたのか、部屋の外にいるみたいだ。
キョウと話すのはとても楽しい。
正直、人間と全然変わらない。
十年来の親友のように、あっという間に仲良くなれた。
「ねぇ、キョウは夜開眼なんだよね?」
「はい」
「キョウは人間の事、どう思う?」
「そうですね……特に何も。近くて遠い隣人、くらいでしょうか。私に夜開眼としての力が欠けているのもあるかと思いますが……」
近くて遠い隣人、か。
そういう考え方もあるんだ。
最初にこの世界に来た時には、バケモノの巣窟みたいに思ったけど、キョウや土忌を見ていると、考えが変わってきたように思う。
「夜開眼って、みんな同じ力があるの?」
「いえ。能力は一族によって違います。私の一族が思念を武器にするように、血天様の一族は血を武器とします。かつては鋭い牙や爪を自在に操るガ族とも争っていたと聞きますし、能力は千差万別です」
「へえ……」
キョウのおかげで、色んな事が知れた。
「私は、鏡様の事を知りとうございます」
「鏡様、だなんて。そんな大層なものじゃないよ。王子なんて言われているけど、ボクはただの人間だ」
「そんな事はありません。とても凛々(りり)しいお方……私の思い描いておりました王子そのもの……」
うっとりと頬を染めるキョウ。
「あのね……だからボクはおん……」
「大変な事になった……!」
勢いよく襖が開かれ、血相を変えた土忌が入ってきた。
元より蒼白な顔面が、死人のように青ざめている。
「大変なって……何がさ」
「王位継承者が全員死んだ」




