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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第二章 文化祭編

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第37話 タガログ語で話すのやめてもらっていいですか?

 夏休みが終わり、二学期の学校生活が始まった。

 

 そしてあの旅行以来、変わってしまったことがいくつかある。


 まず月宮さんとの毎晩の通話が半義務化された。

 この変な生活習慣の追加によって、彼女の睡眠不足はほぼ改善されつつあり、彼女は授業中はもちろんのこと10分休憩も、机に突っ伏しなくなった。

 

 ……尚、この通話のせいで配信時間が多少削れてしまい、リスナー達の不安感を買うことになってしまう。

 が、私の睡眠時間に合わせてもらわないと、こっちが困るため仕方ない。


 最初は通話する時、スマホから聞こえてくるシオンちゃんの声に、時々思考が停止していた。

 毎晩配信後の通話のせいで、若干シオンちゃんとしてのテンション感でこられるので、私の脳がそれを処理しきれず、ちょこちょこ麻痺していたのだ。

 

 でも流石に1ヶ月も続けてるとだいぶ受け入れる事ができた。

 まぁ勢いとはいえ、元々は私から彼女にした提案でこの通話は始まったのに、『実は無理でした』なんてことになったら洒落にならなかったので、なんとかなってよかったと思う。


「はぁ……」


 もちろん今でもシオンちゃんのことは大好きだ。

 だけど......たぶんもう、架空の生き物にドキドキすることは無いのだろう。

 

 そして月宮さん相手に対するドキドキも、意地でも押し殺すことにしている。

 何故なら、もし彼女との関係性が無くなった時のことを考えたら、とてもドキドキなんて悠長なことをしてられないから。

 そんなことに一喜一憂していては、縁を切った後のダメージが、大きくなってしまうのが分かりきっている。


「小学生の時から成長してませんね、私」


 私はあの時に受けたいじめで学んだはずだった。


 人間社会もとい、全ての動物は強者が正義で弱者が悪。

 弱肉強食は世の常で絶対不変。

 変わることのない世界の真実。

 

 法律が許す範囲で悪行を成すことができるなら、それ以上に楽しい人生はない。

 その事実を小学生で学ぶことができたというのに、まだ倫理観に縛られ私は月宮さんに付き合うことを強要できてないし、でも離れることもできてないし、臆病でなよなよしてしまっている。

 それに自身の倫理観は維持するべきだという、間違った価値観はまだ、私の頭の中を巡っている。

 

 ……更に言ってしまえば彼女の都合の良いように関係性が維持されている。

 いま私が学校に通う現状のメリットを挙げるなら、月宮さんと過ごす時間がちょっとだけ増えるのと、後ろの席から彼女を見ることによる目の保養程度だろう。


 いまだ学校を辞めていない時点で、残念ながら小学生の頃から私の頭は、何も変わってないのが確定しているのが、なんとも悲しい現実である。

 

 弱者は弱者のまま。

 弱者は強者に搾取されるために存在する。

 

「ねぇねぇ〜、成長って何? 何がどう成長してないの? 胸の話だったりする?」

「……私も貴女のようになりたかったって話ですよ」


 クラスメイトの輪の中心にいる月宮さんを遠目で眺めていると、隣の席から弦巻さんが私のこめかみをコツコツと突いてきた。

 ウザいことこの上ない。

 

「えー。でも私の身長147cmだよ? キミと比べたら胸も身長もだいぶ小さいと思うけどな〜」

「…………」


 ……ちなみにこの人。

 何を思ったのか分からないけど、9月に入ってから教室への出現頻度が増えだした。

 一学期ほとんどいなかったくせに。

 しかもそれを後押しするように、二学期の席替えでは私の隣同士になってしまった。

 

 私は一番後ろの端の席で喜んでいたというのに、これではマイナスの方が大きい。


 そんな時、視線が突き刺さるように感じた。

 

「見られてるよ?」

「……見られてますね」


 私達が二人で談話?してる中、月宮さんはクラスのいろんな人に囲まれてる状態で、チラチラと私のことを見ていた。


「今さらだけど気づいてる? しおっちが気を使って休憩時間、キミに近づいてないこと」

「貴女に言われるまでもないですよ」


 月宮さんはもともと学校にいる全ての時間を、私以外のクラスメイトに割り振っていた。

 今はその割り振りのうちの朝の登校時間、昼休憩、放課後と私がもらってるが、それ以外は他の人の関係維持に彼女は割いている。

 

 人間関係は大事なので、もちろん私はそれを仕方ないと理解しているし、これ以上口を挟むつもりもない。

 むしろここまで私が時間を奪っているのにも関わらず、私に野次が全く飛ばないようにカバーしつつ、月宮さん自身の人間関係をここまで維持しきっている彼女の度量に脱帽ものである。


