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第三十二話:駅前神社跡地考察組

第三十二話

 俺の胸に飛び込んできたアリスは泣き疲れたのかそのまま寝てしまった。

「やれやれ、まるで子供だぜ」

「どう見ても子どもでしょ」

 間山椎子にからかわれながら、俺はとりあえずリバーサイド満開の住居へと向かう事にしたのだった。

「あれ、鍵が開いてる……」

「泥棒でも入ってるんじゃないの? 長い間いなかったんだよね」

「……あり得るな」

 大方、アリスが鍵をかけ忘れたのだろうと中へ入る。

 案の定、部屋が何者かに荒らされていた。

 金目のものを探していたようで、食器棚などもすべて扉が開けられていて中の物が床に落ちている。

「うわー、本当に泥棒に入られているね」

 わくわくしているのか嬉しそうな間山椎子とは対照的に俺はこれ、誰が掃除するんだよと肩を落としていたりする。

「片づけ大変そう」

「そうだな」

 預金通帳の無事を確認してほっと胸をなでおろす。

「ねぇ」

「どうした?」

 椎子がリビングまで行くと首をかしげている。

「布団が敷かれているよ」

「……布団? マジかよ」

 アリスは棺桶で寝るタイプだ。

「もしかして泥棒か不審者がここで生活していたんじゃないの?」

「でもアリスがいる……とは思えないか。俺の布団だしなぁ」

 俺の部屋へ通じる扉を開けてみるとこれまた派手に荒らされていた。鍵まで壊されていたのでどうやら椎子の言っていることは本当かもしれない。

「ともかく、アリスを寝かせてくる」

「うん」

「お前はテレビでも見ててくれ」

「ラジャー」

 椎子をリビングに残し、アリスの部屋へと向かうとそこも悲惨だった。

「下着泥棒って線は……無いか」

 ブラジャーだって必要のなさそうな……というか、スポーツブラってやつだし……でも、対象外だったようだ。アリスの下着は盗られていない。

「ふぅ」

「すー……」

 静かに眠り始めたアリスの頭を撫で、俺はリビングへと向かうのであった。

「何か飲むか?」

「コーシー」

「はいはい、コーヒーね」

 お湯を沸かしてコーヒーを椎子の所へ置く。すると、脇へどかして俺に座るよう促した。

「あー、そうそう。冬治君、警察に連絡入れられているよ? 結構探している人が多いんだってさ」

「ははぁ、そりゃまた面倒な事になったもんだ。一カ月いなかったのはまずかったか」

 椎子は首を振っていた。

 それでは一体何の事なのだろうか。

「ううん、こっちの冬治君じゃなくて羽津学園のほうの夢川冬治君が行方不明だってさ」

「……」

 なるほどね。

 どこかからこの町に俺がいると言う情報が流れたのだろうか。

「誰にもばらさないから詳しい事、教えてくれない?」

「……いいぜ。その代わりと言っちゃなんだがね。駅前神社跡地があったば場所の宝具が一体何なのか……知っているのなら教えてほしい。椎子は地元民だろ?」

 地元民で透明人間だから何かしら知っているだろう、そんな気持ちで訊ねると間山椎子は首を縦に動かしてくれた。

「宝具かどうかわからないけれど、多分、石だよ」

「石?」

「そう、石。無機物の石なんだけどね、神になりたいとかそう言った事を考えながら触れたりすると透明になれるんだってさ。ある見えないものを持って石に触れると俗に言う神の世界へ行けるみたいだね」

「見えないもの?」

「いしだよ」

 いし……もしかして、意思?

