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寒い夜に

 冬の天楚てんそ市の夜は、長く寒い。

 北西から吹き付ける冷たく乾いた風が家屋の隙間という隙間から禎理ていりに向かって押し寄せて来、容赦なく体温を奪ってゆく。

 あまりの寒さに、禎理は薄い掛け布団をしっかりと身体に巻きつけた。

 が、しかし、どうあがいても寒さは全く手加減せずに禎理に襲いかかってくる。

 禎理は身体をきゅっと縮こませ、寒さに耐えるしかなかった。


 これくらいの寒さならいつもは平気なのに、今夜はやけにこたえる。きっと風邪をひいているせいに違いない。そう、禎理は感じていた。

 熱の為か思考がうつらうつらしている。

 こんな寒い日にはよく、母や祖母が灼いて熱くした石に布をぐるぐると巻きつけて作ってくれた『あんか』を抱かせてくれたっけ。まだ小さかった頃の暖かな想い出に、禎理の目から知らず知らずのうちに零れたのは、涙だったのだろうか。


 頭痛がする。身体の節々も痛い。

 眠ろうとしても眠れなくて、禎理はうーんと寝返りを打った。

 と。

 不意に、禎理の目の端に黄色いものが飛び込んでくる。

 その形状、は。

〈……『あんか』だ!〉

 力を振り絞って無理矢理掛け布団から手を出し、目の前のそれをしっかり掴んで懐に入れる。

 昔の『あんか』よりこころもちふわふわしていたが、そんなことは全く気にならなかった。

 その温かさが心地よい。ほこほことした気持ちに包まれながら、禎理はいつの間にか眠りに落ちていった。


 翌朝、禎理の風邪は全快した。

 が、その後二、三日、今度は模糊もこが鼻をぐすぐすいわせていたようだった。

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