開けないでください
短編です
人は、死ぬと、幽霊になる。14歳で初めて知った、一つの真実。
まさか自分が学校帰りの事故で死ぬなんて思っても見なかった。完全に信号無視の車が悪いんだけど、私は即死だった。
くそ~、今回のテストはいい点とれてると思ってたのに・・・と考えて思った、私の未練、しょぼいな。まぁ、未練っていう未練はあるにはあるんだけど、今いわゆる幽体ってやつで、自分のぐちゃぐちゃになったカラダ見ちゃったし、あれは助かる見込みなんて無いでしょうと、素人の私でも分かるほどの損壊。希望を持つ方が無理というものだろう。
それよりも、私は気づいてしまった。この体結構便利かも。試しに、近くを走っていた車に乗り込んでみると、ドアも開けずに入ることが出来た。しかもその車の行き先についていくこともできる。
鍵がかかっている車も、家も、どこにでも出入りができる。だって幽霊のカラダだから!たまに、入れない家があるけど、よく見るとお札とか、お守りとかがあって、なんかそう言う力で守られてるみたいに、そもそも近づけない。お札って、効果あったんだ。
さて、そうとわかれば、まずは家に帰って、日記などを処分しようかな!後学校行って、テストの点数見てこようかな!いや、やっぱやめよう。もう見てもしょうがない。
ウキウキしながら家に帰ったけど、両親はリビングで泣きわめいているし、珍しく引きこもりだったお兄ちゃんが両親をなだめてる。なんだ、部屋から出られるんじゃん。
そんで日記は、結局触れられなくて処分はできなかった。PCの方は触れたけど、消し方がよくわからなくて断念した。くそう、もし誰かがこの日記とPCの中身に気づきそうなときは、速やかにこの場を離れよう、恥ずかしくて死んでしまう。もう私死んでるけど。
しばらく家の周りで遊んでいると、両親と親戚が喪服を着て集まって車に乗り込んだ。あぁ、葬式か。
車に一緒に乗り込んで、会場に向かう。なんか、変な感じ。
クラスメイトや友人たちも会場に集まってきた。みんな結構集まってくれるんだなぁ。
葬式が始まると、することが無い。暇だからお坊さんの頭でも叩こうとしたら、手がすり抜けてしまった。その瞬間、お坊さんの思考?みたいなものが見えた気がした。
なにこれ、面白い!
お坊さんに限らず、両親や、友達の頭に触れて、思考を読み取る。みんな一様に「死んでしまって悲しい」「早く帰りたい」「今日の夕飯何にしよう」みたいなことを考えている。すごーい!死ぬとこんなことできるんだ!
参列者の中に、ぽろぽろと涙を流す彼がいた。泣いていても格好いいなぁ・・・。でもこれって彼の思考を除くチャンスじゃん!
頭に手を触れると、思考に鍵がかかっていた。え、なにそれ、すご、ガード硬い。
何度か触れてみたけど彼の思考の鍵を開けることはできなかった。すごいな思考に鍵かけられるなんて。ちぇっ詰まんないの。
じゃぁ・・・せっかくだから、彼の家に遊びに行こう!なんだ、死ぬのも結構楽しいじゃん!
葬儀が終わって、泣き崩れる両親を横目に、私は彼に憑いて行った。“好き”とかそう言う言葉を伝えることはできなかったけど、なんとなく、距離感が近い気がしていたから、きっと彼も私の事好きなんだと思うんだよねぇ。ちょっと申し訳ない気もするけど、彼の家覗かせてもらお~!
彼は迷わず、自室に上がる。きゃっ、男の子の部屋、初めて!
彼がクローゼットを開けると、そこには、彼の私物のほかに、壁一面に貼られた私の写真が沢山あった。
え・・・ナニコレ・・・。
「なんで・・・なんで事故なんかで・・・」
そう言って写真に向かって涙を流す彼。
あぁ、私の想像した好意とは違うけど、やっぱり彼も私の事好きだったんだ・・・ストーカー気質なのは初めて知ったけど。
彼の背中にごめんねとつぶやいて頭を撫でようとしたら、彼の思考の鍵が開いていた。そうか、自室だから自分の思考に鍵をかける必要ないもんね。
じゃぁせっかくだからちょっと覗かせてもらおうカナ!
——「俺ならもっと綺麗に殺してあげられたのに」——
あ、そ・・・わぁお・・・