 まぁそれはそれとして……


「こう言ってなんですが、私以外と絡んでる時点で浮気なんですよ」

「え?」

「10分休憩ももちろん私はお話したいですし、一緒にいたいです。けど……それを確立させるならまず他の人達との人間関係を、全部切ってもらわなきゃいけないですよね」

「…………茜っち、超コワ〜」


 まぁこれは弱みを握られている私が、何様目線で言っているのか?……という話でもある。


 月宮さんはありがたいことに、今私に依存してくれているので、弱みなんか効力がないんじゃないかとは思うけど、ちょっとまだそれを判断するには時間が足りないかもしれない。

 

 私がシオンちゃんの愛一つで千葉に飛んだように、感情というのはどういうベクトルで爆発するのかは分からないのだ。

 しかも彼女はハサミで私を刺そうとしている前科があるため、まだ警戒しておかないといけない。

 とりあえずは約束の期間が終了するまでは。

 

「じゃあ今私はフリーだし、一旦茜っちの体は私の物でも良いってこと?」

「ハハ…………笑えない冗談ですね。早退して病院に行った方が良いと思いますよ」

「いやいや、私は冗談のつもりないよ? じゃあまずその証拠として、茜っちのほっぺにちゅ〜……」


 弦巻さんはそう言って目を瞑りながら唇を尖らせながら、私の頬にゆっくり近づいてきた。


「ど、どうかしたの、詩音?」

「…………なんでもない」


 それと同時に月宮さんが急に立ち上がり、彼女の背中から放たれるオーラが、刃のように鋭くこちらに突き刺さる。


 その突然の月宮さんの奇行に私は驚きながらも、私は他に誰にも見られていない隙を狙って、弦巻さんの顔面を思いっきりぶっ叩いた。


「キッッモ」

「ぼはぁっ!?」 


 叩かれてたじろいでいるところに、私は足を使って彼女の椅子を転ばせた。

 その影響で大きな音が鳴り、周りの視線が私達の方に集まった。


「い、いた〜い……」

「ま、まき(弦巻)ちゃん?! 急に倒れてどうしたの?!」


 弦巻さんは床に崩れ落ちたまま、大げさに痛がってみせる。


「それが……」


 彼女はチラリと、こちらを試すように見上げた。


「なっ――?!」

 

 私はその瞬間、ハメられたことに気づき、胸の内がとてもざわめいた。


 ……もしこのまま彼女が「茜にやられた」と口にすれば、私はその瞬間に加害者としてクラスの底辺に叩き落とされる。

 つまりまた虐めを受けることになる。

 

 彼女の嫌な顔からその未来が垣間見え、過去のトラウマがフラッシュバックし、私の呼吸が浅くなる。

 冷たい汗が背中を伝った、その時。


「アメ、大丈夫?! また()()()()()()が出たの? 今すぐ保健室に連れてくね?」

「え〜」

「つ れ て く ね?」


 月宮さんが割り込み、有無を言わさぬ力で弦巻さんの肩を支えた。

 そのまま彼女を連れ出していく。

 

 教室を出る直前、弦巻さんの口から小さな呟きが漏れた。


putang(この) ina mo(馬鹿が)……」

 

 という呟きが聞こえてきたのにも、寒気を覚えた。

 アレは私のお婆ちゃんの母国語で、怒った時に使う言葉のはず。

 私のお婆ちゃんと縁があるはずもない弦巻さんの口から、どうしてその言葉が出たのだろうか?


「ふ、ふぅ……。まぁそんなことはどうでもいいですね」


 今はとりあえず、月宮さんに助けられたことに感謝するべきなのだろう。

 

 私のこういう中途半端に出るようになってしまった暴力衝動も、そのうち抑えないといけない。

 たぶん、普段から隣にいる月宮さんの影響を受け始めているのだろう。

 弱者である私が、彼女の真似などして良いはずもないのに、何を勘違いしてしまったのだろうか。

 

 流石に今回は危なかったし、遠慮なくこういう事をするようになってしまったら、そのうち本当に警察のお世話になってしまう。

 自重しよう。




 ---


 


 なんて脳内反省会していたら、後日にちゃんと「ただの冗談じゃ〜ん? ビビりすぎー!」と面と向かって言われた。

 しかもいつもの発作とは?って思ったけど、どうやら学校を頻繁に休む理由は、病弱設定で通しているらしい。

 その馬鹿みたいな嘘と月宮さんのフォローによって、私は難を逃れる事ができたのだ。

 

 そしてあの人のそういう最低なところは、素直に羨ましいと思う。

 私も弦巻さんのように他人が傷つくのを気にしたりせずに、自由に振る舞いたかったものだ。

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