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第三話 岩が空を飛び、鶏が反乱をおこす

 まじで、生きてて良かった

 未だに、かんうさんは俺を生ゴミでも見るかのような目で見ているけど、気にしないでおこう


「で、りゅうび、具体的に俺らはこれからどうするんだ」


「ああ、そうだったな、あたしたちはこれからこの大陸でおきている大規模な農民の反乱を鎮圧しに行くんだ」


 農民の反乱?

 もしかして、三国志の始まりである黄巾の乱こうきんのらんのことか


「その農民の反乱て、黄色の被り物をした農民たちが各地で武装蜂起している奴か? 」


「こーめー、何を言ってるんだ? 彼らは確かに被り物をしているが、黄色じゃないぞ」


「小僧、知ったかぶりをするんじゃない」


「しかし、ちょうかくってやつが太平道っていう宗教を使って、農民たちを扇動して反乱を起こさせてるんじゃないのか?


「あのですねー、こーめーさん、ちょうかくって人が首謀者ってことはあってんですが、彼らは鶏さんの被り物をしてるんですよ」


「は? 」


「今、大陸では食糧難が続いていてな、いよいよ食べるものがなくなってきて、皇帝が大陸全土の鶏を焼き鳥にして飢えをしのげとお触れを出してな、それをきっかけに鶏を心から愛するチキンラブな連中が大陸各地で大々的なデモ活動を行い……なぜか多くの農民の心に響いたらしく、気づけば鶏=神になってしまったんだ」


 りゅうびがため息をつく


「まぁ、それもちょっとおかしな宗教でとどまってくれればよかったんだがな、彼らの考えに乗っかるあくどい連中が現れだし、三つの派閥を生み出してしまったんだ、一つはもともとの純粋に鶏を崇めるだけのグループ、こいつらは特に問題がない」


「二つ目が、鶏を言い分に無法を働くグループ、鶏が神なんだから、領主や皇帝に従わないといった連中、最後に三つ目だが、鶏が収める世の中、鶏天けいてんの世をつくろうと皇帝に反旗を翻したグループだ」


「で、これから相手にするのはどのグループなんだ」


「もちろん三つ目の鶏天の世を作るなんて世迷い事を言ってる連中だ」


「無法を働いてるやつらはいいのか? 」


「あいつらは、結局反抗する大義名分が欲しい盗賊崩れだからな、領主にでも任せておけばいいのだ」


「ん、そういや、りゅうびは領主じゃないのか? 皇帝の末裔とか言ってたし」


「ふんっ、あたしは今はただの義勇軍の棟梁でしかない」


「その割には、みんな結構いい装備してると思うんだが」


「ああ、それはあたしにはスポンサーがいるからな」


「スポンサーか、それはすごいな」


「あたしの美貌にかかればそれくらい余裕だ」


 りゅうびがいつものない胸を張るポーズをとる


「さすがりゅうび様です、私も劉好団りゅうはおだんの隊長として喜ばしいです」


 かんうさんの言葉を皮切りに兵士たちから歓声が上がる


 かんうさん、りゅーびをやたら崇め倒してるな

 やはり義兄弟だからなのか?

