024話 指環だけが、覚えている
▽【前回の山田】
街を探索して最終ミッションの準備は万端!いま、会いに行きます……!
UIから所持アイテムを確認する。
花火、果物ナイフ、木材(重要)。
俺のプランをイメージトレーニングする。
ジョンとカレンと再会。手短に説明。
一泊すると大群ゾンビが6階に出現するから、すぐに地上まで駆け降りる。
道中の敵は花火とナイフを使う。
完璧、とは言い難いが、手札は増えた。
これでダメなら……
ドクン!
心臓が俺を縮み上がらせた。
額から汗が流れる。
大丈夫、弱気になるな。ダメならまた、その時考えればいい!
俺は廊下のゾンビを手早く家に招き入れ、迅速な身のこなしで階段を駆け上がる。
ここは……ジョンが死んだ場所だ。
「ここで俺はジョンを、死なせた」
その記憶が、足をすくませる。
う!眩しい!階段の隅に蛍光灯の光を反射する何かがある。
「これは……指環か」
銀色のシンプルな指環だ。内側にはK&Jと彫られている。
「ジョン……」
これは、ジョンにこっそり返してやらないとな。
インベントリ内へ大事に保管する。
10階へ到着。すでにドアのバリケードは無い。
もしあったらバグだ。イリスたんに直談判だ。詫び石はよ!と連呼してやる。
ジョンとカレンの部屋。
玄関のドアをそっと開ける。
「すみません……どなたかいますか……? ……いますよね?」
……。
返事はない。
…………。
あれ、前回より間が長いぞ?
なんだか嫌な予感がした。
やっと、気配がして。
奥の影が、ゆっくりと人型に膨らんでいく。
1歩……2歩……。
人影は、最後まで一つだった。
「一人……? ジョン?カレン?」
光が差し込んだ瞬間、俺は息を飲んだ。
金髪碧眼の美女。
姿を見せたのは、カレンだけだった。
だが、完全に不審者を見る目だ。全身から嫌悪感を表現している。
「What?なんでカレン知ってる?」
ああ、やっぱり記憶引継ぎなしかー。
説明の面倒臭さよりも、何だか寂しい気持ちが勝った。
「アレ?ヤマダ?知ってる気がする」
カレンが急に態度を柔らかくして、眩しい笑顔を見せた。
「そうだ、山田だよ。カレン!ところでジョンはどうした?」
「ジョンなら昨日から出張だヨ!……怖かったヨ」
……え。
……“昨日から出張”??
「What?ヤマダ?顔、コワいヨ?」
膝が勝手に笑う。
俺が、間違っているのか?
じゃあ、俺の手元にある、ジョンの指環は……??
「ヤマダ、泣くほどジョンに会いたかったか。ジョン、すぐ帰ってくるヨ」
言われて気づく。俺の頬を流れる熱い液体に。
世界が、軽く音を立てて崩れる。
俺は、ジョンを救っていなかった。
誰も覚えていなかった。
あの日の“死”は、俺だけのものだった。
◇今回の成果◇
・死亡回数:60
・獲得スキル:なし
・獲得スキル:
◆【ジョンの指環】 攻撃力:+0 耐久力:--/-- リーチ:なし 特殊:なし
・メモ:「NPCは、復活、しない……なんて信じないぜ」




