表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/46

第四十四話:二人で一緒

第四十四話

 研究室に住んでいる吸血鬼なんてアリスだけ……というのもあってか、NKK懲罰部隊が二十名、アリスの研究室へとやってきた。

 内訳は女性十九名に連絡人員の男性が一人だ。

 連絡人員は普段本部に居るのだが今日はついてきたらしい。

 脛に傷のある吸血鬼達には恐れられている人達で、優しい言葉で言うのなら『おしおき』もうちょっと危ない言葉を使うなら『落とし前』を着けにやってくるのだ。

 吸血鬼の中でも特に戦闘能力に秀でた者たちが集められ、逃げきった吸血鬼は数えるしかいないそうだ。

 恐怖の代名詞と言っていいだろう。

「ちわー」

 代表のサングラスをかけた女性がそんな挨拶をして部屋へと入ってくる。

「ノリ軽いっすね」

「大仁さんから頼まれて来やしたー」

 大仁さんと言うのはNKKの理事をしている人だ。父親が理事を退く際に仕事を丸投げ。

 本人は親の七光りは絶対に嫌だと騒いだそうな。

 しかし、理事を退いた隙を狙って険悪ムードだった他の種族が掌握せんと動きだしたため、仕方なくトップとなった。

 まぁ、なんやかんやそれからあって、最初は彼を否定していた吸血鬼連中も見事にいがみ合いを沈めたため、嫌がる大仁さんを無理やり理事にしてしまったらしい。その後も、世襲制度反対の筆頭候補として賛成派と激突……NKKが真っ二つになってこれに乗じて私闘も繰り広げられたんだと。

「夢川さんもアリスさんといつまでも同部屋って言うのは嫌じゃないっすか? 大仁さんが聞いてくるように言ってました」

「何で?」

 俺ではなく、アリスが睨むように相手を見ていた。

「だって、自分の空間が欲しいでしょう?」

「お兄ちゃんとわたしは付き合ってるんだもん」

「それっすよ、それ。付き合っているのは既に周知の事実っすけど、男と女の関係が長引く秘訣は喧嘩した時の対応っすよ」

 俺の存在は完全に無視した状態で懲罰部隊のお姉ちゃんは続ける。

「男も一人になって頭を冷やしたいんす。でも、ほら、ここは研究室っすからね。夢川さんは自分の家というわけじゃないから外に出るしかない」

「それはそうだよ。ここはお兄ちゃんの家じゃないもん。わたしの部屋だよ」

 そうだけどさ。わざわざ繰り返して言う必要は無いだろ。

「そう、そして、夢川さんが廊下を歩いていればおそらく……十中八九、他の吸血鬼の研究室に連れ込まれますよ」

「え?」

「夢川さんはどんな時でも他の研究員の人を手伝っているっす。性別問わず、吸血鬼だからって一切垣根を作ったりしないっすからね」

 他の懲罰部隊の人達もうんうんと頷いていた。

 褒められて少しだけ嬉しいけど、本部勤めの懲罰部隊の人達が何故知っているのだろうか。

「男は凹んでいるときに女性に癒されると……ころっと落とせるっす」

「……そうなの?」

 疑惑の視線が俺へと向けられる。

 これはよくない兆しだ。アリスは表情に出やすいタイプだし、こちらがフォローしなければ案外騙されやすい。

「アリス……喧嘩は何故起こると思う?」

「え? お互いの我がままを通すためだよね」

「そういうことだ……懲罰部隊の皆さん、さっきの話はとりあえずおいておくとして、この部屋はあくまで仕事場であって生活の場所じゃないと言いに来たのでしょう?」

 これまた部隊の人達がうんうんと頷く。

「ま、そう言う事っす。あ、夢川さんが住む場所に困っているのならNKKの管理している住宅があるっすよ。そこで一人暮らしをしていいと大仁さんが言っているっすから」

「……なるほど。考えておきますね」

「了解っす。じゃ、目途が立ったので自分らはこれで失礼するっす」

 懲罰部隊が居なくなるとちょっと不機嫌そうなアリスと俺が残されるわけだ。

「お兄ちゃん、わたしのこと嫌いなの?」

「嫌いじゃないよ。好きだよ」

「じゃあ、何でさっきの話に乗り気だったの?」

 ぶーたれているアリスの頭を撫でる。

「ここは仕事場だろう? さっきも言ったけれど、生活の場じゃない。シャワー室だっておまけで付いているようなものだし、料理も作り辛い。そうだろ?」

「わたしは別に不便じゃないもん。お兄ちゃんが居なくなったら誰がわたしを起こしてくれるの?」

 どうやらアリスが勘違いしている事に気がついた。

「アリス……あのな、俺はお前と一緒に住むつもりなんだぜ?」

「え?」

「多分、懲罰部隊の人達も俺を追い出せばアリスがひっついて出て行くと思ってるんだろ。もしかして、俺と一緒に住むのは嫌なのか?」

「お、お兄ちゃんがどうしても住みたいのなら……いいけど?」

 言葉はつんけんしている癖に、満面の笑みを浮かべている。

 やれやれ、素直じゃない子だな。

「アリス、俺に付いてきてくれ。一緒に住もう」

「……じゃあ、ちゅーして」

「じゃあって何だ」

「してくれなきゃ行かない」

 ぷいっとそっぽを向いた我がまま娘の肩を掴み、唇を重ねる。

「も、もっと……」

「ああ、そうだな。ここでこういう事出来るのももう少しで……」

 扉の方になんか、いた。

「なるほど、これっすか」

「え?」

 扉の所には先ほどの懲罰部隊の人がいたのだ。ニヤニヤした表情が気にくわない。あらあらと手を口元へ持って行っているのも気にくわないね!

「いやー、実はいちゃいちゃしているのがうるさい、どうにかしてくれって意見が本部の方に来てるっす。じゃ、二人とも明日にはこの近くのアパートに引っ越してもらうっすね」

「お兄ちゃんと一緒の部屋だよね?」

「大丈夫っすよ。思う存分いちゃいちゃしていいっす」

「これまで抑えてたからね」

「……」

 これまでも充分ひっついていただろうに……俺はため息をついてアリスを見た。

「なぁに?」

「何でもないよ。アリスとまた一緒に生活出来ると思うと胸が熱くなったんだ」

 俺はアリスの頭に手を置いて撫でてやった。

 今日はいちゃいちゃは控えておこう……道理で最近、お隣の人が俺たちを睨んでくるわけだ。

 よくわかって居ないながらも嬉しそうに目を細めるアリスの頭を撫で続け、俺はお詫びのお菓子は何がいいか考えるのであった。


アリス編総括です。さて……この作品の前作(今作とはあまり関係ないですが)では吸血鬼由乃が冬治にひっついてきていました。しかし、今作では海外へ行っているようですね。最後まで結局出てきませんでした。我儘娘が更生させられたかと言うとそうでもないようで、甘えるようになって結局我儘と言う結果になったのはまぁ、いいかなと。駅前の話も手の及ばぬところとして終わらせられたのでこの作品の中ではアリス編が一番まともかなーと……メインに据えればよかったかなーと……思ったり、思わなかったり。さて、それでは全部終わりましたね。ここまでお付き合い、感謝です。作者スペックがもう少し高ければ皆様にドキドキや、わっくわく……妖怪のよさなんかをきちんと伝えられた、そう思います。毎回、思いますからね。もっと満足いく作品を作りたいものです。感想、ありましたらお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