エース
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「馬鹿じゃないのこれっ!!」
合成樹脂製に響く打撃音と共に少女の声が響く。
赤眼に映る20インチほどの液晶画面が揺れる。
「やめなよ、アヤ。机叩いてもプログラム直んないよ・・・」
冷静な口調で声をかける白髪の少年。
「あんた、私に意見するわけ?!クロウ!!」
肩までかかる紅髪をかき揚げ、後ろから覗き込むクロウと呼ばれた少年を睨みつける。
「ゴメン、でもここをこうすれば・・・ぼら」
赤面するアヤを尻目に身を乗り出し、キーボードを叩くクロウ。
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光陵高校、パソコン部の一室。
灰原クロスロード 通称:アッシュクロウ<灰被りの鴉> プログラムが好きなゲームオタク。
山本綾 通称:魔女 アルバイトでモデルもこなす美貌の持ち主だが学校では性悪女としても有名人。山本財閥のひとり娘。
1時間ほど前、もうすぐ完成直近のプログラムを思案しながら部室に向かっていたクロウ。
「おい、クロウ。魔女見なかったか?!」
怒りに震える、ラグビー部の部員達が立っていた。
「どうしたの、晴彦君。」
晴彦と呼ばれた部員は強健な体つきに反比例するかのようにヒステリックに騒ぎだした。
要は汗臭いと言う理由で部室を叩きつぶされたらしい。
見たらすぐに知らせてくれと、言い放つと彼らは卑猥な言葉を叫びながら走り去った。
クロウは表情には出してはいなかったが、プログラムのことしか考えていなかった。
が、部室の扉を開いた瞬間すべてが思考がフリーズする。
短いスカートから伸びた長い足を高らかに組み、クロウの特等席で仰け反る魔女を。
「クロウ、ヒマなんだけど・・・」
悪夢だ。高校入学時、席が隣だったという理由だけで何故か付きまとってくるアヤ。
2年に上がり専攻が違ったため、やっと離れられたと思った矢先の出来事であった。
「ちょっと聞いてる?ワタシ、今ヒマなんだけど・・・面白いことない?」
とりあえず、彼女の興味を満たせば帰ってくれるだろうと思い渋々簡単なプログラムを教えることになったクロウ。
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おもむろに朝から起動しておいたメインのパソコンのモニターを切り替えようマウスを動かす。
ブルーの画面が映し出される。自立プログラムにより計算中にフリーズしたのか。
それともケーブル関係か。はやく復旧しないと。
どこからともなくクラッシク音楽がながれてくる。
「ちょっと、クロウ邪魔。」
マウスをもったまま固まったクロウを押しのけ机の下に潜り込むアヤ。
「あっ、もしもし、着いた?じゃ今から行くわ。」
右手に携帯電話を、左手に充電器を持ち出てきた。
恐る恐るアヤが出てきた穴を除くクロウ。メインのパソコンのコンセントがあるべき場所から雑草のように抜かれていた。
その瞬間、クロウの脳内はシャットダウンする。