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初テンプレーション

 目を開けると、俺は見知らぬ場所に立っていた。

 目の前には玉座が見え、誰かが座っている。

 辺りを見回すと、鎧を着た人間や、ひらひらした服装をしている人間。

 それに妙に着飾った女性がいた。

 豪奢な造りの空間は、どこかで見た覚えがある。

 確か。

 謁見の間、とか言われてる場所だ。

 足元にはぼんやりと光っている模様が見えた。

 魔法陣みたいだ。

 なんだろう。

 ものすごく見られている。

 みんな俺を凝視している。

 居心地が悪い。

 無音の中、誰かの足音が聞こえた。

 玉座にいた人。

 王冠を被った、白髪白髭、小太りで派手な赤い服を着ている。

 まさしく王様ですと言わんばかりの老人がこちらへ近づいてきた。

 数歩ほど距離を開けた状態で止まると、すぐに兵士達が俺との間に割って入ってきた。

 完全に警戒されているみたいだ。


「そなたは勇者か?」


 勇者?

 確実に俺を見て言っている。

 つまり俺が勇者かと聞いている。

 何を馬鹿なと思うが、リザが勇者やら何やら言っていたことを思い出す。

 どうしよう。

 そうです、と言うべきなんだろうか。

 迷ったが首肯することにした。


「お、おお、おおっ! おおおおっ!」


 王様らしき男性が感激したように叫びだした。

 同時に周囲の兵士達も呼応し、喜びに声を張り上げた。

 抱き合い、頷き合っていたりする。

 嫌な予感しかしない。

 俺が戸惑っていると、リザとは別種の美しい女性が近づいてきた。

 気品漂っている女性は、近くで見ると思いの他、若かった。

 俺と同年代か少し下くらいの年齢だろう。

 銀の髪を風にたなびかせ、一つの所作に目を奪われるような魅力があった。

 そんな彼女が王のやや後ろに移動し、小さく笑った。


「父上、勇者様が戸惑っておいでですわ」

「百回目にしてようやく勇者を召喚することができたのでな、ついはしゃいでしもうた。許せ」


 リザが妨害してたんだろうか。

 召喚されたのがただの人間ではこちら側の人間も、召喚された本人もたまったものではないだろうし。

 だからと言って俺がどうにかできるとは思えないんだけど。 

 ああ、大して考えず了承してしまったけど、今さらに後悔が。

 なんか、みんな歓迎してくれているし、この先のことが連想できてしまう。

 どうしよう。

 逃げたらまずいよな……。

 そんな後ろ向きなことを考えていたら、王様が佇まいを直した。


「儂はこの国、ロレンシア国の王アンデスじゃ。

 隣にいるのが、儂の娘エオールじゃ」

「お初にお目にかかります勇者様。お会いできて光栄ですわ」


 エオールの双眸には何かの熱っぽい感情が見え隠れしていた。

 日本でも何度か見たことがあるような視線だ。

 なんか、居心地が悪い。


「どうも、神奈累です」

「ほほう、中々に珍しい名前であるな。

 しかし……なにやら奇怪な恰好だな」


 俺の恰好は制服だ。淡い色合いのブレザーだから、まだちょっとはマシだけど。

 真っ黒の学生服とかだったら浮いてしょうがなかったと思う。


「しかし、伝承は間違っておらんかったようだ。

 人類が窮地に陥るとき、召喚魔術によって勇者を召喚できる。

 半信半疑ではあったが、他に策もなく、試行回数は結局三桁に及んだ。

 しかしその努力も無駄ではなかったのだ。これでこの国も滅びずに済むというもの!」


 はっはっはと笑う王に、姫や兵士、彼等の後ろで不安げにしている連中もいた。

 なるほど、さすがに全員が俺の招へいを歓迎しているわけじゃないらしい。

 というか普通に考えて不安になる方が当然だろう。

 待て。

 いや、そうじゃない。 

 この国が滅びずに済む?

