018話 崩れる背中。最後の盾
▽【前回の山田】
6階はまさに地獄だったが、絶望は、まだ序章にすぎない。
噛み痕を隠すように、ジョンはそっと両手を降ろした。
「ダイジョブデス」
「大丈夫っておまえ、それ……!」
爪痕は深く、変色は広がり方がヤバい早さだ。
誰がどう見ても、ゾンビ化まっしぐらだ。
だがジョンは冷静だった。
「ヤマダさん、六階ムリなんですね。ジャア……上に戻りマショ。今の音で気づかれたかもしれマセン」
そうだ。冷静さを失った者から死んでいくのが戦場。
ジョンはまだ戦士だった。
俺たちも、まだ死んでない──そう言い聞かせるしかなかった。
俺たちは階段を静かに、だが全速で駆け上がる。
が、動揺したカレンが足をもつれさせた。
「きゃっ!」
ジョンが瞬時に抱きとめる。
カレンは目を見開いたまま、ジョンの胸で震え、涙を落とした。
「カレン、ボクはダイジョ……ウッ……ウアアア──!」
ジョンが突然、激しく胸を押さえて倒れ込み、獣のような声を上げた。
「ジョン!? どうしたの?」
カレンがよろよろと近づく──その瞬間、ジョンはカレンを強く突き飛ばした。
「キ……近寄るナ……ボクは……ウウ……アアア……!」
俺は悟った。
もう始まってる。感染の進行だ。
死ぬ・・・?
ジョンが、死ぬのか?
「ふざけんな・・・!」
おまえが死んだら意味ないだろ!
喉の奥がギュッと締まり、言葉が出ない。
自分の胸に手を置く。
そのとき、カレンの腰からハンドガンが床に滑り落ち──
カチャ。
さらにその横には……ビン。
カランコロンカラン!!!
最悪のコンボアラーム発動。
一瞬で階段はゾンビで埋まった。
だがジョンは──ゾンビ化しつつある身体で、カレンを背に庇いながら、壁のように立ちはだかっていた。
「ジョン……!」
クソ……!
俺だってやってやる!
俺は木製バットが砕けるまで、階段を埋め尽くすゾンビたちに叩きかかった。
だが──
圧倒的物量の前で、人の努力は無力だった。
視界が赤黒く揺れる。
意識が落ちる。
最後に見えたのは……ゾンビの群れの中、カレンを抱きしめたまま倒れないジョンの後ろ姿だった。
<死因:失血死>
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<NPC死亡を確認:ジョン>
<復活不可:NPCは再生成されません>
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【追悼メッセージ】お悔やみ申し上げます。
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<ジョン>
種別:NPC(人間)
役割:保護対象
特徴:エセ大阪弁を操る陽気な青年。筋肉と優しさでできている。離婚の危機を乗り越えたカレンと、新たな人生に向けてスタートを切るところだった。
最後の行動:カレンを抱きかかえ、ゾンビの群れから守り続けた。
備考:彼の笑顔は、多くのプレイヤーの心を救った。同時に多くのプレイヤーの代わりに死んでいった。
◇今回の成果◇
・死亡回数:40
・獲得スキル:根性Lv.1:特定の条件下で、短時間だけ限界以上の能力を発揮できる
・メモ:・・・・・・




