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~夏休み~

 ~夏休み~

 夏休みに入ると朝は学校でウサギの飼育当番、そして勉強、午後は川で遊ぶのが日課だった。毎日毎日、楽しくてゲームをして過ごす日々よりも充実していた。


夏休みに入る前に奈緒子と花火大会に一緒に行く約束を思い出した。それがちょうど今夜だった。夕方になり僕は待ち合わせの橋で奈緒子を待つ。「ゆーたーかー!」息を切らしながら走ってくる奈緒子の姿が見えた。僕は笑いながら手を振って「遅いぞー」とイジワルを言っていた。


川原の土手に腰をかけ、次々と打ちあがる花火を見ていた。奈緒子ははしゃぎながら「たーまーやー・かーぎーやー」と何度も空に向かって叫んでいた。

「そんなに大きな声で叫ばなくても皆聞こえてるよ」と僕が言うと「うぅん、もっと大きな声じゃないと届かないから…」急に寂しそうな顔をする奈緒子に動揺して「誰に?」デリカシーのない質問をしてしまった。


奈緒子はクスッと笑うと、背伸びをしながら「空にいるお父さんに!」とだけ僕に言ってくれた。


僕がキョトンとした顔で奈緒子を見てると奈緒子もそれに気付き「大丈夫!昔の話だから!気にしないでよ!」強がっているようには見えない感じだったけど、どこか少し寂しげで、気が付くと僕は奈緒子の手を握り締めていた。


女の子の手は小さくて柔らかく、それだけでドキドキしていた。僕の心臓の音が手を伝って奈緒子に聞こえてしまうのではと思うくらいだった。それは僕がここに来て三回目に繋ぐ奈緒子の手だった。


花火が終わった静けさの中、僕達は何も語ることなく二人で手を繋ぎながら家路に着いた。僕はベッドに仰向けになって、蚊取り線香の匂いに包まれながら、奈緒子と繋いだ手を天井にかざして眠りにつくまでずっと見つめていた。


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