 というか、劉好団りゅうはおだんとはなんなんだ


「かんうさん、劉好団りゅうはおだんってなんですか」


 俺は恐る恐るかんうさんに聞いてみた


「ほう、小僧、劉好団りゅうはおだんが気になったようだな」


 しまった、なんか地雷を踏んだ気がする

 かんうさんが満面の笑みで話をはじめる


「あれは、二年前の寒い日だった


 私は日課の鍛錬を終え、一息つきに近くの茶屋へ向かう途中の曲がり角がりゅうび様との最初の出会いだった


 りゅうび様を初めて見た私は、凄まじい衝撃を受けた


 虎と素手で戦った時や、100人を超す盗賊団に囲まれた時など足元にも及ばないような戦慄が走った


 最初は神を見てしまったと錯覚するほどだった


 そして、気づけば私はりゅうび様にひれ伏し、永遠の忠誠を誓っていた


 それと以後私はりゅうび様のすばらしさを世に広めると決めたのだ


 そして、ここにいる同士たちが集まり始め、『りゅうび様大好き親衛隊』通称劉好団りゅうはおだんが結成されたのである


 これが、全60部劉好団りゅうはおだんの歴史『第1部誕生編』だ


 ではいよいよ立志編風雲編と一気に語っていくぞ……」


 とりあえず、かんうさんが変態であることはわかった

 なるほど、道理で兵士たちのりゅうびに向ける視線がやたらと恍惚としていたわけだ

 もはや鶏教の奴らとレベルが変わらんな

 かんうさんは、自分の世界に入ってしまったようで、立志篇だか風雲編だかを一生懸命何もない空間に語っている

 放って置くのも優しさだろう


「で、だいたい現状はわかったが、ざっと俺たちは30人程度しかいないが、それで鶏教のやつらと戦いになるのか?」


「ああ、この先に小さな砦があるんだ、そこにちょうどこの辺の司令官が視察に来ているようでな、その司令官を捉えて、手土産にしたいと考えている」


「なるほど、実力を示して、優遇して迎え入れてもらうためだな」


 中央に仕える軍は、官位がない人間を軽視する傾向があったらしいからな

 しかもりゅうびみたいな年端もいかない若い娘が率いた義勇軍など、このままいけば歯牙にもかけてもらえないだろう


「ああ、さすがこーめー飲み込みが早くて助かる。で、ちょうひ偵察の方はどうだったんだ」


「んー、ざっと警備の兵士と護衛を合わせて200人くらいかな」


「こーめー、どう思う? 」


「普通に考えたら、俺たちの約6倍、無理だろというところだが……」


 しかし、もしここが本当に三国志の世界でここにいるちょうひさんとかんうさんが、あの張飛と関羽なら、それに相手が宗教というわかりやすい理念を持っているならなんとかなるかもしれない


 ここは、どうやら三国志に近い世界らしいし、その主人公の一人であろうりゅうびの傍にいることは、俺が元の世界に帰る情報も手に入りやすいだろう。何より、今はりゅうびに頼る意外あてがないからな、なんとしてもりゅうびに出世してもらわなくては


「なんだこーめー、何かいい作戦でもあるのか? 」


 劉備が期待に満ちた目で見つめてくる


「そうだな、まずはちょうひさん、かんうさんの実力が知りたいな」


 かんうさんは、まだ過去から帰ってきてないようだから、俺はちょうひさんの方を見る

 見た感じ、格闘術でも使うのだろうか

 ちょっと見てみたい


「じゃあ、まずはわたしの力を見せるね」


「ちょうひ、派手にやってやれ」


「はーいりゅうちゃん」


 そういうと、ちょうひさんはトコトコと直径5m位ある大岩の前まで歩いていく


「いくよー」


 えいっ ← 大岩を両手でがっちりつかむ


 やあっ ← 大岩を軽々と持ち上げる


 とうっ ← 大岩がはるか向こうにぶっ飛んでいく


「は……」


 異次元の現象に俺は言葉を失った


「相変わらずの馬鹿力だな、ちょうひ」


「そんなことないよ、毎日欠かさず筋トレすればこれくらいできるようになるよ」


 ちょうひさんは、女性として付いてるとこにはしっかり肉がついているが、腕や足はすらっと細い

 一体どこにそんな筋肉がついているんだろうか


 ちょうひさんの技にあっけにとられていると、首筋にひんやりとしたものが当てられた

 嫌な汗が吹きでる


「おい、小僧、人に話をさせておいて、聞いていないとは何事だ」


 後ろから話しかけられているので、かんうさんの姿は全く見えないが、凄まじい殺気ビリビリと伝わってくる


「えっ、いや、あの、そ、そう、りゅうびがこれから砦を落とす作戦会議をするぞって言うから」


 俺はとっさにりゅうびのせいにする

 ヤバイ、さすがに苦しい言い訳か


「そうか、りゅうび様が呼んでいたのではしかたない」


 かんうさんは勝手に納得し、俺から刃を下げた

 俺は九死に一生を得た

 本当にこの人は大丈夫なんだろうか

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