 今、そう言ったよな、この人。


「あ、あの、状況が飲み込めないんですが」


 王の表情が凍った。

 真顔になり、真っ直ぐに見つめられて、俺は身体を委縮した。


「よもや、そなたは勇者ではない、などということはないであろうな?」

「いえ、一応勇者らしいですが、その、大して知らずに送り込まれたというか」

「そちら側で事情を知るような手段はなかったと?」

「なかったというか、はしょられたというか」

「ふむ? なるほど。よくは知らぬが、現状を説明する必要があるようだ。

 エオール。勇者殿に、我が国の情勢を説明してさしあげなさい」

「かしこまりましたわ。累様。

 この世界は、三国に分かれております。

 北のリオラ、東のアリスト、そして自国、西のロレンシア。

 南には魔国グランゼオラがあり、魔族たちが人国を支配しようと侵攻中です。

 現在、我がロレンシア国は魔族の侵攻を何とか食い止めておりますが徐々に領地が奪われております。

 リオラからの援軍もあり、何とか保ってはいますが……。

 このままでは国が滅ぶのも時間の問題。

 それは三国すべてに言えることでございます」


 必要最低限の説明をしてくれたようで、何とか呑み込めた。

 どうやらリザの言っていた通りのようだ。


「現状、打開策はなく、徐々に侵攻されております。

 各国でどうにかしようと考えてはいるのですが」

「それで俺を呼び出した、と?」


 完全に苦肉の策って感じだけど。

 あの喜びようから言って、もしかしたら結構期待されてしまっているんだろうか。


「はい。勇者様、お願いいたします。どうか魔王を倒してくださいませ」


 エオールは俺に向かい、純真な瞳を向けている。

 ただ、俺は彼女の台詞に引っかかっていた。

 いや、俺が倒すの?

 リザもそんなこと言ってたけど。


 おかしくない?

 なんで俺が倒すの? みんなで倒そうよ。


「お、俺が倒すんですかね? 協力するとか……」

「それはできぬ。魔王軍は相当な数を誇っており、我々は耐えることで精一杯なのでな」


 この王、何をしたり顔で言っているのか。


「……つまり、俺一人でどうにかしろ、と?」

「そういうことになるな」


 そういうことになるなじゃないよ!

 ちょっとおかしくありませんかね?

 どうして、異世界の人間にこんな頼みごとができるんだ、この人たちは。

 赤の他人が自分のために尽くして当たり前、みたいな考えをするおかしな人はいるけど。

 この人たちも同じ類か?

 おかしいでしょ!

 俺に死ねって言ってるんですけど、この人たちは。

 実感はない。

 だって魔王とか勇者とか聞いて、なるほどそうか、とは言えないだろう。

 でも、明らかにイヤな状況であることはわかった。

 やっぱり逃げていいだろうか。

 ダメか。

 俺が思案していると、王様が言った。


「お主、本当に勇者か?」


 完全に疑いの目を俺に向けている。

 まずい。

 さっきまで弛緩していた空気が張り詰め始めた。

 一度勇者だと名乗った手前、実は違いますとは言えない。

 実際、リザ曰く、俺が勇者だということは間違いないらしいし。


「一応、そうみたいですけど」

「……では勇者の力を見せてもらおうか」


 おっと、これはおっと、かなり威圧的な物言いですね。

 まずいな。

 警戒され始めている。

 ここで何かしらの力を見せないと、何をされるかわからない。

 力? 力ってなんだよ。

 そうだ。テンプレーション!

 リザが言っていた能力だ!

