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序
毎年、風花が舞う季節になると思い出すことがある。
それは、禎理が十三になる年の晩秋の頃のこと。
流行病で親兄弟を全て失い、森で独り暮らしていた禎理の前にある日突然、一組の男女が現れた。
男の名は魔王数。そして女の名は珮理。
二人が持っていたのは、二つの目的。
一つは、人間の横暴さと残虐さに困り果てている魔物達を助ける為。
もう一つは、そのころ天楚市で騒がれていた『吸血鬼』から、その力の源となっており、この世界の伝説になっている『力有る石』の一つである『吸血石』を取り戻し、消滅させる為、だった。
一つめの目的は、魔王数達の活躍で見事に果たされた。
そして、禎理自身が珮理の体と魂ごと『吸血石』を消滅させる事で、第二の目的も無事に、果たされたのだった。
この事件からすぐ、禎理は天楚市内のとある武術道場の内弟子となり、そして十八の年に冒険者となった。
好奇心と探求心、そして自分が守りたいと思うものを守るという誓いと共に。