第二話:雪の光
第二話
男性教師用のトイレへと向かう。
「……まずはあの子の事を探ってみるか」
先ほど出会った少女の事を頭の中に考えながら、トイレの戸を押す。
「あちゃー、パッドが落ちちゃった……よいしょっと」
「ん?」
「え?」
中には女子生徒がいて、パッドのようなものを拾って胸に詰めていた。
俺の方を見て、固まっている。俺はすぐさま、外のプレートを確認して青色の男さんを確認して少しだけほっとする。
しかし、叫ばれればどの道同じか。
「あ、あれ? もしかして夢川冬治お兄さん?」
目の前の女子生徒は別に俺の知り合いではないと思う。知らない顔だ。可愛い感じのツーテールで、眼がくりっとしている。
「違った?」
「いや、そうだけど」
「うわー、懐かしいなぁ。ぼくだよ、ぼく。小千谷柊……覚えてない? っと、うわっ」
「あぶねぇっ」
近寄ってきてこけそうになった少女を助けようとする。
そうしたら俺もこけてしまった。
「いたた……怪我は?」
「無いよ。ありがとう、お兄さん」
「どういたしまして……だ」
少女に馬乗りされると言う普通では体験できない事だ。男子トイレではないだろうな、他の場所でならあるかもしれないが。
「でも、なんでお兄さんがこんなところにいるの? ここ、女学園だよ」
お兄さんと言われるのも何だか変な感じだ。
「俺の知り合いなのか?」
「うん、そのはずなんだけどなぁ。本当に覚えてないの? そこまで子どものころじゃないと思うんだけれど」
「うーん、そういえば俺、小さい頃に事故にあったんだよ。それで、記憶が無いのかもしれない」
俺の名前を知っているのならおそらく、そこら辺であった知り合いなのだろう。
「そっか、それも仕方ないね。数日しか遊ばなかったから」
「そうか」
「それでも、またこうやって会えたんだから嬉しいよ」
「ところで、えーと」
「小千谷柊だよ。柊でもいいし、柊ちゃん、もしくは柊君でもいいよ?」
何だよ、柊君って……。
「柊でいいか?」
「うん、お兄さんがそれでいいならいいよ」
「早速質問があるんだが……」
「何?」
「ここ、男性用のトイレだぞ?」
きょろきょろと見まわして柊は後頭部を掻いた。
「あはは、そっか、そうだよね」
内装なんて一発でわかりそうなもんだ。
「何と言うか、よく言ってたからぼーっとしてたら入っちゃうんだよね」
「え?」
「あ、っと……そういえば遅刻してるんだった。ごめん、もう行くね」
「あ、おい……」
そのまま柊は行ってしまった。
「……そういえば、パッドも転がってたよな? 僕って言ってるし……うーん?」
もしかして、柊君、のほうが適切な呼び方……だろうか。