 確かテンプレに関する能力とかなんとか。

 テンプレってなんだよ……ん? いや、わかるぞ。なぜかわかるようになってる。

 そうかテンプレってのは要は『よくある』『使い古された』『流行の』みたいな意味合いで使われてるみたいだな。

 テンプレート、複製、雛形という英語が語源のようだ。

 なるほど、俺の置かれていた環境はラノベテンプレに該当するようだ。

 で、今はネット小説テンプレ、か。

 待てよ。

 それがわかったからって何がどうなるっていうんだ。

 というかテンプレがわかったからって、テンプレーションがどういう能力なのか全然分からん。

 どうしよう。

 滅茶苦茶見られてるんだけど。

 王も姫も兵士も侍女も俺を凝視している。

 怖い。プレッシャーが凄まじい。


「どうした? 力を見せよ」


 語気が強い。

 これは逃げるわけにはいかないだろう。

 何かしないと。

 でも使えそうにない。

 しかし何もしなければ俺の未来は閉ざされるかもしれない。

 何か。

 何かしないと。

 異常な圧迫感、異常な環境、異常な精神状況それらが相乗し、俺は自我を失った。

 そして。


「テンプレーション!」


 なぜか叫んだ。

 しかし、何も起こらなかった。

 当たり前である。

 俺の声が反響していた。

 聞こえなくなると。

 恥とか情けなさとか自責の念とかいろんな感情が押しよせて、俺はその場に蹲った。

 ……死にたい。

 王様が真面目な顔で言った。


「て、てんぷれ、なんと言った?

 今のは? 何か力が行使されたようには見えんが」


 やめて! たった今、できた黒歴史を掘り返さないで!

 俺が何も反応できないでいると、王様が肩を震わせた。

 一気に紅潮する。


「やはり、お主、勇者ではないな!?

 おのれ、儂等を謀ろうとしたのか!?」

「い、いや、俺も勇者だとは思えないけど、神様がそう言って」

「神、だと!? き、貴様、神であるリザリオエンテ様まで愚弄するか!?」


 リザリオエンテ?

 ああ、リザのことか。長ったらしい名前とか言っていたし。

 なんて冷静に考えている中、俺の体温は上がっていた。

 まずいまずい。

 この状況、まずい。

 王様が赤ら顔で俺を怒鳴りつけている。

 その横で姫も俺へと蔑視を向けていた。


「偽勇者に敬意を払っていたなんて、屈辱ですわ……!」


 蔑みの中に落胆があった。

 もうだめっぽいな。

 逃げるか。

 逃げられるのか。

 というか、なんでこんなことになってんだよ。

 最初に勇者じゃないって言えばよかったんだろうか。

 それはそれで問題があったような。

 だって百回に及ぶ召喚の後に一般人が現れたとなれば。

 なんか余計にこじれそうだ。

 いや、そうだ。

 俺の正確な事情を説明すればいいのでは。


「ち、違います。俺は神様、えーとリザに会って力を貰ったばかりで使い方がよくわからないんですよ!」

「貴様……神の名を出してただで済むと思うなよ!?

 しかも呼び捨ての上、身勝手なあだ名をつけるとは!」


 あ、地雷だったみたい。

 ってか本人がそう呼べって言ったのに。

 最初からリザの名前出していても同じような展開になったような気がする。

 だめだな、こりゃ。


「そやつをひっ捕らえろ! 牢獄に放り込んでおれ!」

「はっ!」


 兵士達が俺の腕を掴んだ。

 嘘だろ。

 なんで、こんなことに。

 まさか処刑、なんてならないよな。

 そんなのだけは勘弁だ。

 その時、視界が歪んだ。

 時間の流れがゆっくりになり、虚空に何かが浮かび始めた。 

 これは文字?

 まるでホログラムのように空中に文字が浮かんでいる。

 そこにはこう書かれていた。


●テンプレーション【使用回数:1/1】

①:どうにかして命だけは助かる【広義的、限定指定可能】:必要テンプレpt …15,000

②:何かの力に目覚める【広義的、限定指定可能】:必要テンプレpt …34,000

③:実は全部、夢だった【狭義的】:必要テンプレpt …999,999


●テンプレーションタイム【使用回数:2/3】※使用中


●テンプレポイント:411


 なんだこれ?

