ⅩⅩⅥ.白い空間で
七夕!
…のはずが、私の地域では雨がザ――――っと降ってました↓↓
星、見たかったなぁ…
真っ白い空間を進む。
時々、花の絵や風景画が飾られていた。
でも、それ以外は真っ白。
扉も壁紙も床も天井も何もかも。
清潔感がとてもあるように思えるが、こんな空間に一人でいたら悲しくなるような気がする。
「七○七……ここか」
止まった病室の表札を見ると『桜井 海月』と書いてあった。
どうやら個室のようだ。
寝てるとは言っていたが、さすがに黙ってはいるわけには行かない。
一応ノックして入る。
「海月」
「……なに?」
返事が返ってきて、驚く。
いち早く真広が海月の元へ行き、陸はゆっくりとそっと扉を閉め、俺はゆっくりと歩いた。
「起きてたのか?」
「今起きた」
「悪ィな。起こしちまって」
「自然に目が覚めただけだから、大丈夫だよ」
うわー……ラブラブオーラが見えるぜ。
真広も意外と、友達と恋人は大切にするタイプなんだよな。
いや、恋人は今知ったけど。
チラリと陸を見ると、普通……どこか羨ましそうな感じがした。
それでも、あの空気をぶち壊さないという寛大さに素直にすごいと思った。
「晋一も陸も、どうしたの?」
「えっ、ああ。一応見舞い。元気か?」
「うーん……。まあ、一応元気…かな」
曖昧な返事をする。
腕に施されている包帯が痛々しい。
教室の時は長袖だったから分からなかったが、痣やかすり傷が白い肌のせいで、とても目立った。
「晋一だってケガしてんじゃん」
「これは母さんのせいだ」
「痛くないの?」
「今は全く。触れば痛いけどな」
「お大事に」
クスクスと笑う海月。
どうやら、本当に元気になってきているようだ。
海月が笑うのをやめて、軽くため息をつくと、病室は沈黙に包まれた。
……。
「海月」
「ん?なに?」
「聞いちゃいけないと思うが、何があったんだ?」
「……」
「晋一!」
「いいよ、真広。大丈夫。具体的に何が聞きたい?」
「その傷……」
「ああ、これ?……殴られたときに、かな?」
「誰にだよ!?」
「知らない人」
「海月、確か保健室で柚兎左がどーのこーのつってなかったか?」
「柚兎左……。まぁ…関係はあるんだけど…」
海月は口ごもる。
事の真相は海月しか知らないのだから、海月に聞くしかない。
俺たちは、黙って海月を見る。
言葉を選んでいたようだが、一つの言葉を思いついたらしく、小さい声でつぶやいた。
「柚兎左は、私にとっては原因。私にとっては加害者。でも柚兎左は被害者。あの人たちは紛れもない加害者。更なる原因は両親。……かな?」
「両親ってどっちの?」
「柚兎左の」
『…………』
柚兎左は加害者であり、被害者である。
海月は被害者。
あの人たちとは、海月を殴った奴らだろう。
そいつらは、加害者。
言っては何だが、柚兎左の両親は首謀者。
……さっぱり分からない。
真広は両手をポケットに入れて、壁にもたれていた。
表情は目を閉じて、眉間にしわを寄せていた。
陸は、はてなマークを浮かべていた。
腕を組んで考える素振りをしては、アホみたいな顔をして分からないと目が言っていた。
つまり、理解してない俺たち。
「あれっ?分かんない系かぁ」
「悪ィ」
「俺もわっかんねー」
「大まかなことは大体分かった」
「……仕方ないなー。……いいよ、話すよ」
俺、陸、真広の順で言うと、海月は頷きながら苦い笑みを作った。
そして窓の外……いや、もっと遠くを見つめて言った。
「今朝の出来事を」
財布の通気性が良くなってきた……(-_-;)
やべぇな