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桜吹雪  作者: 亜梨朱
11/32

ⅩⅠ.優しい兄貴

風邪引いた…ぐずっ(;´д⊂)

ちきしょー…声出ねー…


柚兎左目線ッス(^-^)

「柚兎左ちゃん…、こんなに大ケガして…。どうしたの?」

「すみません。藤本さんしか頼れる人いなくて…。お金はきちんと払います。おいくらですか?」


私は、制服のポケットから財布を取りだし、中のお札を覗かせた。


中はざっと二万円くらい。

母親の財布から少しずつ抜き出したから全部千円札。


藤本さんは、恐らく私のお金と思ってるのだろう。


慌てた様子で首を横に振る。


「いいよいいよ!いつも息子がお世話になってるんだから、このくらい…」

「いえ、そういうわけにはいきません。それに、お世話になってるのは私の方です。勉強教えてもらったり、相談相手になってもらったり…」

「いいんだよ。それよりこんな時間に大丈夫なのかい?」


現時刻は七時半。


父親の言うとおり迷惑だと思ったけど、私が言ったとおり、頼れるのは藤本さんくらいなのだ。

学校は休むって言ったけど、ちゃんと連絡してくれるのだろうか。


全く…、藤本さんの家に生まれたら、きっと充実した生活を送れただろう。


みんなが言うように、子供は親を選べない。

人というものは不平等だ。


そう考えていると、いきなり病室の扉が勢いよく開けられた。


「久しぶりだな、柚兎左ぁ………って、どうしたんだよ!?その傷!」

「京介…!!」

「転んだのか?誰かにやられたのか?誰だ?俺が冥土に送ってやらぁ…」

「あー…自分で滑っただけ」


ていうか、京介の目が本気だよ!

瞳孔開いてるし。




ちなみに、今入ってきたのは藤本さんの一人息子、藤本京介(ふじもとけいすけ)


大学生で、私としては兄みたいな存在だ。


知り合ったのは最近だし、年上だけど呼び捨てで名前を呼べるほど仲がいい。

――と思ってるのは私だけかもしれないけど


「どこで転んだらこうなんだよ…。ガラスの破片かぁ?これ…」

「あは…は。花瓶とお皿の破片で……」

「…そうか。無理せず俺に相談しろよな。バレねぇように抹殺してくっから」

「犯罪だけは起こさないでよね」

「…………………ぉ、起こさねえよ!」

「今の間は何?てか何で目をそらすの!?」

「医者になるやつが怪我させてどうするんだ…。本当にコイツは医学部なのか?」


藤本さんは、手を額に当て首を横に振った。

まるで呆れているみたいだった。

いや、完璧に呆れていた。


「京介…学校は?」

「今日は休み。てか柚兎左は学校遅刻じゃねえか?」

「……今日は、休む」


行く気力がない。


中三だし受験がどーのこーのって言うのは分かってる。

でも、何となく高校なんか行かなくていいんじゃないかなって思う。

いや、だめだけどさ。


「終わったよ」

「帰るか?」

「やだ。帰りたくない。コンビニ行く。ジャ○プ立ち読みする」

「補導されっぞ」

両親(あいつら)が恥かくだけ。私は関係ないし」


警察共に無様に謝ればいいんだわ。


京介はしばらく何かを考える素振りを見せ、黙った。


そして、一瞬動きが止まったと思いきや、私の方を見た。


「………その傷親につけられたのか?」


真剣な眼差しを向けられたから、嘘をつくことはできなかった。


まあ、黙ってる理由なんかないから、嘘つく必要もない。


「そうだけど」


素っ気なく返す。


真剣な表情のまま、私から藤本さんに目線を移す。


「親父。柚兎左を家に泊めていいよな?」


何でそういうことになるの?

いや、嬉しいけどさ。

申し訳ないじゃん。


「柚兎左ちゃん、今日はうちにお泊まりしよう」

「え…でも」

「君の両親をひどく言うようで悪いけど、家に帰ったらまた傷が増えるんじゃないかな?全身傷だらけにされて、普通に過ごせないだろう?」

「……いいんですか?」

「いいとも。ぜひ、泊まってくれ」


こんなに有り難いことはない。


てか、思惑通りって感じだ。


「お世話になります」


そう言って頭を下げる。

体を少し動かすだけで痛みが走った。

治るのかな?この傷は


「柚兎左、来いよ」

「あ?どこに?」

「俺ん部屋。読むんだろ?本」

「読む!藤本さん、手当から何まで本当にありがとうございます!!」


座っていたイスから立ち、お辞儀をしてから京介の後に続いた。











「えーと…この辺に専用本棚が…」

「雑誌だらけだね。単行本はないし」

「単行本は柚兎左がいっぱい持ってんだろ?今何冊だ?」

「約三百…いや、四百か?」

「破産しねぇのかよ……」

「しない。十八禁もあるけど読む?」

「読まねーよ!!ほら、今週号」


私は京介から本を受け取ると、彼のベッドに座って読み始める。


やっぱマンガは神だわ…

読んでるだけで幸せ…


「うわー……えぇ…マジかよぉ…」


自然と感想が口からでる。


「………………柚兎左…とりあえず、がに股はやめよーぜ?制服丈長ェけどさ。女としてその格好は……」


女として……


私は本を閉じて、京介を見る。


「ねぇ…。私って存在意義あんのかな?正直言うと、自分はいらない人間のような気がする。よく、神は必要のないものは生み出さないって言うけど、神としては人間を生み出したことが最大の過ちだって先生がボヤいてた。世界に、自然界に後見してる人を過ちなら、私はそれ以下の…がらくた(ジャンク)。綺麗事じゃ私は救われない、誰かに殺してもらった方がずっと楽で救われた気分になると思うんだ」

「………そういやー、おまえは綺麗事が嫌いだったな」

「綺麗事並べたって、何にもならない。所詮、その場の慰めにしかならない」


京介は、困った顔をして頭をボリボリ掻く。


困らせること言っちゃったのか。

ここは謝るべきかな。


「ごめん、今の話忘れて」

「んな、すぐに忘れられねぇよ。柚兎左の悩み、俺が解決してやっから」

「…………かっこつけ。解決できる訳ないじゃん」

「お前なぁ……俺なりに「でもさ!」?」

「ありがとう、ね……」


精一杯の笑顔を作り言った。


京介は、そっぽを向いて「ああ」と言い、部屋から出て行った。


私も、雑誌のページをパラパラめくって、先ほど読んでいたところを探して、読書を再開する。




「無理しやがって……」

「お兄ちゃん」




そんな京介と私の呟きは誰にも聞こえることなく消えた。


そういえば、所々に名古屋弁が混じってますね(^^;)

申し訳ございません<(_ _)>

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