第三十一話 しゅしゅんとろしょく
「なははははは、おーよく来たなロリっ娘に胡散臭い軍師よ。私はしゅしゅん、気軽にお姉さんと呼んでくれ!」
あー、なんかすごいテンション高い人が出てきたよ
しゅしゅん将軍はすうせい将軍の上司なんだから、結構な年齢だと……
「おいおい、そこの胡散臭い軍師、君が何を考えたか知らないが、それを言葉にしたら後悔するよ」
そう言って、しゅしゅん将軍は先程までとは打って変わって鋭い表情でこーめーを睨む
こっちの世界の女性は思考を読めるのか
命が惜しいこーめーは、それ以上考えるのをやめた
「それがいいわ。それで、えーと、そこのロリっ娘あなたが大将ね」
「おい、さっきからお前が言ってるのはあたしの事か? 」
しゅしゅんの言動に対して、りゅうびから怒気の籠った声がする
「そうだが、何か気に障る事を言ったか」
挑発的な笑みでしゅしゅんはりゅうびを見返す
「きさま「おい、お前、我が主たるりゅうび様に何という口のきき方だ!」」
りゅうびが何かを言う前に、かんうがしゅしゅんに詰め寄る
「なんだい、口のきき方がなってない護衛ね。将軍に対する礼儀というものは無いのかしら」
「ふん、年増に払う礼儀など持ち合わせておらんわ。私が信奉するのはりゅうび様ただ一人」
「おいガキ、今なんつった」
しゅしゅん将軍とかんうの間で一発触発の空気が流れる
あーこの展開は想像してなかったわ
かんうさん連れてきたの失敗だったな、しゅしゅん将軍がこんな感じの人物とは……
てっきり穏やかな爺さんの将軍だと思ってたら、とんでもないのが出てきたな
後ろの方でちょううんがギュッと俺の服を握る
たとえ素手でもここの護衛はかんうさんとちょううんでなんとかなるだろうが、結構まずい
りゅうびも完全にかんうを煽ってるし
スパンッ
不意にしゅしゅん将軍の後ろに現れた人物が、しゅしゅん将軍の頭をぶったたく
「この愚か者! はぁ、こうなるなら話すんじゃ無かった。りゅうび、お前もその男をとめなさい」
「なんだおっさん、邪魔をするんじゃ……」
「げっ、かんうやめろ! 」
「りゅうび様、しかし」
「やめろというのが聞こえないのか、そいつは知り合いだ」
「りゅうび、私を知り合いとはつれなくなりましたね。あなたの師だと言うのに」
「ふんっ、あたしはちゃんと卒業したんだ。もう一人前だ、だから子供扱いすんなろしょく」
「はぁ、相変わらずですね君は、まぁ良いでしょう。さて、この場はこのろしょくが預かります。不用意な挑発も、争いも禁じます。破ったら身分に関係なく懲罰の対象になりますからね」
ろしょくと名乗った人物は手をパンパンと叩き、その場を治める
ふー
こーめーは大きく息を吐き出し、ひとまずまずい状況が回避できたことに安堵した
にしても、りゅうびの師匠か、随分偉い人みたいだけど
人柄はともかくとして、しゅしゅんの身分は将軍だ。すうせい将軍の上司という事を考えると、国の中でも相当高位の人物のはずである
「いたたた、もう、ちょっとした挨拶じゃない。全く本気にしちゃって」
バシン
「ぎゃ」
「はぁ、あなたも歳の話をされると冗談で済まさないでしょう。人にはそれぞれ譲れないことがあるんですよ」
「うー、口で言ってくれれば良いじゃない」
「その前に言うことがありますよね」
ろしょくがしゅしゅんをじっと睨む
「うっ、わかっってるわよ。りゅうび殿こーめー殿、冗談とはいえ気に障る事を言ってごめんなさい」
「ふんっ、わかればいい」
「りゅうび」
今度はりゅうびにろしょくの視線が飛ぶ
外見は気の良いおじいちゃんの様だが、その視線はあらがえない何かがある
「ぐっ、わかっている。あたしも軽々挑発にのって悪かったな」
「りゅうび様が謝るというのであれば……私も将軍に無礼を働き申し訳なかった」
あのろしょくって人やるな
意地っ張りのりゅうびに素直に謝らせるなんて
そして、かんうさんはこういう空気は読めるんだから、今後ほんとに自重してほしい、一騎当千の武将がすぐ挑発に乗ってバーサクモードとか交渉がやりにくくてしょうがない
「俺がついていながら、主君を止めることができず、申し訳ございません」
俺もしゅしゅん将軍に頭を下げる
軍師としてのけじめだ
ちょううんも無言で一緒に頭を下げていた
その姿を見たろしょくは満足に頷くと
「これで一件落着ですね。それと、自己紹介がまだでしたね。私はろしょく、今回の鶏巾族討伐軍の副司令兼現場責任者をやらせてもらっています。他の将軍達と同じ様に将軍の敬称で構いません。それと、平時は学校で教師もやっていましてね、そこにいるりゅうびは当時の私の教え子だったんですよ」
最初会った時りゅうびが言ってたすいきょー塾ってやつか
凄いな、全国規模の討伐軍副司令ってことは、軍のほぼトップじゃねえか
こんなすごいコネあるんなら使えばいいのに
まぁりゅうびの性格を考えると、そういうのは嫌いそうだしな
とりあえず、ろしょく将軍がいてくれて助かった
「ろしょく将軍、今回の事本当に助かりました」
俺は、改めてろしょく将軍にお礼をした