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《敵対勢力》3.考察

リフィがランドワームを倒した後、トウヤたちはフェイトの仕立てた結界の中で休息を取っていた。奏子の班の負傷者二人は現在ホムンクルスたちの治療を受けており、その待機時間でもある。

トウヤたちF班と奏子、イグニスも一緒で、リフィは生徒たちを労う。

「君らも災難だったね。ルフ鳥はともかくとして、あれはイレギュラーだ」

あれ、とは巨大ランドワームの事だろう。

「この辺りの事は資料にも書いておいたが、あのサイズまで成長する種は居なかった。恐らく、遠方から餌を求めて旅をしてきたのだろうね」

通常であれば、ここの地域に生息するランドワームは、奏子たちが倒したサイズで成長限界を迎える。それ以上大きくなる事は無い種族であり、当然、ルート難易度もその前提があってこそだ。その証拠に、奏子たちを保護してすぐ、リフィはランドワームへ拘束魔術を行使している。トウヤ自身が攻撃を受けかけたとはいえ、全滅や致命的な危険では無かったと思われる状況で、手を貸さないと言っていたのにも関わらずリフィが手を出したという事は、つまりそれだけあのランドワームが脅威的で、ルート難易度を大きく超えた存在だったという事だ。

レクレスが呟いた通り、ルフ鳥の方は、奏子含め班員全員が血の匂いに頓着していなかったのが原因で襲われていた。シルヴァあたりは罠師なので気付きそうなものなのだが、本人が意識を失っている以上、確認しようがない。ただ、奏子曰く、班員全員がその時は何もおかしく無いと判断していたとの事だ。今思い返すと何故かは解らないらしい。

「ともかく、だ。医療班で治療しているとはいえ、シルヴァと御影はしばらく戦闘は出来ないだろうから、本日はこのまま2班合同で目的地に向かう事にする。二人の治療にはもう少し時間がかかるから、君らはもう少し待機していたまえ」

リフィはそう言うと、トウヤたちの元を離れ、結界の中に建てられた簡易テントに入り込む。

中ではシスター・フェイトが結界魔術を維持するために瞑想をしていたが、リフィが入ると、瞼をあげる。

「皆さん、落ち着きましたか?」

フェイトの言葉に、リフィは肯定と懸念材料を返す。

「奏子が気になる事を言っていた」

本人もやや当惑していた言葉。

「返り血が気にならなかった、と」

学生とはいえ、魔術師。普段と判断が変わってしまっている違和感に気が付かせないとなれば、相当な実力を持つ魔術師が関与している筈。奏子たちに向けて探査魔術を使ってみたものの、特に不審な点は無かった。

「幻惑か催眠か、どちらにせよ、どなたか招かれざる方がいる?」

探査魔術とて万能では無い。あくまで簡易検査のようなものだ。リフィやフェイトが感知出来ない魔術が無い訳ではないし、その二人を以てしても防げない魔術だって山程ある。だが、この世界の、特にこの学院付近と言える場所は、学院の監視魔術の範疇にある。菌竜の森やゴブリンの遺跡などの高濃度魔力地域を除けば、学院の目を逃れる事は難しいのだ。その中で活動するとなると、その労力は計り知れない。

「まだ解らん。ランドワームにも、奏子たちにも、魔術的に不審な点は無かったがね」

トウヤたちには他の土地から来たと言ったが、リフィ自身、その可能性は殆ど無いと断じている。この荒野と岩地以外、この付近にランドワームは生息していない。何故なら、学院が付近の土地を使って試験的に放牧させている種の一つなのだから、それが把握できているのは当然だ。遠足が計画された時点で、あんなに異常発育した個体は存在しなかった。生息生物最強種である菌竜でさえ、学院が創り出した種なのだから、森より管理が容易なこの荒野で異常が発見出来ない筈が無い。

魔術を行使された痕跡はない。

魔力の流れも、偏差も、特に異常はない。

だが、それがむしろ怪しい。

「先日の襲撃もありますから、警戒しておいて損は無いでしょうね」

フェイトの言う通り、警戒しておくに越したことはない。

先日の襲撃はお粗末だったが、あれがブラフなのかも知れない。

学院を否定し、崩壊を目論む派閥がある。

魔術を秘匿すべしと考え、または魔術を扱う事に特権階級意識を持つ者の独占欲により、或いは魔術自体を破棄すべしと考える者すら内包する、多くの集団の集合体。ある意味、反学院連合とでも言える存在。学院の消滅という大筋の利害関係こそ一致するものの、その他に於いては全くの異質が集まる者たち。

学院は希望や未来を想って創られ、そしてある種の者たちには絶望や恐怖を与えている。

それは決して少数では無い。

日常の裏で、学院は常に狙われている。

やむを得ない場合を除き、それを生徒に直接見せてはいけない。

それが学院教師たちに課せられたルールの一つである。

「何も無ければ良いんだが、な」

リフィの声に、荒野は何も答えなかった。


     ***


「いやぁー、トウヤ君たちが後ろに居てくれて助かったよ」

リフィがフェイトの元に向かい、開口一番に奏子は礼を口にした。

猫耳にくりくりの目をしたそのケットシーに続き、人形数体もまたお辞儀する。

「助けになれて何より」

あの時は助けなければという気持ちで反射的に身体が動いてしまい、思い返すとヒヤッとするが、それでも結果良ければ、というやつだ。

トウヤは内心言い訳したが、それをレクレスは許さなかった。

「まぁ、トウヤはその後リフィ先生に守られたけどな」

横薙の一撃を喰らえば、ルインの強化魔術があったとはいえ、軽いダメージでは済まなかっただろう。ましてや強化なしなら内蔵破裂レベルだ。リフィがいなければ、最悪全滅もあり得た。

そんな事実を、ルフ鳥を倒しランドワームの攻撃を避けた男に言われると、トウヤも言い返せないのだが、それでも奏子は礼を重ねる。

「いやいや、それでも助かったのは確かだよ?まずトウヤ君が駆けつけてくれなかったら、全滅まっしぐらだった訳だし」

確かに、あのまま戦闘していては、いずれ巨大ランドワームが現れて、ルフ鳥どころの事態ではなかっただろう。そういった意味では、トウヤが飛び込んだタイミングはかなりギリギリな所だったかも知れない。

「俺も奏子も、ルフ鳥に決定打通せる程打撃力無かったから、マジで助かったよ」

奏子にイグニスも同意すると、今度はルインが話す。

「ルフ鳥はかなり硬いものね。奏子たちの班編成なら、回避するのがベストかも」

ルフ鳥は金属質で硬い。

攻撃力低めの奏子班では、素早い相手に有効打を稼がねばならず、かなり相性が悪かった筈だ。

その点は、奏子もよく解っているようで、バツが悪そうだった。

「にゃはー、その通りではあるんだけどねぇー」

「何でだか俺たち誰も、ルフ鳥に襲われるまで、返り血や匂いを処理しなきゃいけない事をすっかり忘れてたんだよな」

そんなイグニスの言葉に、レクレスがもっともだ、と同意する。

「まぁ、匂いを消してりゃ、そもそも 襲われる事も無かったわな」

それに対して、奏子は苦笑いを零す。

「手厳しいにゃー、レクレス君は」


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