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サイダー

九龍街の創作キャラ、ぶっきらぼうなラムと過去に訳ありなハイリーのショートストーリー集。

「ハイリーの過去」でハイリーとラムの出会いの後日譚。

ラムは店内の椅子に背中の女性を降ろすと、入れ替わりでシュエガオが背中に寄り掛かった。

まず、自分はこの天宮や総会のオーナーをしているラムで、こっちはシュエガオだと名乗り、女性の名前を聞いた。

だが女性は口を閉ざしたまま。

「まあ、いいさ。一息したら好きなところへ行けばいい」

するとラムは背中にシュエガオを乗せたまま立ち上がると、開店準備をし始めた。カウンターのところでラムが腰をかがめシュエガオが布巾掛けをしたり、ラムが瓶酒をシュエガオに手渡しそれを冷蔵庫に入れたりと、まるで遊んでいるようにも見える。そんな二人をしばらく目で追っていた女性だったが、見慣れない生活用品や調度品に、うまく言えないけど何かが違うと改めて思った。


「ここはどこ?」

女性がようやく言葉を口にした。

「どこって…さっき言ったろ、九龍城だ。あんた移民か?」

香港に住んでいれば誰もが知っているスラム街だが、ここを知らないとなると外の国からやってきた者だろうということが推察できる。

「…九龍っていうことはここは香港ということ?」

「そうさ」

「え?私…さっき…」

女性は慌てて部屋を見渡している。目は冷静を保っていたが、口元は明らかに動揺していた。

「ここにしばらくいるのはいいが、面倒だけはご免だ」

ラムやシュエガオもしかり、ここには訳アリ人間がたくさん集まってくる場所。いちいち踏み込んで過去を聞く気はない。助け合うのは構わないが、面倒ごとだけは誰もが避けたい。

ラムは言葉少なげにそういうと、カウンターの掃除が終わったのか、女性に、緑色の瓶に入ったサイダーを出してやった。そしてシュエガオが瓶にストローをさしてやる。

女性は飲まずにストローをつまみ、それと瓶を交互にまじまじと見た。シュエががこうやって飲むんだと教えてやると、ようやくストローに口をつけサイダーを飲み始めた。が、すぐに口を離し、ケホケホと苦しそうに咳をする。

「な、何なの、これ!口の中が痛い…!」

それを聞いてラムは大笑いをした。

さっきまでむすっとしたぶっきらぼうな表情だったラムが、一瞬で緩む。それを見た女性は不思議と心が和み、やはりどこかで見た顔だと思った。

「口に合わなかったか。そしたら、シュエ、オレンジだしてやれ」

シュエガオは冷蔵庫からオレンジの入った瓶を取り出すと、栓を開け女性の前に置いた。そして女性をじっと見つめた。

「名前、何?」

「…ハイリー」

相手が子供のせいか、それとも心が和んだせいか、すんなりと名前を口にした。

と、次の瞬間ハイリーの前にラムがしゃがみこんだ。

「無礼者!」

ハイリーは驚き、おもわず裸足の足でラムを足蹴にした。

「お嬢さんのわりにずいぶんと足癖がわりぃんじゃねえ?ほら、足の手当てしてやるから」

そして、自分の足の上にハイリーの足を乗せろと指をさした。

「なッ…!」

男性の膝のに自分の足を乗せる?想像をしたハイリーは思わず真っ赤になる。ところが、シュエガオはあっけなくハイリーの傷ついた足をつかみ、ラムの膝の上に乗せた。

こうしてハイリーはしぶしぶラムに足の手当てをしてもらうこととなった。

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