第五話
果たしてどれだけの者がそう言われて置いていくだろうかとジェイムスは考えた。先ほど受けた説明で実力社会だと理解し、ギルドの前提が以前とは変わった事も把握した彼。ついでとなるが襲われる事は以前にもあったため気にはしない。それにエフィルからの報告もあった。
「お前らがどうやってそんだけのモノを集めたか知らねぇが運が無かったな!」
「いくらになるか楽しみだぜ」
思い思いの事を叫ぶ奴らに対して二人は冷静だ。
「どうする?あんまりやっちゃうとリヴァ様もいい顔しないと思うけど」
「そうですな。とりあえず私が止めますので戦意喪失程度にあなたがやってください」
「わかった」
通信石で話し終える二人。老人がゆっくりとした所作で白い手袋をつけ始める。所詮少女に初老の男、すぐに差し出すだろうと思っていたがなかなか置いてこうとはしないため、
「動くとケガじゃすまさねぇぞ!」
「痛い目みせてやる!」
と、脅しにかかる。しかし、
「おぉ怖。でも嫌だから抵抗するね。せいぜい足掻いてみてよ」
そうエフィルが挑発すると五人はそれぞれ武器を構える。
「うおおぉぉぉ!」
「せりゃああぁぁぁ!」
と襲い掛かる。残念なモノを見るような少女に集中した彼らは初老の執事を忘れてしまっていた。
「絃留呪」
静かに唱えられたそれにより五人は動けなくなった。
「なんじゃこりゃ!」
「く、くそっ!うごけねぇ!」
「何故がわからないあなたたちでは私たちを倒す事はできないでしょう」
「ひっ!」
ゆっくりと近づく執事に怯える。先ほどとは立場が逆転していた。何が起きたかわからないが、剣や槍を振りかぶった状態から腕は動きもせず足も動かせない。辛うじて胴体と指先くらいは動かせる、そんな状態。
「えぇー、これ私の出番なくない?」
「…仕方ありません。これ以上戦うと言うのなら容赦しませんが、如何致しますか?」
「もう襲わねぇ!解放してくれ!」
五人が一斉に解放するように懇願。一応言質もとったため解放するジェイムス。五人はすぐに逃げていった。
「さすがだな」
「ありがたき言葉ですリヴァ様」
そう声がかかり、振り向くジェイムスとエフィル。いたのはリヴァとミュシャ。たまたま通りがかったため見ていたのだ。
ジェイムスは執事、シャドーそしてその上位であるファントムという種族を持っている。職種はアサシン(暗殺者、前衛職)、その派生にあるストリンガー(絃術使い)、他にシーフ(盗賊)、トレーダー(商関係)、セージ(賢者)、ブラックスミス(鍛冶師)。
絃留呪は一定レベルを捕える事ができる魔術だ。ストリンガーの低レベルで取得が解放される術だが、タイムラグが少なく扱いやすい。
執事と言う種族は種族なのかと疑問もあるがゲーム時代からよくわからないものだった。能力も上がりやすいため使っていたが最後までよくわからず、便利種族という括りにあった。
設定は料理が得意だとか、執事要素を詰め込んだように思う。そもそもシャドーやファントムはアサシン関係で付けたため設定時にはまだついていなかったのだ。
術の行使を見ていたリヴァ。攻撃でないがしっかりと阻害効果が発揮されていたところを見ると、魔術が発揮できるのは間違いがない。一応の身を守る術が確認でき、安堵した彼だった。