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黒灰色(こっかいしょく)の魔女と時の魔女  作者: 九曜双葉
第一章 風の調(しらべ)、星の歌 ~The Song from far far Star like Tune of the Wind~
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第一章 巻頭歌 草原(そうげん)の歌 ~The Grassland Song~

■ 第一章 風の調(しらべ)、星の歌

The Song from far far Star like Tune of the Wind


巻頭歌 草原(そうげん)の歌

    The Grassland Song

第一話 時渡(ときわたり)の少女

    The Girl across the Time-Stream

第二話 風の谷の祭殿(さいでん)

    The Shrine at the Wind Ravine

第三話 きみの生まれた日

    The Day You've Been Born

最終話 貴方の右目をください

    I'd Like Your Right Eye



挿絵(By みてみん)

◆ 第一章巻頭歌 草原そうげんの歌

The Grassland Song


 女は金色こんじきに輝く草原に立ち、夜を待っている。

 白き大きな太陽は既に沈んでいる。

 もうひとつの小さき朱色の太陽が地平線の下に沈むまで、長い夕暮れが続く。

 彼女のころもは白いのだが、全ては夕暮れの太陽により黄金色こがねいろに染めあげられる。

 それは草原の風に揺れる彼女の髪も同様だ。


(ああ、私のジュニア、私のたった一人の息子よ、お前は元気だろうか?)


 彼女ははる彼方かなたに送り出した彼女の一人息子に向け、歌を歌う。


(お前に私の歌が届くだろうか?)


 彼女の歌う歌は、優しくたおやかに金色こんじきに染まる草原に響き渡る。

 小さき朱色の太陽は地平線にかかり、空はあかね色と濃い藍色のグラデーションに彩られる。

 やっと短い夜がやってくるのだ。


(女親にとって息子は特別だから、お前は私のたった一人の息子なのだから、私はお前を手放したくなかった)


 濃い藍色に染まる空に、一際ひときわ大きく明るく輝く星が現れる。

 だが、彼女の見たいと欲する星はいまだ姿を顕さない。


(この黄金色こがねいろに輝く草原で、私はお前と二人で生きていきたかった。

 二つの太陽の恵みを受けたこの大草原で、お前の成長を見守りたかった。

 私にもっと笑顔を向けて欲しかった。

 私をもっともっと、おかあさん、と呼んで欲しかった)


 彼女は想いを乗せて、歌を歌う。

 空は闇を深め、急速にみずからを飾る星々の数を増やしてゆく。


(見えた、お前の星のその太陽が)


 付近に明るく輝く幾つもの星々に囲まれている彼女の見たい星の太陽は暗い。

 それでも彼女の目には確かに白黄色に輝く星として映し出される。

 彼女がそうしようと思えば、の太陽の第三惑星をも見るだろう。

 しかし、彼女はそれをしない。

 二百年前の光は、彼女の息子の姿を届けてはくれないからだ。


(優しいお前は、ここで私と共に残りたいと言ってくれた。

 私に、もう一度あの惑星に戻ってはどうかとも言ってくれた)


 彼女は息子の彼女を気遣うその時の顔を忘れない。


(おまえをあの星に送り返すのがやっとであったから。

 それにあの人が作ってくれた私の居場所はもうあそこには無いのだから。

 私の住む世界は、お前たちの世界とは違うのだから。

 私は愛しき人の思い出と共に、ここで生きていくだろう)


 彼女の歌う歌は、うれいを増し、悲しく響く。


(私は愛しきあの人が、思い出となってしまうのを止められなかった。

 そして、お前が思い出になってしまうのも止められなかっただろう)


 彼女はこの黄金に輝く大草原では、自分の息子が長くは生きていけないことを知っている。

 彼女の夫の体は、彼女とともにある。

 彼女の夫の未来は全て閉ざされていた。

 だから二人で恒星船に乗ったのだ。


(ああ、私のジュニア、私のたった一人の息子。

 お前の未来はあの青い惑星で、輝かしいものになるだろう)


 彼女の息子には、の星での未来がある。


(だから私は身を切る思いで、お前を二百光年先に送り出した。

 今は亡き愛しきあの人の故郷の星に)


 彼女は夫の故郷、彼女の息子を送り出したの星に向かい歌を歌う。

 その歌は優しく、しかし悲しく、草原に響き渡る。


(私はお前の為に歌を歌おう。

 おまえに私の歌が届くだろうか?

 お前のおとうさんが見つけてくれた私の歌を。

 お前のおとうさんが聞いてくれた愛の歌を。

 お前も私の歌に気付いてくれるだろうか?

 この草原の歌を、母の歌を)

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