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~冬の出来事2~

「豊!起きなさい!何時だと思ってるの!!」


いつもの様に母親に起こされたと思い、まだ重たいまぶたを擦りながら目を開ける。


「わかってるよ...まったく、時間くらい自分で...わっ!!」僕は目の前にいた奈緒子に驚いた。

それと同時に昨日の出来事が夢ではなかった事になぜかほっとした。


「おはよ豊!お母さんは朝食の支度してるから、早く顔を洗ってらっしゃい」無邪気に僕をからかいながら笑う奈緒子は楽しそうだった。


「ねぇ、さっきラジオで言ってたけど、まだ道が封鎖されてるんだって」奈緒子がトーストをかじりながら、他人事の様に言う。


さっきの仕返しとばかりに僕は「奈緒子と二人っきりで僕は嬉しいよ」と言うと、「え...え?」珍しく奈緒子が頬を赤らめ動揺しているのがわかった。

僕がクスクス笑ってるのを見て察した奈緒子は「もう、これだからデリカシーのないお子様は!」と頬を膨らませながら少しふてくされていた。


その日の午後、奈緒子は一度家に戻るので付いてきて欲しいとお願いしてきた。

奈緒子の家は僕の3軒隣にある。都会の人は3件隣と聞くと、すぐ近くと思うかも知れないが歩いて5分かかる。これが田舎と都会のギャップなのかもしれない。


奈緒子の家に着くと、2階の部屋に案内された。「ここが私の部屋だから、ちょっと待ってて!」

それだけを言い残し別の部屋に行ってしまった。


かすかに香る女性のシャンプーのような匂いにドキドキしつつ、辺りを見渡す。勉強机には沢山の写真が飾られている。

幼少期から今までの奈緒子がいた。お父さんに抱っこされながら笑う奈緒子。アイスを持ちながら眠ってしまっている奈緒子。全ての写真に親の愛情を感じた。


そんな数ある写真の中で、幼稚園児の奈緒子が、同い年くらいの男の子のほっぺにキスをしている写真を見つけた。僕は嫉妬というか、少し嫌な気持ちになった。

幼いから仕方ないと思いつつも、今もその写真を大切に残している奈緒子に嫉妬したのかもしない。


「おまたせ!!」奈緒子がリュックを持って入ってきた。「なにそのリュック?」僕は少し戸惑いながら聞いた。


「だって親がいつ帰ってくるかわからないでしょ?だから洋服とか持って行くの!豊は下の部屋で待ってて!」と僕を下の階に案内する。


「別にここで待っててもいいんじゃ...」と言い掛けると


「変態!!」と言われ、下の階に行く意味を理解した。


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