第五十一話 スーパーコスプレちょううん、ドリンクを売って大儲け
借金の山を片付けるために、現金を稼ぐ必要が出てきた
しかし、グッズの製作は既に人を増やして1000人体制でやっているが、全く足りる気配がない
現代と違って全て手作業に頼っているためだ
一応工場制手工業、要は各工程別に人を配分して作業効率の改善化を図ったり、特殊な工作器具を用意したりと工夫はこれまでの2週間でやってきたが、需要が完全に供給を上回っている状態だ
値上げも検討したが、あまり一人の単価を上げると、家や財産を手放したり、犯罪に走ったりと後戻りできなくなる可能性があるので、気合で頑張れば稼げる額で何とかなるように調整してある
どんな世界でも、搾取のし過ぎは国の基盤をもろくする
りゅうびの力を使えば、もっと搾り取れるだろうが、それは短期的な成果にしかならず、長期的には衰退する未来しか見えない
だいたい、そんな方法で取った天下をあいつは喜ばない
ライブを始める前はそこそこの年齢層の男ばかりに人気かと思っていたのだが、女性、子供、老人と老若男女全ての層からりゅうびのライブは支持されている
その証拠に親子連れやカップルの姿も珍しくないし、中には三世代で会場入りしている団体さんもいた
この世界に娯楽が圧倒的に不足していることも大きな要因なんだろう
いずれは、りゅうびのこれまでの戦いや日本の昔話などを元に演劇なんかも導入していく予定だ
せっかく作ったステージを、りゅうびのライブにしか使わないのはもったいないし
それに、いつまでも小沛だけでの公演では、集客に限界がある
俺の知っている三国志の劉備玄徳の国『蜀』はもっと南西のはずだ、東方でしかも都からこんなに近い小沛はいずれりゅうびの手を離れる可能性も考えなくちゃいけない
その時にライブだけで国を維持していたのであれば、すぐに崩壊してしまうだろう
きっとあいつはそれを望まないだろうし、もしそれが心残りで踏ん切りがつかず大事な場面でミスがあっては目も当てられない
だいぶ話が逸れたが、とにかく制作に手間がかかるグッズ以外での収益アップを図る必要がある
ところでグッズに次いで収益をあげているのが、りゅうびのリラックスドリンクだったりする
既にここまでのライブで売り方を変えたりして、何が収益をあげているか検証した
まず、最も効果が高い理由は「りゅうびの公認」だと思っていたが、実はちょううんのコスプレだった
本人が認めているという事実より、りゅうびによく似た女の子が売ってくれるということがファンの心を刺激したらしい
劉好団にアンケートを取ったところ、どうやら本人に実際にお茶を入れてもらうなど恐れ多い、しかし、お茶を入れて欲しいという欲求がないわけではない
まぁ、劉好団達からすれば、りゅうびは現人神みたいなものだからな、お茶なんかつがせたら下手したら異端審問会議だろう
まぁ、俺の知ったことではないが、コスプレのちょううんは妄想がはかどるという訳だ
よって、ちょううんを主軸にテコ入れをする
コスプレは、今のりゅうびのライブ衣装を模したものに変更
ただし、本物よりはチープにしておく
そしてマイカップ持参者には、くじ引きをしてもらう
当たりは次回購入時にコスプレちょううんと握手できる権利を得られる
いわゆる握手券だ
コップのコストも減るし、リピーターも一定以上出てくるだろう
更に、リラックスティーに加えて、元気ドリンクもメニューに追加した
こっちは、ライブ前にりゅうびに用意しているお茶として販売している
もちろん実際にりゅうびに出している
(飲んでいるかは不明だが)
そして、つまみも出すことにした
どうも乾物はどこでも一定量売られているようで、ちょうひさんに集中して集めてもらっている
日持ちがして比較的軽いこういった商品が売れるのであろう
つまみになりそうなのはドリンク屋に回し、残りは商人に卸している
乾物は原価も安いし、袋などに入れれば大量に持ってこれるし、腐りにくいので在庫廃棄の心配が少ない
売値を上げるために、現代の知識を合わせて炙りを加えたり、一口大に小分けにしたり、ミックスさせたり、味を向上させたりと飽きられないように研究も加えた
ちょっと工夫するだけで、乾物は驚くほどおいしくなる
ただの保存食や、安易な塩分補給手段として見るなんてもったいない
乾物だって立派な食材だ
閑話休題
他に公募の屋台スペースを三倍に広げ、場所代を売り上げ変動制にした
これならあまり商品を持っていない商人も屋台を出してくれるだろう
少し売り上げは下がるかもしれないが、商人にはどんどん参入してほしい
屋台収入もそうだが、結果として商人がお金を稼げば、巡り巡って町が潤う
更にライブ会場の空き時間でオークションを開催している
商品は
りゅうびのライブ中にストラップを身に着けてもらっていたストラップ
当日の演奏スケジュールが書いてある木札(サイン付き)
配り余った最前列の席
当日りゅうびに用意したお菓子の余り
などなど
とにかく、借金を返したい一心で、ひたすら金儲けをした
一日3公演やったおかげで、チケット売り上げは一週間3回の時の7倍
グッズの生産量はあまり上がっていないので、2割程度増収しただけだったが、ドリンク屋は握手券やメニューの増設、その上毎日3回公演の為、売り上げは一気に10倍以上になった
公募の屋台もスペースを広げ、料金設定を変えた分少し心配していたが、ちゃんと全ての区画が売れ、収入も上がった
オークションは言うまでもない、信者の力はすごい
よく見知った顔の人たちが多数参加していた
りゅうびは2週間で42公演、最後までしっかり客に笑顔を振りまいていたが、公演後眠りを邪魔したら殺すと言って、1日引きこもってしまった
まぁ一番の功労者だからな、ゆっくり休んでほしい
かんうさんやちょうひさんも相当大変だったはずなのに、今日も生き生きとライブのマネージメントや筋トレに精を出している
この人たちの本当に人間なんだろうか
よく働いてくれたと言えば、ちょううんは本当に頑張ってくれた
開演のずっと前から仕込みをし、終わって客が帰るまで販売、その後の片づけ、次の日の準備、合間に俺の手伝いと八面六臂の大活躍だった
やまだ達官僚も人参で釣ったとはいえ、増えた小沛の人口に合わせて様々な政務によく働いてくれた
この二週間、大きな問題も起こることなく大量の収入を得ることになり、ライブも連日超満員の大成功、いい意味で俺の予想を大きく裏切る形の結果となった
最終公演の2日後、俺は小沛の主要メンバーを集めて会議を開いた
ライブに思いを寄せてこっちを全く見てくれないかんうさん
牛を担いでスクワットしているちょうひさん
等、平常運転な異常な人たちも何人かいるけれど、大半は自信と期待に満ちた目で俺を見つめていた
俺は全員をじっくり見まわし
そして、ゆっくりと膝をつく
手は前の方に肩幅に開いて置き
頭を大きく下げる
いわゆる土下座スタイルを取る
それから大きな声で一言
「申し訳ない、借金が3倍に増えた!」
「「「はぁあああああ!?」」」
会議室に怒号が響いた
かんようさんの存在を忘れていたそこの君
恥じる必要はないのだよ
彼の影の薄さは天下一品
作者もすっかり忘れていた
さて、かんようさんが目立つ日が来るのか
それは誰も(作者も)わからない