「なんだよ。ダジャレか」

 俺の言葉に苦笑して間山椎子は続ける。

「ま、そういうことなんじゃないのかな。でもね、たとえあちらの世界に行ったとしてもどうやらある血筋じゃないとあっちの世界からこっちの世界に干渉できないみたい」

「なるほどね」

「冬治君にはどんな世界が見えていたの?」

「俺? 俺は人の居ない世界だったよ。音もしなくて触れる事も出来なかった。匂いもしなかったな」

 思いだそうとしてももう、あの世界の事はあやふやだった。

「多分さ、あの駅前のどこかに宝具とやらがあるんだと思う。神の事を調べようと思えば石が反応してあっちの世界へ飛ぶ仕組みだよ」

「……マジか」

 何だかすげぇブービートラップに引っかかった気分になるな。

「うん、元は懲らしめる為に作られたものらしいからね」

「どういう事だ?」

「よくはわからないんだけど……」

 間山家に伝わる事だと前置きをして椎子は話をし始める。

 彼女の話を要約すると、透明人間になる事が出来た村長達のことを妬んだりしないように宝具を作った。

 何でも、その当時の村長達の言葉は神の言葉に等しいと言っていたそうだ。しかし、全員が聞くわけもない。

 何か特別な事をやっているのではないか……そうやって村長たちを怪しむ連中が力を欲する可能性を考慮し、自分達を調べられる前に意識を宝具へと逸らすためだったらしい。

 宝具があれば透明になれるのだ。もっとも、村長たちの血筋でなければこちらの世界に干渉することはできないので居なくなったも同然だが。

 そして、村長たちはいなくなった者は神の言葉を信じない者として扱われるのだろう。

「懲らしめるためなら行方不明になった人達、戻って来たんだよな?」

 その割には駅前に少し人がいたような気もする。

「懲らしめるってさっきは言ったけど、ニュアンス的に見せしめの方が強かったと思うよ。連れて帰ってきた人の話は聞いてないし、そっちで調べても大体同じ結果でしょ?」

「……そうだな」

 罰は罰……おいそれと戻せばあちらの世界の情報を持ってきたと吹聴しまくり間違いなく邪魔な存在になる事だろう。

「もう一ついいか?」

「うん」

「小僧が消えたこの地方の話、知ってるよな?」

「まぁね」

 宝具の事を知っていたのだから当然知っているようだ。

「牛に見えたって石見から来た旅人が言ってたはずだ。あれは?」

「ああ、その当時の神の偶像として牛を模したものだったんだよ。多分、その少年の中では神として創造したのがその偶像……だから、牛みたいになったんじゃないかな。普通の人間の格好で神の言葉を聞く人なんて殆どいないからねー。神の鍵穴に人間を突っ込んでも開かないから石が人間を一瞬だけ神にして神の世界に放り込んだんじゃないの?」

 ちょっと強引な見解だった

 まぁ、間山椎子も別に民俗学者ってわけじゃないからしょうがない。

 もし、神様がいるとしても人間なんかじゃ計る事の出来ない相手なのだろう。隣にいる相手の考えている事すらわからないんだ。一体何者なのかさえ分からない物を理解するのは相当な時間がかかるだろう。

「あっちの世界の人を椎子が助けたらどうなるんだろうな」

「さぁ。それはわからない……ある話が伝わっててね、村長の事を探ろうとした人がいたんだ。当然、彼はあっちの世界にほいほいされちゃった」

「その人はどうなったんだ」

「実は恋人がいてね。その恋人が村長側の人間……間に立たされることになった彼女は迷わずあちら側の彼の元へと行ったんだって。こちら側からは透明になったまま……娘を探しに村長たちもあちらを覗いてみるが、結局見つけられなかったんだってさ。それから、こっちの世界に現れたあちらの世界の存在を還す人が現れるようになったそうだよ。それが、今で言う西羽津の巫女だってさ」

 そんな裏事情があったなんてなぁ。

「じゃ、次は冬治君が話す番だね」

「え? 何の事だよ」

「とぼけないでよ。冬治君の……失踪する前の夢川冬治という人間についてだよ」

「そうだな。えーと……俺は羽津学園って所に居たんだ」

「ふんふん」

「そこで吸血鬼の事件に巻き込まれたと言うか……ま、吸血鬼絡みの事が起こってな。その途中で同居していた吸血鬼が倒れたんだよ」

 間山椎子は興味なさそうな顔をしつつ、コーヒーを飲んでいた。

「端折るけど……俺も責任を感じてその子を助けるため日本吸血鬼協会に入ったんだ」

「何故その協会に入ることでその子を助けられるの?」

「俺の血は吸血鬼にとって特別らしいからな。ぎりぎりまで血を採取する代わりにその子を助けてもらったんだよ。諸々込みでまだ借金している状態だからそれを返そうとしているわけ」

「その子は助かったの?」

 その質問に俺は微妙に頷くしかない。

「記憶が無くなったけど、身体は元気になった」

「そっか。その子も吸血鬼なら一緒に暮らしてればよかったんじゃない?」

「俺がその子と顔を合わせていたら記憶を戻す可能性があるんだってさ。なんでも、手術中は麻酔なしで色々とやったらしいから……精神に異常をきたすとか、色々と言われた。本当かどうかわからないけれど、それが本当だったら嫌だからさ」

「……コーヒー飲んでいるときにそう言う話、やめてくれない?」

「悪い」

 お前が聞きたがったんだろうに。

 さて、そろそろ部屋を片付けようかね……そう思った矢先、隣の部屋でごそごそと音がし始めた。

「アリスが眼をさましたみたいだ」

「そっか、それなら帰るよ」

「もう帰るのか?」

「だって、ここにいたら片づけ手伝わされそうだから」

 首をすくめる椎子に俺はため息をつく。

「片づけ、嫌いか」

「まぁね。あとさ……もしかしなくても居なくなるよね? そういった事情があるのならまだその協会にお世話になるんでしょ?」

「まぁな」

「そっか、いい友達になれると思ったんだけれど……これでお別れかぁ」

「そうか? 携帯に勝手にアドレスとか番号とかいれている癖に」

「そうだったね」

 じゃあね、それだけ言って椎子の姿は消えてしまった。

 透明人間に少しだけ憧れるけれど、今度透明になるのは死んだとき、幽霊になったときだけでいいや。

「お兄ちゃん?」

「どうしたか?」

「よかった……夢じゃなかった」

 部屋から出てきたアリスは何故だか泣いているのであった。


こんにちは作者の雨月です。民間伝承のつもりなのですがそういうのを調べている方からは『え? これって民間伝承か?』と首をかしげてしまうかもしれません。まぁ、これを読んでくれた方の中に民間伝承に興味をもった方がいれば幸いですが……何度も考えることもなく、ほぼ最初から決まっていたような話のため、どこか破綻している部分がないかはらはらしてます。ないですよね? ゲームでいうと○シリーズをプレイすればもっと興味を持っていただけるかと。日本には多種多様な妖怪がいますが、やはり大本は神様、そして中には人間が含まれていたと作者は思います。個人的な意見です。差別だったり、村八分されていたり、神秘的な何かをもっていればそのように見られた時代もあったことでしょう。人づてに話は変化していき、いずれは話の中で妖怪変化、といったところでしょうか……と、もっときれいにまとめるべきことなのですがね、旨く伝えられる自信が無いんですよね。さて、アリス編もですが話は終盤へ、冬治とアリスはとんずらをかまします。

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