003話 時間無制限と気づいたので、とりあえず寝食忘れてRTA
【前回の山田】死亡1回目で状況を理解する
「……ふぅ。なるほどな。死んでも戻る、と」
二度目の蘇生から三時間後、もう二度と死にたくないと半狂乱になっていた俺はエナドリを数本飲み干してようやく冷静さを取り戻していた。
視界の隅にあるUIからシステム周りを入念にチェック。
調べ尽くし、ヘルプも読んだ。
残機について記載が無い。表記も無い。
「ふははははは」
恐怖も混乱も、一周まわってどうでもよくなる。
「死んでも大丈夫」という理解は、人間をここまで図太くするのか。
「ってことは──時間、無限じゃね?」
カップ麺をすすりながら、俺は膝を打った。
死に戻り=セーブ&ロード。人生版リセットボタンだ。
ゾンビ? 72時間生存? んなもん放っておいても、またリスタートすりゃいい。
「よし、じゃあ今度は“現実RTA”だな!」
そう口走った瞬間、俺の中のゲーマー魂が火を噴いた。
まだ検証・攻略が済んでいないステージがある。そう、VRゲームだ。
VRゴーグルを装着し、ゲーミングチェアに腰掛ける。
あのクソみたいな謎解きは全てカンニング済みだ。
全ボスをノーダメで突破する。
外では悲鳴が響いていたが、ノイズキャンセラを全開にする。
「うるせぇゾンビども……俺の挑戦を見守っとけよ」
──一回目のクリア。プレイ時間十二時間四十二分。
「よっしゃ! 自己ベ更新!」
──二回目。最強装備を発見し八時間五十八分。
「まだいける。ボススキップ、フラグバグ発見した!」
──三回目。四時間十五分。
「っしゃあああ! 世界最速じゃね? これ!」
――何回目の挑戦か、もう数えていない。
現実の時間? 昼なのか夕なのか。
窓の外が異様に赤黒いけど、まだ慌てる時間じゃない。
俺はピザをかじりながら、次のプレイ準備を始めた。
その時、ドンッ!!
天井が揺れた。
いや、“揺れた”なんて生易しいレベルじゃない。
ズドォォォォォンッ!!!
鼓膜が破れるような爆音が、マンション全体を下から突き上げた。
「な、なにこれ!? ゲームじゃなくて現実側が爆発してんの!?」
VRゴーグルを外すと、視界が赤い。
火の粉が空中を漂っている。
気のせいじゃない。部屋の天井にヒビが走っている。
次の瞬間──窓の外で黒煙が立ち上り、巨大な“何か”が落ちてくる影が見えた。
「おいおいおいおい!? ちょ、待──」
ドォォォォォォン!!!
直後、爆風が建物ごと揺らした。
家具が跳ね上がり、棚の本が雨みたいに降ってくる。
俺は思わず床にうずくまった。
「ウソでしょ!? 空爆!? ゾンビ映画にそんな展開あったか!?
いやあるわ! 終盤で絶望的な空爆シーンあったわ!!」
天井がベキィッと大きく裂けた。
粉塵の匂いが喉を焼く。
頭上からコンクリート片が降り注ぎ、床がめりめりと沈む。
「ま、待て! 待てって! 俺まだ検証の途中なんだけど!?」
言い終わる前に、
天井の一部が丸ごと崩れ落ちてきた。
巨大なコンクリ塊が視界を埋め──
俺は押し潰される感覚と共に、肺の空気が一気に抜けた。
「あ、やべ……」
痛みも叫びも、何も浮かばないほど速かった。
──世界が黒に沈む。
《死因:外部イベント(空爆)による建物崩壊で圧死》
《リスタートしますか? → YES》
「……もう一回だ。」
俺は、笑ってYESを選んだ。
◇今回の成果◇
・死亡回数:2
・獲得スキル:なし
・メモ:「あと何回かやれば、さらにクリアタイム更新できる」