 これがテンプレーション?

 文言を見ると、確かにテンプレ的な展開を連想させるような内容だ。

 だがかなり曖昧な表現だし、なんだよこれ全部夢だったって、これはテンプレなのか?

 ……いや、話の途中ですべてを終わらせたいというテンプレではあるのかな。

 とにかく。

 何かしないと、このままだと殺されてしまうかもしれない。

 テンプレーションの内容を見ても、テンプレポイントが圧倒的に足りない。

 この力を消費して、能力を発動するらしい。

 しかし、気になる文字がいくつもあった。

 広義的、狭義的という部分。

 指定の言葉を見比べると、その言葉自体が広い意味なのか、かなり狭い意味なのかによって違うようだ。

 限定指定可能とあるが、つまり②で言えば、何かの力に目覚めるではなく、特定の力に目覚めるという指定ができるのかも。

 実際、テンプレとは言っても力の内容は千差万別だから、そこはテンプレの範疇ということなのだろうか。

 ①と②と③を見比べるとすべてポイントが足りないが、③は論外。

 ぼったくりレベルだ。

 ②も無理。①も無理だけど、この中だと一番必要テンプレポイントが低い。

 ということは、限定指定すれば必要数が減少するかもしれない。

 そこまで考えると①の選択肢が拡大され、派生した。


●テンプレーション【使用回数:1/1】

①どうにかして命だけは助かる

 ▽限定指定

  A:牢獄に入れられるが、一年経てば許される【狭義的、年数指定可能】必要テンプレpt …150

  B:牢獄に入れられるが、助けが来る【広義的、相手指定必須】必要テンプレpt …10,000

  C:牢獄に入れられるが、自力で脱出できる【広義的、脱出条件指定可能】必要テンプレpt …300

  D:牢獄に入れられる前に、誰かが助け舟を出してくれる【広義的、相手指定必須】必要テンプレpt …400


 目を通すと、何とか所持ポイントで賄える選択肢がある。

 しかしどうするか。

 考えている間も、時間は徐々に進んでいる。

 しかも耳朶にカチカチという音が響いてきている。

 その音が少しずつ早くなっているようだった。

 これはいわゆる制限時間がある、ということなのか。

 悠長に考えている時間はないが、安易に答えを出すわけにもいかない。 

 とにかくAはなしだ。

 一年は長い。その間、牢屋の中で生活をするなんてごめんだ。 

 Bは指定したくても、相手がわからない。

 この世界の情勢を把握していない状態で、助けてもらう相手を適当に決めれば、どうなるか皆目見当もつかない。

 というかテンプレポイントが圧倒的に足りない。

 Cはアリだが、脱出しかできない。

 牢屋から脱出した後のことがわからず、かなり博打要素が強い。

 Dが一番妥当だろうか。

 牢獄に入れられる前に、という文言が魅力的だ。

 一度牢に入れば、それだけで犯罪者としてのレッテルを貼られるかもしれない。

 そうなったら今後の行動に影響を及ぼす可能性もある。

 ならば。

 Dだ!

 そう考えた瞬間、文字が一斉に消え失せた。

 そして再び浮かび上がる。


  D:牢獄に入れられる前に、誰かが助け舟を出してくれる

   相手を指定してください

   ▼フリー入力【入力は三回までです。指定相手によっては不可能な場合があります。その場合もポイントは消費されます。条件や環境を考えて入力してください。テンプレポイントや上位層項目を参考に、可能であるだろう範囲内での指定を推奨します】

 

 入力?

