ⅩⅩⅩ.不思議
遅くなって、本当にすみませんでした!
にしても何なんだ?この問題は……。
図形が無茶苦茶入り組んでて面積なんて求めらんねーよ。
角度って分度器じゃダメなのか?
てか、この方程式面倒なんですけど……。
所謂、全てがハイレベルだ。図形についてもっと理解していれば簡単に解けるんだろうけど、生憎俺にはそんな博士並の知識は備わっていない。
さてと……解くかな。去年習ったことの応用がほとんどだし。地道にこつこつ考えればいんじゃね?
って昨日の夜に考えていた。徹夜で頑張ってやっと全部解けた。合ってるかは分からねーが、空白が埋まってれば大丈夫だろう。
本日の数学は四時間目。
その前にあった音楽で答えを見せ合ってた奴もいた。たぶん真面目にやったのは、クラスの一割もいないだろう。
俺……頑張ったなぁ。
「なあ晋一、数学やったか?」
「やったぜ。陸は?」
「へへっ。もちろん!!……やってねぇよ」
「だろうな」
陸はテンションアゲアゲだったが、やってないと言った瞬間、周りの空気が黒くなった。
何だ?こいつ……大丈夫か?
「てかよー……こんな難しいヤツなんかやってられねぇよ……。何だよコレ、俺を殺す気か?脳が死ぬっつーの」
「一応やったんだな」
「ああ。全く分かんねー……」
「俺もわかんねー」
「いや、お前解けてんじゃんかよ。俺なんて式もまともに書けてねぇぜ?分かったのは角度の問題くらいだぜ……方程式も一応できたけどな。何だよ……こんな複雑な微妙なところの面積とか分かんねえよ!!」
「……同感」
……柚兎左はやってきてんのか?
覚醒してから、完璧女になったけど……結構な奴らが頭を悩ませたこの問題を解くことできたのか?
そう思ったとき、数学教師が扉を開けた。
「き、起立っ!!」
「おっ、威勢がいいなぁ」
わざとらしく言いやがって……。
何かすげえムカつくな。
『お願いしまーす』
「おう、お願いします」
あー…面倒くせぇ。
「じゃあ、昨日の宿題の答え合わせをする。今から配るから赤ペン用意!筆箱はしまえよー」
回答が回ってきて、貰った瞬間に自分のプリントとのにらめっこが始まった。
いつも騒がしいクラスのくせに、今は地味に静かだ。
俺もみんなと同じようににらめっこを始める。
正直、答えが分数だからかかなり面倒くせぇ……。
はぁ……これがあと五十分続くのか。
数学教師が教卓で何やらごちゃごちゃやってるのを確認して、俺は柚兎左の方を見る。
あいつは、退屈そうに頬杖をついて、次々にペンで円を書いているようだった。
つまり…正解しまくっているということか?
「今回は本当に難しい問題だと思う。万が一、一問も合ってなかったとしても、これから挽回していけばいい。まだ習ってないような公式もあるからな」
と、先公は笑顔で言う。
第三者から見れば、とてもいい教師だと思うだろう。
しかし、当事者からすればムカつく以外の何物でもない。
あー…もう疲れた。
一度、思考を数学から離して別のことを考えるようにした。
まぁ、真っ先に思い浮かべられたのは柚兎左のことで……。
ああなる前のアイツを思い出していると、なんだか悲しくなってくるものだ。
前は暴力的でも、明るくていい奴だったのにな……。
あの時にカラオケなんて行かなきゃ、こんな風にはならなかったのか?
……チクショウ……。考えれば考えるだけ、マイナスなことばかり出てきやがる。
にしても……本当にアイツはアイツなのか?
さっき見たときとか、円しか書いてなかったし。
いくらなんでも、頭よくなりすぎだろ。
一体、何があったんだよ……柚兎左。
その日の数学では、柚兎左が全問正解したことで、先公の頭は一杯だったという。
そろそろ展開させていこうと思います。