Brandnew my love
毛むくじゃらな怪物は手からドロドロと血を垂れ流しながら立っていた。
怪物の足下にはボルトが突き刺さったポンが倒れていた。白い犬の側らには、見覚えのある猫が狂ったように泣いていた。
地獄のような光景だった。
だがおれの目には地獄など見えなかった。
おれの目は、ボロボロとなった加藤の姿しか映らなかった。
おれは何かを言おうとしたが、唇が震えて声にならなかった。
「舞島!」
毛むくじゃらな怪物が叫んだかと思うと、おれにむかってボウガンを構えた。ボウガンにセットされたボルトは、発射されたと思った瞬間には、おれの胸に突き刺さっていた。
ボルトが突き刺さった場所から血がドクドクと流れた。
おれはそのまま倒れた。
「殺したぞ。舞島を殺してやったぞ!」
毛むくじゃらな怪物は狂ったように嗤った。
おれはゆらりと立ち上がった。
毛むくじゃらな怪物は、立ち上がるおれを見て呆然としていた。
「ボルトで撃たれて、何故立ってるだよ」
おれは答える代わりに、腹に忍ばせておいたまな板を捨てた。
ボルトは、まな板を貫通していたので、大量の血が流れた。
胸の傷は激しい痛みを発しているはずなのに、何も感じなかった。
床に転がっているまな板を見ると、勇者の文字が刻まれていた。
〝何が勇者だよ〟
「たった一人の女が守れねえで、なにが勇者だよ!」
おれは毛むくじゃらな怪物を殴り飛ばした。
怪物の顔はあっさりと取れた。
三森の顔が現れた。おれは三森の顔面を殴り飛ばした。
「殺す!」
おれはお前を必ず殺してやる。