 これはつまり現状を鑑みて、適した相手を指定しろ、ということか。

 全体的な必要テンプレポイントを見れば、恐らくは状況によって、かなり無理やりな選択の場合は多くのポイントが必要になるようだ。

 そして自然であればあるほど必要テンプレポイントは下がる。

 自力で脱出、という選択だと、かなり必要なテンプレポイントは減少しているし。

 少しは概要がわかってきた。

 問題は、相手をどうするか。

 周囲の情景を見よう。

 身体はほとんど動かないが、目線は何とか動かせる。

 目の前には明らかに怒っている王様。

 俺の両脇には恐らく下っ端の兵士。

 謁見の間の端には装飾が豪華な鎧を着ている兵もいる。

 扉近くにはメイド服を着た侍女達。

 文官らしき、男性達が玉座方面に佇んでいる。

 後は、王様の後ろにいる姫様くらいか。

 この中の誰かを指定する方が妥当だろう。

 突然扉を開けて、誰かがくる、なんてちょっと難しいだろうし。

 王様は? 一番ダメだろう。連行を命じた本人だし、いきなり冷静になって、翻意するとなるとかなり違和感がある。

 このポイントだとそこまでの変化は望めないのではないだろうか。

 では兵士達は。もっとダメだ。王に逆らえるような地位ではない。

 同じ理由で侍女もダメ。

 位の高そうな兵も、王に進言できる立場じゃないだろう。

 では文官系の人達はどうか。

 いや、無理だろう。

 どれほど政治に尽力し、地位が高くとも権力は王自体には及ばない。

 城内の情勢で力を得ている可能性もあるが、そんな人間を見抜くことはほぼ不可能。

 というか入力しようがない。


 ということで。

 消去法で決まったのは、姫様であるエオール。

 彼女しかない。

 俺はエオールと入力した。

 考えるだけでエオールという文字が浮かんだ。

 と。

 玉座の方から、部屋全域に光の輪が流れてきた。

 それが辺りをすべて透過すると、物質から生物から何から何まで明滅する。

 まるで。

 何かを投影しているかのように。

 そして時間が動き出した。

 俺は兵達に連行され始めている。

 何も起こらない。

 テンプレーションは発動していないのか?

 くそっ! 

 リザ、恨むぞ。

 内心で恨み言を呟いていると。


「お待ちください、父上」


 姫であるエオールが王に言った。


「なんじゃ?」

「そこの者は、異世界からこちらに召喚されたばかり。恐らくは憐れな平民でしょう。

 確かに謀り、神の名を騙った罪は重いですが、こちらの世界の事情は知らない様子。

 ここは温情をかけ、放逐してはいかがでしょうか?」


 姫の言葉に王は何やら考え込んでいた。

 俺を一瞥し、明らかな侮蔑を含んだ視線で射抜くと、再びエオールに向き直る。


「そなたの進言通りにしよう。このような矮小な人間に割く時間も牢もありはせんからな。

 命拾いしたな、詐欺師。おい、そやつを下流街に連れていけ!」

「都市から追放しなくてよろしいのですか?」

「よい。儂は寛大だ。街から追い出せば、魔物の餌になるだけじゃからな」

「さすがは王、なんと広いお心……。それでは下流街に連行いたします」


 屈強な兵士が俺を掴んで外に連れ出した。

 それは牢獄への道程ではなく、街中への道だった。

 未来が、変わった?

 テンプレーションが発動したのか?

 本当に?

 偶然なのか?

 いや、いきなりエオールの心境が真逆に変わるはずがない。

 彼女は、俺が勇者でないと思った時、落胆していた。

 つまり期待していたということ。

 それは王も一緒で、その心情の裏返しが怒りだった。

 しかし姫は王とは違い、怒り以外の感情があったように見えた。

 俺を蔑みながらも、まだ何か期待していたのではないか。

 つまり。

 俺に対しての情は残っていた、ということか。

 そこに訴えた。だから『必要ポイントは少なかった』ということではないだろうか。

 とにかく。

 俺は助かったのだ。

 安堵を抱いたまま、俺は兵士達に引きずられた。

 窮地は脱したが、事態は好転していない。

 むしろ、これからが大変なのだと。

 その時の俺は、気づかないふりをしていた。

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