ⅩⅢ.変貌
雪だーヾ(^▽^)ノ
大粒だったから積もったぜーヽ(≧▽≦)/
柚兎左が学校に来たのは、試合から一週間後。
傷だらけで、そこら中に包帯が巻かれたり、絆創膏が貼られたりと実に痛々しい姿で登校してきた。
クラスメート全員が驚愕した。
傷だらけのクセして、いつも通りの雰囲気。
傷のことについて聞いてみれば、転んだと話を逸らされる。
海月に話を聞いても、「うちにも分からない…。どうなってんの?こんなの初めてなんですけど」と驚いた様子だった。
もう、泣いた理由とかより傷の理由の方が知りたい。
両方とも教えてくれないだろうが、一応聞いてみるとしよう。
一人では気が引けるため、ムードメーカーで楽観的な陸をつれて、柚兎左の席の真正面に立った。
「ゆ、柚兎左。その傷どうしたんだ?」
「え?転んだらこうなった」
「転んだって……」
「話はそれだけ?」
冷ややかな眼差しと、冷たい言葉。
この空気…耐えられる奴は俺の隣にいる脳天気野郎の陸しかいないだろう。
目線を送ってみると、通じたようで空気を和らげようと柚兎左に話し始めた。
「てかどう転んだんだよ!俺でもそこまで傷つかねーぞ!」
「ガラスの破片が散らばってたからこうなった」
「ガラスぅ!?災難だったなぁ!女の肌にゃ傷はつけちゃいけねぇってのに」
言い方が酔っぱらったオヤジ臭いと思うのは俺だけだろうか。
「だよね…。最悪だっての」
「嫁のもらい手がなくなったら俺のところに来いよ!俺がもらってやる」
さり気なくプロポーズしたな。
柚兎左は嫌だという表情をして鼻で笑い、若干表情が和らぐ。
「そりゃどーも。猿でもいいこと言うじゃん」
雰囲気も和らかくなり、張りつめたプレッシャーもなくなる。
改めて思う。
脳天気とは素晴らしい。
脳天気は世界を救う。
「猿ぅ!?」
「なに驚いてんだよ…。そっくりじゃんか」
「マジでぇ!?晋一もそう思ってたりすんの?」
「瓜二つじゃね?」
「まぁじぃでぇ!海月もそう思っちゃったり?」
陸は近くにいた海月に問う。
海月は機嫌を損ねたのか、眉間に皺を寄せて、陸を睨む。
「うっさい!猿!」
「…ぐずっ…俺泣いていい?」
「存分に泣」
『却下!便所で泣いてこい』
「らしい」
「……うがぁぁぁぁぁぁ!」
俺は存分に泣けと言うつもりだったが、海月と柚兎左が声を揃えて冷たく言い放った。
二人のその軽蔑の視線は、不良の頂点でさえも土下座して謝るだろうってほど恐ろしく、迫力があった。
陸はおそらく男子便所に一直線だろう。
泣きにではないと思う。
ノリで行ったんじゃないか?
「あはは!赤松君戻ってきなよ!」
『赤松君!?』
「どうかした?」
柚兎左の周り…、少なくとも今の言葉を聞いた人たちが柚兎左の言葉を復唱した。
陸も教室の扉を勢いよく開けて、みんなと同じく復唱した。
どんな連携だよってほど、きれいに重なった声であった。
柚兎左は一人訳が分からずに困惑しているようだった。
「おまえ頭ぶっ壊れたか?」
「どうして?高橋君」
『高橋君!?』
またもや声が重なる。
柚兎左が苗字で呼び、尚且つ君付けなんてびっくり仰天だ。
いや、いきなり呼び方が変われば誰だってびっくりするだろう。
こいつが苗字呼びするのは、嫌いな奴と先生と気にくわない先輩。
つまり嫌われた…という認識を俺たちはしてしまう。
「ゆ、柚兎左。クラスの男子を全員言ってみ?」
「えっと、赤松君、天城君、伊東君、小野君……」
番号順に男子の名前を言っていくが、全員苗字呼び。
つまり全員嫌ってるのか?こいつは…
「矢野君、山本くん、渡辺くん…。で?」
「うん……。ちなみに女子の一から五番の人は?」
「麻耶、奈々子、朱美、私、由利歩」
「………………」
結果、男子は全員苗字呼び+君付け。
女子は名前で呼び捨て。
どうなってんだ?
「……晋一、陸、ついでに真広!D組行くよ!早く来る」
「ああ…」
「おう!」
「何で俺も巻き込まれんだよ!」
「何か文句ある?」
「あるっつーの!俺にはかんけーねぇ」
「うちら友達でしょ?」
「そういう意味の関係じゃなくてだな!」
「うっさい。来いっつったら来い」
強制的に真広を連行し、俺は若干面倒くさいと思いながら、陸はノリノリで海月の後に続いて、D組に向かった。
今更だが、こうなったことを激しく後悔中。
何でかって?
面倒くさそうだからだ。
何か直感的に、変なことに巻き込まれたような気がした。
最近学校がつまらない悩み。
疲れるし暇だし……
はあぁぁぁぁぁ(´□`;)