プロローグ2
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それまでのゲームではNPCは作れても己の拠点にいるだけだとか、戦闘に関してもちょっとしたサポートキャラという立ち位置にすぎなかった。ところが『FRONTIER THE ORIGIN』は思い切った。
作成したNPCはプレイヤーと同じように様々な人種・職業を担う事ができ、共に戦えるようにしたのだ。ただし優秀なNPCを作り上げる、そのためには運や課金が必要でもあった。
まずは人種。担う事ができるとはいえ、課金によりプレイヤーでは慣れない人種を選ぶ事で強いキャラを作るという方法がある。先ほど述べた例を参考にすれば同じエルフでも見た目が変わらないハイエルフと呼ばれる人種がNPCだけある。プレイヤーのなれるエルフと違うのは個体の能力値が高めに設定されている事だろう。
職業にも課金によって特殊になれたりもする。
逆にNPCはなれずにプレイヤーだけがなれる人種もある。
覚えられる魔術やスキルの上限解放のように課金によるアイテムの強さもあるにはあったが一部の人種に関してのみガチャだった。ランダムであり、よくあるガチャと同じで排出率にも波があるため、課金をせずとも優秀だと言う強運プレイヤーやNPCも存在した。それだけ組み合わせには可能性があったのだ。
このようなやりこみ要素がヘビーユーザーだけでなくライトユーザーにも支持を受け、安定していたところに新しいユーザーの追加だ。
人気はどこまで続くのだろうと思っていた矢先、というのがソウジの覚えている事だ。
「五感で体感できるゲームじゃなかったはず。そんなアップデートもこの前はなかったし」
何かと世話を焼きたがるジェイムスを隣の部屋へと追い出し、考えてみるが何も思い浮かばない。それどころか他のNPCも含め数々の冒険をしたことがあるという記憶を思い出したくらいだ。それはちょうどパソコン画面で見てプレイしていたのとほぼ同じようなもの。
つまり日本にいてパソコンから『FRONTIER THE ORIGIN』をしていた不知火蒼嗣と、実際にこの『FRONTIER THE ORIGIN』の世界にいたリヴァという人物の二つの記憶が鮮明かつ混ざっているのだ。どちらが本当の自分なのかわからなくなってしまった。
どうしたものかと悩んでいるのはリヴァだけではない。ジェイムスもだった。
「それであなたが相談なんてどうしたのかしら?」
「…リヴァ様がお悩みかもしれません」
「それジェイムスのせいじゃなくて?」
話しているのはダークエルフの女性ミュシャ、老執事ジェイムス、人間種らしき少女のエフィル。いずれもリヴァが作り出したNPCだ。
「何に悩んでいるのかわからないのです」
「それ予想?じゃ何もわかんないじゃん。変に考えるのもどうかと思うよ」
「仕方ないわ。あのお方よ?ここが見知らぬ街だとすぐに見抜いたのかもしれない」
「見知らぬ?それではやはりここは新たな街だとおっしゃるのですか?」
「えぇ。リヴァ様に言われたようにエフィルと一通り歩いてみたけど初めての場所だった。今まで見た事もないわね」
「でも機能的にはショボいように感じたよ?前いたとこの方が凄かった」
それはミュシャも感じていたようで頷いていた。気の向くままに冒険をしてきた四人。だがここにいる三人には共通の思いがある。
「とにかく方針は変わりません。リヴァ様の敵になる輩には容赦しない。それでいいですな?」
「えぇ。あのお方以外なんて考えた事もないもの」
「当たり前。リヴァ様のやりたい事を全力で補佐するのが私たち、敵には容赦しない、でしょ?」