002話 【悲報】初戦ゾンビに秒殺、される側。死に戻りゲー確定
【前回の山田】死亡0回目(まだ死んでない)
《ミッション:72時間生存せよ.》
──画面の中だけのはずだった文字が、視界の右上で点滅している。
「……いやいや、そんなはずないだろ」
笑い飛ばそうとした瞬間、玄関のドアに、ドンッ!と強烈な衝撃。
「ひっ!?」
思わず飛び退いた俺の鼓動は、ボス戦より早いテンポで鳴り響く。
ドアチェーンをかけているのに、金属がきしむ音が響く。
「ま、まさか……本当にゾンビ?」
もう一度覗き込んだドアスコープの向こう。
青白い顔、濁った白目、乾いた唇から血が糸を引き、ガリガリと歯をむき出しにしていた。
「うわぁぁぁぁあああ!!」
俺は思わず台所に駆け込み、包丁を握る。
「くそ、俺はゲーマーだ……! さっき魔王を倒した俺が、チュートリアルゾンビくらい突破してやる!」
恐る恐るドアを開けた瞬間──ゾンビが雪崩れ込んできた。
腐った肉の臭いと共に、ドア越しに突き出された腕が俺の胸を掴む。
「ぐっ……ま、待て、リーチ長すぎだろ!」
必死に包丁を振るが、力の差は歴然だった。押し倒され、床に背中を打ちつけた。
視界の端で、ゾンビの顔が迫ってくる。
──その瞳は、ただ濁っているだけじゃなかった。
眼球の奥で何かが蠢き、血管がひび割れのように広がっていく。鼻を突く腐臭と、熱気を帯びた吐息が頬を叩いた。
生き物の残り香を、確かに感じた。
「や、やめ──」
次の瞬間、鋭い歯が肩に食い込んだ。
ブチッ、と肉が裂ける音。
痛みが電流みたいに全身を駆け抜け、思わず絶叫する。
「ぎゃあああああああっ!!!」
──そして、世界が暗転した。
・・・
「……あれ?」
気がつくと、俺はベッドの上にいた。
テーブルにはコンビニ弁当、壁掛け時計は土曜0時ちょうど。
「……う、嘘だろ」
心臓を押さえる。噛みちぎられたはずの肩は、何事もなかったかのように元通り。
《死因:玄関で不用意にゾンビと交戦》
《リスタートしますか? → YES》
視界の右上に、クソみたいに冷たいシステムログが浮かんでいた。
俺は床に崩れ落ち、頭を抱えた。
「……これ、死に戻りゲーかよ……!」
俺は検証系ヌルゲーマーだった。
◇今回の成果◇
・死亡回数:001
・獲得スキル:なし
・メモ:「ゾンビこわい。かゆい。うまくない。」




