032話 プレイヤー交流会で難易度ナイトメアのコミュ障地獄
▽【前回の山田】
SHOPでNPC仲間枠+1を取得!カレンとの再会を焦る山田だったが。
トンネルを抜けると、そこは地獄でした。コミュ障代表ヤマダにとっては。
トンネルを抜けた。
気づけば、俺は駅のホームに立っていた。
振り返る。
さっきまであったはずの暗闇は、もうどこにもない。
……人がいる。
しかも、かなりの人数。
ゾンビじゃない。
それだけは、見た瞬間に分かった。
笑い声。
雑談。
あちこちにできたグループが、わいわい騒いでいる。
——やめろ。
高校。
大学。
就活会場。
飲み会。
思い出したくない光景ばかりが、勝手に脳内に再生される。
視界が、少し揺れる。
頭が痛い。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
逃げたい。
今すぐに。
でも、足が動かない。
近くのグループが、俺に気づいたらしい。
ひそひそ何か話したあと、一人の男がこっちに歩いてくる。
やめろ。
来るな。
「……お、おい? 大丈夫か?」
「……あ、はい……どうも……」
目を見れない。
心臓が、うるさい。
「クリア、おめでとう。大変だったんだろ?」
……あ。
この言葉で、ほんの少しだけ、息ができた。
「最後のゾンビラッシュ、マジでヤバかったよな。
もう何回詰んだって思ったか……」
……そうか。
こいつらも、プレイヤーか。
つまり——
ゲーマー仲間。
その瞬間、胸の奥に小さく火がついた。
「俺、高橋優斗。よろしくな」
平凡な顔。
平凡な髪型。
平凡な服装。
「あ、自分、山田篤志です。
……ゾンビラッシュ、ほんと地獄でしたよね」
「だよなー」
「ちなみに自分……ガソリンスタンド爆破で、ゾンビ250体くらい倒したっぽくて」
「……は?」
周囲が、静かになった。
「え、ガソリンスタンド?」
「そんな脱出ルートあった?」
「マンションから出れなくない?」
……あれ?
この空気。
なんか、すごく、覚えがあるぞ。
「あ、いや、その……ほら、40回くらい死んだあたりで、
もう詰んだ感ヤバかったじゃないですか。
流石に無理ゲーだなー、みたいな……はは」
空気、さらに悪化。
やばい。
喋れば喋るほど、地雷を踏んでいる気がする。
高橋が、やけに慎重な声で聞いてくる。
「……で、山田って、何回死んだんだ?」
「えっと……六十回くらい、ですかね」
……シン、と静まり返るホーム。
「……六十?」
「盛りすぎだろ」
「死んだ回数で見栄張る意味ある?」
口々に、ざわつきが広がる。
「ちなみに……高橋さんは?」
高橋の顔が、ほんの少し引きつる。
「……十二回」
なるほど。
俺の五分の一。
「普通はさ、死ぬ回数多いと“下手扱い”なんだよ。
二桁とか、だいたい笑われる側」
なるほどなるほど。
つまり——
今、俺は「異常者」らしい。
……ふ。
だったら。
「なに言ってんすか。
死んだ回数、多いほうが強いに決まってるじゃないですか」
周囲が、きょとんとする。
「連続十回圧死の実績解除とか、知らないんすか?」
「……実績解除?」
ざわつきの質が、嘲笑から困惑に変わる。
——きた。
この瞬間。
「ハハッ。
トーシロ相手に、俺がビビるわけないじゃないですか」
やばい。
完全に煽りモードに入っている。
でも止まらない。
「だってそうでしょ?
死なないようにビクビクしてる人より、
死んでもいいから検証しまくった人間のほうが、
このゲーム、向いてるに決まってますよね?」
空気が、凍る。
……あ。
これ、たぶん、言っちゃいけないやつだ。
そのときだった。
「……面白そうな話ね」
背後から、声がした。
振り返る。
そこに立っていたのは——
赤い髪の、幼女エルフだった。




