第四話
何がどうなっているのかわからない二人。ギルドと言えば複数のパーティーが連合を組む事を指しているのが二人の認識。『冒険者ギルド』とあり、大きな家屋までそろえているという事はかなりの大所帯と思ってもいいはずである。
「とりあえず中に入って確認をしましょう」
「はぁ!?安全確認もできてないでしょ!」
「敵対行動を取らなければ何もしてこないでしょう。それに中にいる輩に脅威は感じられません」
そうジェイムスに言われ、彼ほど鋭敏ではないが様子を確認するエフィル。同じ結果にたどり着いた彼女は仕方なく彼と連れ立って中に入った。『リヴァ様が隣にいるから安心』、と置き換えながら。
西部劇によく出てくるウェスタンドアを開ける。視線が向くがすぐに戻り、そしてまた見られるという二度見される二人。
当然だろう。一人は執事服を着た初老の男、もう一人は騎士の服装をしている若い女。騎士特有の白銀鎧。この世界では滅多に見られるものではない。
そのような特殊な服装に加えて異色なコンビ。誰だって見てしまうだろう。それにエフィルは可愛らしい。そちらにも目が行く。
「何をするのが正解?」
「敵対行動されるとは思いませんでしたが、見るだけで何もしてこないとも思いませんでしたよ」
視線を集める二人は緊張した様子もなく話す。ギルドと名乗っておきながら誰も力を試しに来ない事、それを疑問に思う二人。
「ちょ、ちょっとそこのお二人さんはここ初めて?」
受付か何かに見える場所から一人の女性が話しかけながら手招きしている。警戒は緩めずに、とりあえず二人はそちらへ向かい前の席に座る。周りの人たちもようやく普段通りになり始めた。
「初めまして。私は冒険者ギルドの受付をしているミリアよ。今後次第だけどお二人と会う機会も増えるかな」
「こちらこそ初めまして。それで今後次第と言うのはどういった意味でしょうか?」
「え?冒険者に登録すれば関わる機会も増えるだろうからって事だったけど、早とちりしちゃった?」
「いえ。ただ私たちが把握している冒険者とここギルドの言うものが同じかどうか確認をと思いまして」
ジェイムスとミリアなる人物が話している間、エフィルは手持無沙汰だった。彼女の頭が悪い訳ではない。エフィルは正確に覚えていないが、ジェイムスはトーレダー(商人職)だかセージ(賢者、この場合は智者)だかを取得しているため彼に任せる方が間違いないのだ。『役割分担は大事だ』、というリヴァの有り難い教えを生かしているのだと自分に言い聞かせながら周りを観察する。
レベルを把握できるほど高い察知系統のスキルをエフィルは持っていないが、代わりに広範囲を見ることができる。ジェイムス曰く問題が無いとの事だったが絶対は無い。それに先ほどから好奇の眼差しで見続けている輩がいる。五人ほどの男たちのようであり、持っている得物は大剣や槍。ウィザード(魔法職)のような雰囲気もない。『さすがに他に仲間がいるかどうかはわかんないやー』。その他にも見ていると、
「なるほど、興味深い話でした。再度考えてからこちらへ参ります」
「その方がいいと思います。命を失う可能性も当然ありますから」
「では。行きましょうか」
エフィルが観察している内に話は終わっていた。立ち上がる二人。すると向こうでも立ち上がり始めるのがいる。そして、冒険者ギルドを外に出てから声を掛けられた。
「待て!有り金置いてけや!」
「零の刃」共々よろしくお付き合い願います。
次回もよろしくお願い致します。