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《天の末席》2.天の乙女

「さて、今日のメインイベントね」

スイーツを堪能してツヤツヤになった桜に連れられてやってきたのは、以前奏子やフィー、エミリオとともに来た店の近く。服飾店が並ぶ区画である。

「早速だけど、予算はいかほど?」

桜の問いにルビアが金額を告げる。けっこうたんまりな額だが、今までは礼装などに使用する以外の出費は殆ど無かったらしい。あれから闘技にも何回か出ているらしく、資金には事欠かないそうだ。なんなら、フルプレートを揃えたトウヤよりも余裕がある。

「充分ね。じゃあ、ここにしましょ」

扉のに取り付けられた看板にはアンジュと店名が刻まれている。

桜が言うには、ここは可愛い系を主に扱うショップらしい。ガラス張りのショーウィンドウの中には、翼付きでも着られる服がいくつか展示されているが、そのどれもにフリルやレースがあしらわれていた。

「ここならけっこう選べるはずよ」

扉のベルを鳴らして中に入る。

「いらっしゃいませー」

数人いる店員の中には翼人(ハルピュア)がおり、ルビアへのオススメも聞けそうだ。

多くの服が並ぶのを眺めながら、桜が尋ねる。

「どんな感じのが良い?」

「…やっぱり動きやすいの、かな」

最優先は動きやすさ。翼を動かす以上そこは譲れないのだろう。そうなると、翼用の開口加工がしてあるものではなく、端から背中が開いたホルターネックタイプの服になってくるだろう。

「おっけー。じゃ、それでいて可愛いのピックするわ」

ルビアの要望を受けて、桜は早速服を物色し始める。

「桜、張り切ってるな」

「そうだね。私、あまり拘りが無いから、実はこういう店は初めてなんだ」

服を眺めつつ聞けば、今まではファストファッションと自作のミックスなのだとか。元々薄着で簡素な服装だとは思っていたが、部族伝統の着衣だったらしい。

「服として最低限あれば良いやって思ってたんだけど、なんだか最近は注目されてるからね」

天魔(ネフェリム)となった今では視線が気になるようだった。魔術師としても女の子としても注目度が上がったため、トウヤから見ても実際向けられる視線は増えているように感じる。他人の目で見ていて明確に判るのだから、ルビアの実感は相当だろう。

それだけ見られる以上、ある程度周りの目を意識した服装は必要だ。

「確かに身だしなみは大事だな」

トウヤの返事に、ルビアは苦笑する。

「いつも戦闘や狩りなら鎧一択なんだけどね」

「レクレスかよ」

レクレスと一緒の考え方だった。

まぁ、奴の場合は万事が戦時だから、常に魔剣を身に着けた武装状態だが。

そんな事を考えていると、ルビアは自身の服を指さした。

「トウヤは和服だからあまり悩まないでしょ?これでも意外と私服選びは悩むんだよ?」

確かにトウヤは同じような着物の着回しで、気分で帯を変えるくらいだ。ルビアが言うには、簡素なりに色や模様の違い、止め金とショートパンツとの組み合わせも考えて着ているらしい。

「…意外と苦労してるんだな」

「私以上に悩んでる人もいっぱいいると思うよ」

比較的簡素なルビアが言うのだから、だいたいの女子はきっと悩んで私服選びをしているのかもしれない。

そこへ桜が何着か服を持って戻ってくる。

「お待たせ。色々あるから選んで着てみてくれる?」

桜に促され、ルビアは試着室へ。

スルスルと絹擦れの音がして、ルビアが着替えているのを想像しかけたが、トウヤはかぶりを降って妄想をかき消した。

しばらくするとカーテンが引かれ、トウヤは出てきたルビアに息を飲む。

「どう、かな?」

今までの簡素なデザインから一転、レースやリボン、フリルなどがあしらわれた白のフレアミニドレスはとても愛らしい。五分袖のレースも含めて動きを阻害しない作りであり、今のルビアにとても似合っていた。装飾過多に見えないのは、ルビアの雰囲気のおかげだろう。

「…可愛いと、思うよ」

可愛さ半分、神々しさ半分だ。

それだけ言うにも苦労するくらい、トウヤは見惚れてしまった。

「ありがとう」

礼を言うルビアも照れ笑いする。

それを隣で見ていた桜は、いたずらな笑みを見せた。

「ちなみに見せパン穿いてまーす」

ペロン。

唐突にルビアのスカートを捲ってドロワーズを露わにする。

見せパンなのだから見られても良いものなのだが、天使姿のルビアの見せパンはどうにもイケナイ感じが拭えない。ルビアも恥ずかしがるので余計だ。

「はい、終わりー」

そんなこんなで桜にからかわれつつ、ルビアは最終的に何着かを購入する事に決めた。しばらくは天使なルビアを見慣れない日が続きそうだった。

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