青龍、口が悪くなる。
殺し屋界の本拠地である殺し屋本部“イレス”はここ日本の浅草にある。
殺し屋という職業は日本が明治時代に初めた職業だった。
殺し屋ができた当時は政府にとって邪魔な人物や、戦争反対者を処分していたのだという。
歴史の教科書に載っている特高警察と共に仕事をしていたときもあったそうだ。
でも三十年ほど前からは“政府直属”から“政府公認”になり、政府と者と仕事することはなくなった。
まあ、そこが殺し屋界の強みと言っても良いのだけどね。
今現在、日本には1500人の殺し屋がいて、その中でも殺し屋界には三つの職種の人間がいる。
まず、一番人口の多い戦闘部隊。上からの指令を現場でこなす部隊。戦闘能力が抜きん出ている人たちが所属することが多い。イレスに所属している戦闘部隊員は一番隊、二番隊、三番隊に分かれていて、
戦闘スタイルから割り振られるという。
ちなみに私たち一家はフリーで所属していない。
そして、いつも多忙な補助部隊。私たちが戦った後の地を元に戻す役割や、情報を規定に基づき仕入れる部隊。
最後に、指令部隊。ここは補助部隊の集めた情報から各戦闘部隊員に仕事を割り振り、それを伝達する部隊だ。ちなみに、戦えないくせに嫌味な奴らが多い、私たちをキレさせる道のプロだ。
どの部隊につくためにも殺し屋本部にある学園に3年きっちり通わねばならず、そこで自分の戦闘スタイルを見つけたり、殺し屋の細かい規定を学んだりする。
そして全過程を履修すると殺し屋免許が発行され、部隊を割り振られる。
補助部隊員と指令部隊員はフリーとして活動することはできないが、戦闘部隊員はイレスにそのまま所属しても良し、フリーの殺し屋として働くも良し、私たちのように組としてチームアップしても良し、だ。
そして、私たちは日本中の嫌味を学んできたのか?というほど腹黒い上層部にお呼ばれしているのだ。
なにかやらかしたか?と考えても、やらかした記憶はない。
強いて言えば、冷蔵庫にあった玄武のコーヒーゼリーを食べたことぐらいしか思いつかないのだけれど…っ!
東京の人気観光地である浅草寺のお社の後ろにまわる。
後ろにはタイルが敷き詰められている壁があり、そこで決まっている順番にタイルを押し、地面が開ける。
地面が開け、下へ階段で下がると鬼のお面をつけた三人の子供が。
「ご要件は」
「こんばんは。影のイレスへ導きませ」
「御意」
三人にそこを通してもらい、私たちはイレス本部の上層部会議室へ入っていった。
まずはメンチを切るつもりで私が足で扉を蹴る。
その後ろを付いてくる白虎たちがドヤ顔をかましている。
大丈夫か、これ。と思うけれど、まあ上層部にはこれくらいしてやらないと。
ろくに戦うことのできない年取ったジジイとババアだけなんだから、刺激が足りないでしょうし。
「だっ誰だ!」
「はぁ、誰〜ってお前らが呼んだんでしょうよ。ついに頭までイカれちゃったか。あ、元々だったっけ?」
「…無礼ね、青龍。一番になれてない分際で私たちにそんな口をきいて良いの?」
周りの上層部からブーイングを受け、そのざわざわが一通り収まった時、会長が口を開いた。
殺し屋界会長、西園寺結衣。
肩つく程の黒髪でつり上がった目。無駄に若作りしているのを私たちは知っている。
殺し屋は基本目が良いので、会長の染め残しである白髪がしっかり見えるのだ。
いやー、気まずい。
私たちが嫌われている理由がわかっているから、更に気まずい。
殺し屋は純日本人を重んじる傾向にある。
殺し屋界でいう純日本人とは、黒髪に黒い瞳、そして日本人の純血であること。最後のは絶対条件。
私たちは日本人の純血ではあるが、地毛なのに無駄に髪色のレパートリーがある。
それでまあ、厄介者にされることも多々ある。その主犯格は上層部だ。
青色に赤色、カーキ色に白色。黒色には程遠い。
それで学園時代にいじめられることもあったが、味方はいたし、今はさほど気にしてはいない。
だって時間の無駄だし、という楽観的主義がうちの基本だから。
「でも、あなたたちより私たちが強いことは明確ですよね。おわかりですかぁ?」
「…まあ良いわ。今回の件であなたたちに拒否権は無いのだし」
は?という至極間抜けヅラをかます男子ども。
いやいや、今敵陣にいるのよ?!何で弱み見せるような真似を…!
「どういうことでしょうか」
ニコォと嫌な笑みを貼り付けながら私が聞くと、会長は嘲笑うかのような目で私たちを見て、口を開いた。
「あなたたちには悪組織に潜入してもらうわ」




