Ⅵ.試合当日(3)
相変わらず、夢見すぎだなぁ〜
少女漫画みたい( ・∀・)
後半戦もそろそろ終わりを告げる。
点数は相変わらず同点。勝ってもいないし、負けてもいない。
北島大先生の雷は果たして落ちるのだろうか?
北島大先生の方を見る。
何だか気難しい表情というか、微妙に額に血管が浮いているような感じだ。
どうやら、引き分けでも雷が落ちるらしい。
負けよりは少ないと思うが、やっぱり落ちるよな…。
「晋一…北島大先生が殺気を向けてるような」
「ああ、多分勝たなきゃ死ぬぞ」
「やっぱり…はぁー…」
「死ぬ覚悟をしねーとな」
『ああ』
俺が呟くと、部員全員が相槌を打った。
去年は鼻でスパゲティ完食だったな…。食べきることができたが、鼻血が止まらなかったのを覚えている。
今年は何をされるのか…。
「やべえ!あと少し!」
「とりゃ!陸!」
「了解!」
ボールがこちらに回り、ゴールを目指す。
最悪なことに、ここからゴールへは結構距離がある。
上手くパスを回していかなければならない。
「うっしゃ!晋一!」
「おう!」
陸からパスが回り、ゴールを目指す。
敵がきたら味方にまたパスを回す。
「日向!頼んだ!」
「あ、はい!」
こうすると、かなりいいチームだと思う。多分、北島大先生が脅さなかったら、こんなに白熱した試合にはならなかっただろう。
もう一度、北島大先生の方を見る。
優しく微笑んでいる姿がはっきりと見えた。
「やっぱ、北島大先生は最高の先生だ」
静かに呟く。
ゴールが目の前にある。
これで、去年のような惨劇を防げる!
「晋一!」
「何で俺!?」
と、何故かボールが回ってきたので、先ほどと同じ、THE・ミラクルスタースーパーシュートを繰り出そうとした。
そう、繰り出そうとした、その時。
視界に柚兎左が映った。
別に普通に見ていたなら、ただの「あ、いた」って感じで軽く済ませれる。
だが、そう軽く済ませれる感じではなかった。
バックを背負って、群れから離れたところで立ち止まって見ていた。
―――泣きながら
「晋一!」
「っ」
陸の声で我に返り、目の前を見ると、相手が目の前にいた。
急いで近くにいた陸にパスをした。
「行け!俺の素晴らしきシュートォ!」
陸は、そう叫びながらゴールに向かってボールを思いっきり蹴った。
ものすごい速さでボールはゴールに入る。
ボールがゴールのネットを突き破り、壁にぶつかった。
それと同時に、試合終了のホイッスルが鳴った。
得点はもちろん、四対三で俺らの勝ち。
『きゃあ―――っ!』
『うっしゃぁ――――っ!』
校庭に歓声が響き渡る。
女子たちは手を合わせて、飛び跳ね、部員たちは抱き合って喜ぶ。
北島大先生は、腕を組んで目を閉じ、頷きながら笑っていた。
本当、たかが練習試合がとてもすごい試合になった。
「晋一!いえーい!」
「おう!お疲れ!」
タッチして笑みをこぼす。
「晋一、どうしたんだ?さっきはボーっとしちゃってよー。ビックリしたぜ」
「ああ、悪ィ。さっきそこで…」
柚兎左…。
「そこでどうしたんだ?誰もいねぇけど…って晋一!?」
さっき、柚兎左が立っていた場所に走る。
無論、そこには柚兎左はいなかった。
荷物を持っていたから、校門の方か?
そう思って、今度は校門を目指し全速力で走る。
「はぁ…はぁ…」
何故自分は、柚兎左を追いかけているのだろう。
泣いていた理由を知るためか?
それとも、自分を無視していた理由を聞くためか?
多分、前者に当てはまるだろう。
そして何故、心の中でさっきの柚兎左の泣いた顔が残っているのだろう。
印象的だったからか?
今までそんなに気にしていなかった奴なのに、今じゃアイツのことしか頭にない。
校門に着いたが、柚兎左の姿はどこにもなかった。
「晋一…、どしたんだよ…急に走り出しやがって…。むっちゃ疲れたじゃ…ねぇか…」
陸が追いかけてきた。
俺は、陸の方を振り向かずにただただ校門を見つめていた。
頭に残るは、柚兎左の泣き顔。
本当に、何故俺はこんなに柚兎左のことを考えているんだ?
「意味わかんねぇ…」
強い風が吹き、残り少ない桜の花びらが宙に舞った。
本当に完結できるのかな…(-_-;)