第一話
明くる朝。目覚めたら展開が変わっているのではないかと期待したリヴァだが、寝る前と同じように宿のベッドにいる。しかし自然と落ち込む事は無い。『徐々にリヴァと意識が調和してきているのか?』、と冷静に考える。『初日で余裕がなかった事も考えられるが…』、と考えていると、
「リヴァ様。朝食ですが如何致しますか?」
「もらおうか。他の二人も一緒に…」
『一緒にどうか』、とまでは言いきれなかった。い、と言った辺りでドアが開け放たれ、何かが飛び込んできたのだ。日本にいた頃の蒼嗣ならば反応はできてもぶつかっていただろう。しかし今はリヴァだ。中・後衛職な彼でも力はある。故に受け止めた。
「リヴァ様元気!?」
「あぁ、エフィルか。元気だ」
「よかった。この街に入る時元気なかったから心配だったんだよ、ぉおおう!?」
「邪魔です」
「なにおぅ!」
ジェイムスと首根っこを捕まれたエフィルが言い合いを始めた。朝くらいゆっくり食わせてくれと思いながら運ばれてきた朝食に手を伸ばす。幸いな事にサンドイッチと紅茶だ。いきなりゲテモノなんて来たらどうしようかと考えていたが、サンドイッチの中身も日本で食していたものと大差がないようだ。わいわいと二人が言い合っている中、静かに食べていると、
「騒がしいわ。あら、リヴァ様おはようございます」
「おはようミュシャ。君も一つどうだ?」
「ではいただきますね」
イスに座って食べ始める二人。言い合っていた二人もそれに気付くとおとなしくなり、食べ始めた。
ミュシャ。褐色肌のダークエルフでありハイエルフでもある。レベルは人種・職業ともに100。というよりもこのメンツに両方がレベル100じゃない者はいない。
人種はダークエルフ且つハイエルフ、それにケット・シー(妖精猫)。職業に関してはクレリック(回復)とソーサレス(呪術)、キャスターとアデプト(呪石精製に加えて回復用アイテムの製作等)、等々比較的サポート要員見える。見えるとしたのは呪術に関して、麻痺や毒といった状態異常等、相手が嫌になるように作り上げているし、呪術の攻撃力もバカにはならない。
ダークエルフになったのはたまたまだが、ハイエルフという事もあって魔法関連、魔力や魔力耐性は普通よりもかなり高い。弱点となりそうな部分もランクの高いアイテムで補われている。外見はエルフだが、猫という人種により俊敏性や回避率もある。それに猫に変化する事もでき、いつの間にか移動しているという奇襲もできた。
戦闘では主にソーサレス兼クレリックな彼女だが白っぽいローブに、茶色いロングブーツと魔法使いらしい装い。『だがどれもランクの高いレアアイテムだったな』、とミュシャについて思い出すリヴァ。
「何かお悩みですか?」
とミュシャが訪ねてきた。
ゲーム当時プレイヤーキャラとNPCに設定を付ける事ができた。だが所詮はメモみたいなものでしかないため、蒼嗣だけでなく、他のプレイヤーも思い思いの事を書いていた。NPCに惚れられているという設定の者が何人もいたのは記憶に新しい。
ミュシャに関しては頭脳明晰でリヴァを慕っているとした記憶がある。『まさかな』、とリヴァは思いながらも、向こうから聞いてくれたのは渡りに船である。
ちなみにリヴァに関してはクール系とした記憶しかない。最初に設定した以降いじった記憶もないため、覚えていなくても仕方ない事かもしれない。それに蒼嗣とリヴァが合わさっていく感覚があるため『クール系の方がこのメンツを率いていくにはいいのだろうな』、と漠然とだが考えている。
実際には仲間以外に容赦しないという本人が遊び半分でいれたものもあったが。
とりあえず今後の方針か、と思い考えていたことを話す。
「よく気付いたな。少し頼みがある」
「喜んで承ります」
「その前にちょっといーい?」
話し始めたのはエフィル。ジェイムスが睨むが、彼女も睨み返す。
リヴァは『こいつら仲悪いって設定したか?』、と別な事を考えていた。